第I部 進行する地球温暖化とわたしたちのくらし〜地球温暖化対策に向けた国土交通行政の展開〜 

2 2013年以降の温暖化対策の国際的枠組みを見据えた中長期的課題

 地球温暖化の緩和のためには、京都議定書の目標達成に加えて、2013年(平成25年)以降の国際的枠組みを見据えた中長期的な視点に立つ必要もある。「21世紀環境立国戦略」(平成19年6月に閣議決定)においては、世界全体の温室効果ガス排出量を現状に比して2050年までに半減するという長期目標を提示しており、この目標の実現に向けて「革新的技術の開発」とそれを中核とする「低炭素社会づくり」という長期ビジョンを提示している。これらについて、国土交通省では次に掲げる中長期課題を踏まえて、取組みの具体化を行うこととしている。

(1)革新的技術の開発
 2050年までに半減という大幅な削減目標を実現するためには、従前の技術の普及に加えて、大幅な省エネやCO2を排出しない技術の導入が不可欠である。このような観点から、1)CO2を車体から排出しない電気自動車や燃料電池車等、2)自動車・船舶・航空機のバイオ燃料利用技術、3)船舶の燃費指標(海の10モード指標)、4)トラックや船舶、航空機が停止中に外部電力を利用するアイドリングストップ技術、5)室内環境の快適性と高い省エネ性能を有する住宅・建築物について、その開発・普及が必要である。

(2)低炭素社会の骨格づくり
 低炭素社会づくりは、生活の豊かさの実感と、CO2排出削減が同時に達成できる社会の実現を目指すものである。我が国を低炭素社会に転換していくためには、ライフスタイル、都市や交通のあり方を根本から変えていく必要がある。このような観点から、国土交通省では地域づくりと交通システムの構築の2つの側面から取り組むこととしている。また、温室効果ガスの大幅な削減に向けて先駆的な取組みに挑戦する「環境モデル都市」の実現に向けて、自治体等との連携を進めることとしている。
 低炭素型の地域づくりに向けては、各部門の個別の取組みに加えて、都市や地域の構造自体を抜本的に見直す集約型都市づくりなどの総合的な対策を関係する各部門の連携の下で展開していくことが重要である。このため、大規模集客施設の適正配置や中心市街地の活性化、公共交通や徒歩・自転車等で移動しやすい環境の整備等を進めるとともに、都市緑化等の推進、エネルギーの面的利用の促進、下水道における省エネ対策の徹底、住宅・建築物の省エネルギー性能の向上、エコドライブやカーシェアリング等を通じた自動車利用方法の見直し、都市内物流の効率化等を総合的に推進することが必要である。
 一方、低炭素型の交通システムの構築に向けては、国内外の交通システムのあり方を視野に入れつつ、総合的な対策を推進することが重要である。このため、既存の基幹ストックを最大限活用しつつ、鉄道や道路、港湾、空港の結節性の向上や、自動車交通の円滑化等に必要な社会資本の整備等のハード対策、また、輸送事業者や荷主への規制・誘導策やIT技術の活用による輸送の効率化、市民・消費者による環境にやさしい交通手段の選択の促進、燃費基準の開発・普及等のソフト対策の両面を通じて、交通マネジメントを総合的に推進することが必要である。

(3)国際連携の強化
 地球温暖化対策に関する我が国の先進的技術について、アジアを始めとした世界への情報発信、国際協力を進めていくことが重要であり、大臣会合の開催等を通じたアジアを中心とした取組みや我が国の先進的技術の途上国への活用等を進めるなど国際連携の強化が必要である。

 

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