第I部 進行する地球温暖化とわたしたちのくらし〜地球温暖化対策に向けた国土交通行政の展開〜 

2 安全・安心の確保に向けた取組み

 我が国においても、気候変動による影響に対処し、災害に強い安全・安心な国土をつくるため、長期的視点に立って関係機関等が役割分担しつつ、適応策の立案と確実な実施を早期に行っていく必要がある。その際には、被害の最小化を図るよう適応策を策定していくことが重要である。例えば治水対策においては、気候変動による自然災害の増加に伴う治水安全度の低下に対して、堤防・ダム等の施設を中心とした適応策でどこまで対応するかを明確化した上で、施設能力を超える災害の規模に応じて、流域全体で、1)浸水が予想される区域における土地利用規制の活用や住まい方の見直し等による被害の少ない地域づくりの観点からの適応策、2)災害発生時に速やかに対応できるような支援体制の強化、リアルタイム情報の共有や広域防災ネットワークの構築等の危機管理対応を中心とした適応策を立案することが求められている。
 このような状況を受け、国土交通省においては、気候変動による影響を踏まえた豪雨、高潮等への対応や水資源管理のあり方に関する検討が始められている。社会資本整備審議会河川分科会に設置された「気候変動に適応した治水対策検討小委員会」では、気候変動に伴う洪水、土砂災害、高潮災害等の災害特性の変化と社会に与える影響の分析・評価、これに対する適応策について検討が進められている。また、交通政策審議会港湾分科会では、地球温暖化に起因する気候変動に対する港湾政策のあり方について、「防災・保全部会」を設置して議論されている。
 さらに、安全・安心な水資源の確保を図るためには、需要・供給面からの水資源の有効利用に向けた総合的な水資源管理の推進を図っていくことが重要であるとの観点から、気候変動による影響を踏まえ安定的な水供給を実施するための水資源管理のあり方についても検討を行っている。
 
図表I-3-2-1 気候変動に適応した治水対策の考え方

図表I-3-2-1 気候変動に適応した治水対策の考え方

 

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