第II部 国土交通行政の動向 

6 地域の移動手段の確保

(1)地域の生活を支える公共交通の活性化
 地域公共交通の活性化及び再生を総合的、一体的かつ効率的に推進するため、平成19年10月1日に「地域公共公通の活性化及び再生に関する法律」が施行された。この法律により、コミュニティバスや乗合タクシーの導入、地方鉄道や旅客船の活性化等、当該地域にとって最適な公共交通のあり方について合意形成を図り、合意した内容を確実に実施するための制度を整備した。また、デュアル・モード・ビークル(DMV)(注1)や水陸両用車といった複数の運送事業に該当し、一貫した運送サービスを提供する新地域旅客運送事業の円滑化を図るための事業許可の特例等について定めている。
 また、交通政策審議会交通体系分科会地域公共交通部会において、地域公共交通の現状と課題、地域公共交通に関する施策展開の目標、今後の施策展開の基本的方向性や、各主体の取組みのあり方等について取りまとめられ、19年7月に報告書「地域による地域のための公共交通の活性化・再生を目指して」が公表された。
 
図表II-3-2-5 「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」の枠組み

図表II-3-2-5 「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」の枠組み

(2)地方鉄道の活性化等
 地方鉄道(注2)は、地域における住民の足として、また、地域経済の発展のために重要な役割を果たしているが、その経営は概して厳しいものとなっている。
 このため、地方鉄道事業者が行うサービス改善及び安全性の確保等を図るため設備の近代化を行う際に要する費用の一部を補助する近代化補助の活用や税制上の特例措置を講じ、地方公共団体と共に支援している。特に近代化補助では、再生計画(注3)に基づき鉄道事業者が行う取組みに対して更に重点的に支援をしている。

(3)地方バス路線への補助
 地域住民、特に自らの交通手段を持たない高齢者や学童等の移動制約者にとって必要不可欠な公共交通機関である乗合バスの路線維持・確保は、重要な課題となっている。
 このため、国と地方の役割分担の下、国は生活交通路線(注4)に重点化して、維持対策費の補助を行っている。それ以外の路線については、地方公共団体の判断により維持を図ることとし、所要の財政措置が講じられている。

(4)離島との交通への支援
 離島航空路については、航空輸送の確保を図るため、離島に就航する航空運送事業者に対して、機体購入費及び運航費に対する補助、着陸料の軽減、航空機燃料税及び固定資産税についての軽減措置を実施している。離島航路については、「離島航路整備法」に基づく離島航路を維持するための補助の他、船舶のバリアフリー化の補助、固定資産税の軽減措置及び離島地域の観光振興による交流拡大への支援を実施している。なお、平成18年度末の離島航空路線の数は61路線、離島航路数は313航路(うち国庫補助航路122航路)である。


(注1)線路と道路の両方の走行が可能な車両。JR北海道が開発中で、マイクロバスを改良しているため車両価格が鉄道車両に比べ約1/7と低廉。既存の鉄道や道路を利用するため大規模投資が不要
(注2)「中小民鉄」、「転換鉄道」(旧国鉄のローカル線から第3セクター等で引き継がれた鉄道)、「地方鉄道新線」(国鉄時代の工事凍結路線のうち、工事が再開され、開業後第3セクターが経営を引き継いだ鉄道)、「並行在来線」(整備新幹線の開業により、JR会社から分離された並行の在来線)の4者を指す。
(注3)鉄道事業者と地域の関係者が連携し、鉄軌道利用の促進及び鉄道事業の活性化を図るために策定される計画
(注4)地域協議会で維持・確保が必要と認められ、国が定める基準(複数市町村にまたがり、キロ程(バス路線の起点から終点までの距離)が10km以上、1日の運行回数が3回以上等)に該当する広域的・幹線的なバス路線

 

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む