第5節 海洋環境等の保全

第5節 海洋環境等の保全

(1)船舶からの排出ガス対策
 船舶からの排ガス中の硫黄酸化物(SOx)は、呼吸器疾患など人体へ悪影響を及ぼす物質であるため、国際海事機関(IMO)では、MARPOL条約に基づき、船舶で使用される燃料油の硫黄分濃度を規制している。当条約では、船舶が航行する海域ごとに、基準値を定めており、現在、厳しい規制が適用される一部海域(特別海域)では硫黄分濃度0.1%以下、それ以外のすべての海域(一般海域)では3.5%以下、さらに令和2年1月1日以降は0.5%以下とすることを規定している。
 本規制に円滑に対応するためには、船舶の安全運航が可能な品質の規制適合油が、低コストで安定的に供給されることが必要である。このため、国土交通省では、海運業界、石油業界が直接議論する場を設けるとともに、燃料油の性状変化による船舶への影響を調査し、情報提供を行うこと等を通じて、海運業界と石油業界双方の規制適合油の性状に関する認識の調整に向けた取組みを進めている。
 また、新たに供給される規制適合油に需要が集中することを防ぎ、燃料油の需給・価格の安定化を図るため、A重油専焼船の建造支援、従来の廉価な高硫黄C重油を使用することができるスクラバー(排煙を脱硫する装置)の導入促進、LNG燃料船の導入促進などの対策を進めている。

(2)大規模油汚染等への対策
 他方、日本海等における大規模な油汚染等への対応策として、日本、中国、韓国及びロシアによる海洋環境保全の枠組みである「北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)」における「NOWPAP地域油及び有害危険物質流出緊急時計画」の策定など、国際的な協力体制の強化に取り組んでいる。また、「排出油等防除計画」を策定し、本邦周辺海域で発生した大規模油流出事故における防除体制等を整えるとともに、大型浚渫兼油回収船による迅速かつ確実な対応体制を確立している。
 さらに、MARPOL条約注1において船舶からの油や廃棄物等の排出が規制されており、我が国では、港湾における適切な受入れを確保するため、船舶内で発生した廃油及び廃棄物等の受入施設の整備に対して税制等の支援を行うとともに、「港湾における船内廃棄物の受入れに関するガイドライン(案)」を策定している。

(3)船舶を介して導入される外来水生生物問題への対応
 船舶のバラスト水注2への混入又は外板等への付着により水生生物等が移動し、移動先の海域の生態系等に影響を及ぼすという問題に対応すべく、IMOにおいて平成16年に船舶バラスト水規制管理条約、23年には船体付着生物の管理ガイドラインが採択された。同条約は平成29年9月8日に発効した。なお、同条約は、発効以降当面の間、今後の条約見直し等に向けてデータを収集・分析する経験蓄積期間を設けている。我が国も、条約の着実な履行と併せて経験蓄積期間中のデータ収集にも積極的に貢献している。

(4)条約実施体制の確立
 海洋汚染の大きな要因であるサブスタンダード船を排除するため、国際船舶データベース(EQUASIS)の構築等、国際的な取組みに積極的に参加するとともに、日本寄港船舶に立入検査を行い、基準に適合しているかを確認するポートステートコントロール(PSC)を強化している。また、旗国政府が自国籍船舶に対する監視・監督業務を果たしているかをIMO監査チームにより監査する制度については、我が国の提唱により平成17年のIMO総会で任意の制度として創設が承認され、28年1月からは監査が強制化された。我が国においてもISO9001に基づく品質管理システムを導入し、国際的な水準の条約実施体制を確立している。なお、我が国においては2020年10月にIMO加盟国監査の受入れを予定している。


注1 船舶による汚染の防止のための国際条約
注2 主に船舶が空荷の時に、船舶を安定させるため、重しとして積載する海水等。


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