第I部 進行する地球温暖化とわたしたちのくらし〜地球温暖化対策に向けた国土交通行政の展開〜 

3 建物の長寿命化による建設から廃棄までのトータルな省エネの推進

 住宅・建築物では、建物の使用時だけでなく、建築部材の製造、施工、改修、廃棄等の各段階においてもエネルギーが消費される。したがって、エネルギーの総消費量は、製造から廃棄までの全期間で評価する必要がある。このように建物の一生という期間で評価することをライフサイクルアセスメントという。例えば、住宅におけるエネルギー消費量のライフサイクルアセスメントでは、居住時以外にも、建物ができあがるまで(部材製造、施工等)にもエネルギーが消費されると試算されている。
 このような観点からは、住宅・建築物の長寿命化は、エネルギー消費量の低減を通じてCO2排出量の削減にも貢献することが期待できる。現状では、我が国の滅失した住宅の平均築後経過年数は30年と試算されており、欧米に比べて短い。このため、良質な住宅ストックを蓄積するという観点に加え、地球環境の観点からも、住宅の建設、維持管理、流通、資金調達等の各段階において、住宅の長寿命化に向けた総合的な施策を講じ、長期にわたって使用可能で環境性能にも優れた住宅(200年住宅)を普及させていくことが重要である。
 
図表I-2-2-18 滅失住宅の平均築後経過年数の国際比較

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図表I-2-2-19 ライフサイクルアセスメント試算結果の例

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 また、もともと我が国の伝統的な工法で丁寧に建てられた木造住宅の中には、その後も大事に手入れされ、極めて長い期間にわたって使用されてきたものもある。そもそも木材は、成長時にCO2を吸収するため、住宅の素材として環境面でも優れているとの指摘もある。このような観点から、伝統的な木造住宅の普及や工法の継承を進めていくとともに、耐久性、耐震性に優れるなど、現在の住宅に要求される性能を満たし、長期にわたり使用可能な木造住宅の開発・普及に取り組んでいくことも重要である。

 

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