第4節 交通分野における安全対策の強化

■4 航空交通における安全対策

(1)航空の安全対策の強化
1)航空安全プログラム(SSP)
 航空局は、国際民間航空条約第19附属書に従い、民間航空の安全に関する目標とその達成のために講ずべき対策等を定めた航空安全プログラム(SSP)を平成26年4月から実施している。さらに27年度に、今後5年程度に実施するべき安全施策の方向性を整理した、「航空安全行政の中期的方向性」を策定しているが、近年自家用の小型航空機等の事故が頻発していることを踏まえ、28年度より小型航空機に係る更なる安全対策の方向性を追加したところである。
 また、報告が義務づけられていない航空の安全情報を更に収集し、安全の向上に役立てるため、26年7月より航空安全情報自発報告制度(VOICES)を運用しており、空港の運用改善等に向けた提言が得られている。周知活動の効果もあり30年の報告数は前年より5割程度増加しているが、引き続き安全情報の重要性の啓蒙を通じ、制度の更なる活用を図るとともに、得られた提言を活用して安全の向上を図ることとしている。
 
図表II-7-4-7 国内航空会社の事故件数及び発生率
図表II-7-4-7 国内航空会社の事故件数及び発生率
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2)航空輸送安全対策
 特定本邦航空運送事業者において、乗客の死亡事故は昭和61年以降発生していないが、安全上のトラブルに適切に対応するため、航空会社等における安全管理体制の強化を図り、予防的安全対策を推進するとともに、国内航空会社の参入時・事業拡張時の事前審査及び抜き打ちを含む厳正かつ体系的な立入監査を的確に実施している。また、外国航空会社の乗り入れの増加等を踏まえ、我が国に乗り入れる外国航空機に対して立入検査等による監視を強化してきたところである。
 航空機からの落下物については、平成29年9月に落下物事案が続けて発生したことを踏まえ、同年11月より有識者や実務者等から構成される「落下物防止等に係る総合対策推進会議」を開催し、30年3月に「落下物対策総合パッケージ」を策定した。同パッケージに基づき、同年9月に「落下物防止対策基準」を策定し、本邦航空会社のみならず、日本に乗り入れる外国航空会社にも対策の実施を義務付けた。また、29年11月より、国際線が多く就航する空港を離着陸する航空機に部品欠落が発生した場合、外国航空会社を含む全ての航空会社等から報告を求めている。引き続き、「落下物対策総合パッケージ」に盛り込まれた対策を関係者とともに着実かつ強力に実施することにより、落下物ゼロを目指して最大限取り組む。
 平成30年10月末から航空会社において飲酒に係る不適切事案が連続して発生したことを受け、航空会社に対し法令遵守の徹底等について指導を行うとともに、30年11月より「航空従事者の飲酒基準に関する検討会」を開催し、飲酒に関する基準等を策定した。これらが適切に実施されるよう、航空会社等に対し指導・監督を行う。

3)国産ジェット旅客機の安全性審査
 我が国初となる国産ジェット旅客機MRJの開発に伴い、国土交通省では、設計・製造国政府として、安全・環境基準への適合性の審査を適切かつ円滑に実施するため、審査体制を構築・拡充するとともに、米国・欧州の航空当局と密接に連携した審査を行っている。現在米国を拠点に飛行試験や地上試験が実施されており、平成31年3月には、航空局のパイロットが操縦して行う飛行試験を開始したところである。また、MRJの就航後を見据え、国と航空機メーカーとが連携して安全性確保のための措置を講ずることを盛り込んだ「航空法及び運輸安全委員会設置法の一部を改正する法律案」を31年3月に国会に提出した。
 令和2年半ばに予定されている初号機納入に向け、引き続き、適切かつ円滑な安全性審査を進めるとともに、航空機の安全確保に万全を期すための制度整備に取り組んでいく。

4)無人航空機の安全対策
 飛行する空域や飛行方法などの基本的なルールを定めた改正「航空法」(昭27法231)が平成27年12月に施行され,30年度には28,855件の許可・承認を行った。また、関係府省庁、メーカー、利用者等の団体から構成される「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」において取りまとめられた「空の産業革命に向けたロードマップ2018 〜小型無人機の安全な利活用のための技術開発と環境整備〜」に沿って、「無人航空機の目視外及び第三者上空等での飛行に関する検討会」において、離島・山間部での補助者を配置しない目視外飛行を可能とするための要件をとりまとめ、平成30年9月に航空法に基づく許可・承認の審査要領を改訂し、10月には荷物配送に向けた目視外補助者無し飛行について承認を行った。

5)小型航空機の安全対策
 小型航空機については、従来から操縦士に対する定期的な技能審査制度の構築等の対策を実施してきたが、平成27年7月に東京都調布市で発生した住宅への墜落事故等、近年事故が頻発している状況にある。これを受け、国土交通省は、全国主要空港における安全講習会の開催、小型航空機の整備士を対象とした講習会を新たに開催、自家用機の航空保険加入の促進、運輸安全委員会からの勧告を踏まえた安全啓発リーフレットの作成・配布並びに操縦士への理解確認、小型航空機操縦士向けの定期的な安全啓発メールマガジンの配信などの追加対策を講じてきた。また、30年4月に、小型航空機操縦士の一層の技量・知識向上、安全意識の徹底を図るため、ビデオ教材を作成し、航空局ホームページ等に掲載するとともに、安全講習会での活用を推進するなどの取組みを進めた。加えて、事故調査や訓練・技量審査などへの活用検証のため、簡易型飛行記録装置(FDM)の実証実験を開始した。今後とも、28年12月から定期的に開催している「小型航空機等に係る安全推進委員会」を通じて、有識者や関係団体等の意見を踏まえながら、小型航空機の総合的な安全対策を一層推進していく。その他、超軽量動力機、パラグライダー、スカイダイビング、滑空機、熱気球等のスカイレジャーの愛好者に対し、関係団体等を通じた安全教育の充実、航空安全に係る情報提供等の安全対策を行っている。

(2)安全な航空交通のための航空保安システムの構築
 航空機の安全運航及び定時運航を図り、かつ管制業務等の円滑な実施を支援するため、既存のシステムを統合した新たな管制情報処理システムの整備を引き続き進めていく。
 平成30年度は、東京国際空港、福岡空港、神戸航空交通管制部等にそれぞれ新たなシステムを導入した。


注 客席数が100又は最大離陸重量が5万キログラムを超える航空機を使用して航空運送事業を経営する本邦航空運送事業者のこと


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