第I部 進行する地球温暖化とわたしたちのくらし〜地球温暖化対策に向けた国土交通行政の展開〜 

2 建物、設備機器等の使い方による省エネの推進

(1)設備機器等の効率化による省エネ推進の必要性
 建物本体の省エネ性能の向上に加え、その中での活動についても、設備機器の効率化や使い方の工夫を通じて、省エネを推進していくことが必要である。
 家庭・業務部門のエネルギー消費量について、用途別の伸び率を見ると、家庭部門においては、動力(家電製品や照明等)の割合が伸びており、2005年度(平成17年度)は1990年度(平成2年度)比で約50%増加している。これは、個々の機器の効率は大幅に向上しているものの、世帯数が増加している中で1世帯当たりの機器の保有台数も増加したこと、パソコンや温水洗浄便座等の以前にはなかった機器が普及したこと、さらに、テレビや冷蔵庫等が大型化したこと等が影響しているものと考えられる。また、業務部門においても、動力(オフィス機器や照明、空調、エレベーター等)の割合が伸びている。これは、床面積が増加する中で、機器の使用台数が増加したことに加え、商業施設の営業時間が増加したこと等がエネルギー消費量増加の要因となっていると考えられる。
 
図表I-2-2-12 家庭部門用途別エネルギー消費量の推移

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図表I-2-2-13 業務部門用途別エネルギー消費量の推移

図表I-2-2-13 業務部門用途別エネルギー消費量の推移
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 このように、家庭・業務部門ともに、電化製品等の設備機器のエネルギー消費量が大きく伸びていることから、建物の省エネ性能の向上に加えて、設備機器等の効率化やその使い方の工夫によって省エネを推進していくことも必要である。例えば、電化製品については、統一省エネラベル(注1)によって省エネ性能がわかりやすく表示されており、買い換えの際に、そのような製品を選択することも一つの方法である。
 
図表I-2-2-14 100世帯当たりの機器の保有台数の推移

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(2)事務所ビル等における省エネの推進の必要性
 業務部門においては、業種や建物の所有形態、規模等によってエネルギー消費の状況が大きく異なっている。業種別にエネルギー消費の状況を見ると、絶対量では事務所ビルや卸小売業におけるエネルギー消費量が大きくなっているが、床面積当たりでは飲食店、ホテル・旅館、病院における消費量が大きくなっている。したがって、このような業種ごとの特徴を踏まえた対策が必要である。
 
図表I-2-2-15 業務部門業種別エネルギー消費量(平成17年度)

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図表I-2-2-16 業務部門業種別床面積当たりエネルギー消費量(平成17年度)

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 例えば、事務所ビルについて見ると、所有形態別では、テナントビルは、自社ビル(図表I-2-2-17中の「事務所」)に比べて省エネ対策が進んでいない建物が多いという調査がある。これは、テナントにとっては、省エネルギーの努力が共益費等に反映されず、ビル所有者にとっては省エネのための投資が家賃に反映されないことが多く、この結果、省エネ対策が進みにくいためと考えられる。このため、意識啓発に加え、ビルエネルギーの運用管理について、ビル所有者とテナントが協働して取り組むための指針づくり等を進める必要がある。また、ビルエネルギーの使用状況を計測したうえで、室内環境等に応じて設備機器等の運転を最適化する「ビルエネルギー管理システム」の導入等により、既存オフィスビルの省エネ診断、省エネ改修を進めていくことも必要である。
 また、規模別に見た場合、中小規模の建築物では、費用をかけた省エネ対策は進めにくいことが多いが、費用対効果の高い省エネ化の提案を行うESCO事業(注2)の活用や、自治体等が行っている建物の省エネ診断や改修に対する支援を利用するなどの方法により、省エネ化を進めていくことが必要である。
 
図表I-2-2-17 東京都地球温暖化計画書制度の評価結果

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(注1)統一省エネラベルは、(財)省エネルギーセンターホームページ(http://www.eccj.or.jp/labeling_program/index.html)を参照
(注2)工場やビル等の省エネ化に要する経費をその顧客の省エネルギーメリットの一部から受け取ることにより、省エネに関する包括的なサービスを提供する事業

 

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