第I部 進行する地球温暖化とわたしたちのくらし〜地球温暖化対策に向けた国土交通行政の展開〜 

1 気候変動を踏まえた適応策の必要性

 IPCCは第4次評価報告書において、今後どのような温室効果ガス排出の緩和策がとられたとしても気温が上昇すると予測しており、実施する緩和策の規模に関わらず、予測される気候変動による悪影響を低減するための適応策が必要であるとしている。このように、気候変動への対応は、緩和策と適応策を車の両輪としてともに推進していく必要がある。
 諸外国では、気候変動を踏まえた適応策の検討や取組みが進められている。経済協力開発機構(OECD)は、2006年(平成18年)5月に先進国における気候変動に関する適応策の進捗状況をまとめており、イギリス・フランス・オランダ等の欧州諸国やアメリカ、オーストラリア等で適応策の推進や検討が行われているとしている。例えば、イギリスのテムズ川は、防潮堤により1000年に1回起こりうる高潮に対して守られているが、気候変動による海面水位の上昇等の影響により安全性が低下することが予測されている。そのため、今後100年間のロンドンとテムズ河口の防御のための洪水リスク管理計画である「Thames Estuary 2100(TE2100)」が検討されている。また、オランダのライン川では、気候変動により計画流量が増加すると予測されていることを踏まえ、遊水池の確保等によって治水安全度の向上が図られている。

 

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