第II部 国土交通行政の動向 

6 道路交通における安全対策

 平成19年の交通事故による死者数は、昭和28年以来54年ぶりに5千人台まで減少したが、死傷者数は依然100万人を超えるなど、国民の約100人に1人が死傷する深刻な状況である。
 このため、幹線道路と生活道路での交通事故対策を両輪とした効果的・効率的な対策を推進するとともに、安全・安心な歩行空間や自転車走行環境の整備を推進する。
 
図表II-6-3-6 交通事故件数及び死傷者数等の推移

図表II-6-3-6 交通事故件数及び死傷者数等の推移
Excel形式のファイルはこちら

(1)幹線道路における交通事故対策の重点的実施
 特定の区間に事故が集中する幹線道路では、事故の発生割合の高い区間(要対策区間:レッドゾーン)の中から、対策実施区間を優先的に選択し、予算を集中して投資することで、効果的・効率的な交通事故対策を推進しようとする「レッドゾーン戦略」を推進する。
 また、警察庁と連携して指定した「事故危険箇所」(平成15年7月に3,956箇所)について、重点的・集中的な交通事故対策を実施している。
 
図表II-6-3-7 全国(国道・都道府県道)死傷事故率

図表II-6-3-7 全国(国道・都道府県道)死傷事故率

(2)安全で安心な道路サービスを提供する計画的な橋梁等の管理
 今後、高齢化した橋梁が急増していくことから、安全で安心な道路サービスを確保するため、橋梁の定期的な点検により早期に損傷を発見し、事故や架け替え、大規模な修繕に至る前に対策を行う予防保全を計画的に実施する。
 また、市区町村が管理する橋梁のうち約8割が予防保全を実施していない状況であることを踏まえ、予防保全への円滑な転換を図るため、技術的支援や長寿命化修繕計画の策定支援等所要の措置を講じる。
 
図表II-6-3-8 建設後50年以上の橋梁の割合

図表II-6-3-8 建設後50年以上の橋梁の割合

(3)自動車の総合的な安全対策
1)事業用自動車の安全対策
 事業用自動車の交通事故件数(軽貨物を除く)は、年間約6万1千件(平成18年)であり、事業用自動車に係る交通事故防止は緊急の課題となっている。
 平成19年2月に大阪府吹田市で発生した貸切バスによる重大事故を契機として、貸切バス事業者を対象とした重点監査を実施するとともに、「貸切バスに関する安全等対策検討会」において、安全性の確保・質の向上に向けた方策を同年10月に取りまとめた。
 このほか、監査の強化、行政処分の厳格化、運行管理者制度の徹底等を強力に推進している。
2)今後の車両安全対策の検討
 平成18年6月に交通政策審議会報告書が取りまとめられ、22年までに死者数を2,000人削減(対11年比)、負傷者数を25,000人削減(対17年比)することが目標に掲げられた。これを踏まえ、これまで進めてきた衝突後被害軽減対策に加え、予防安全対策の普及・拡大を図ることとしている。また、全国で飲酒運転による事故が多発し、大きな社会問題となっていることから、飲酒運転事故防止対策の一環として、アルコールインターロック(注1)に関する技術的要件の検討を行っている。
3)安全基準の拡充・強化
 平成19年1月には、大型貨物自動車等の前部潜り込み防止装置について、同年11月には、ハイブリッド車等高電圧を使用する自動車の安全性について基準化を行った。また、予防安全技術の効果評価に関して、ドライブレコーダ(注2)等の活用方策を検討している。
4)自動車アセスメントによる安全情報の提供
 自動車とチャイルドシートに関する安全性能の評価結果を公表し、安全な自動車等の選択や製作者のより安全な自動車の開発を促進している。平成12年度から18年度の間に自動車148車種、チャイルドシート57種類の評価結果を提供することにより、自動車等の安全性能の向上に貢献している。
5)先進安全自動車(ASV)の開発・実用化・普及の促進
 ASVの開発・実用化・普及を促進すべく、平成18年度から産・学・官の協力体制で第4期ASV推進計画を進めるとともに、19年度から大型車用衝突被害軽減ブレーキに対する補助を行っている。
 
図表II-6-3-9 大型車用衝突被害軽減ブレーキの作動例

図表II-6-3-9 大型車用衝突被害軽減ブレーキの作動例

6)リコール制度の充実・強化
 自動車メーカーによるリコールに係る不正行為の発覚を受け、平成16年度に再発防止対策を取りまとめ、情報収集体制、監査体制及び技術的検証体制を順次強化し、リコール制度の着実な運用に努めている。また、学識経験者や自動車ユーザー等が参画するリコール検討会を開催し、制度や運用の改善等について検討している。
7)不正な二次架装等の排除
 不正な二次架装(注3)による積載量や乗車定員の水増し等に対応するため、不正を行った者に対して警告書の交付や改修指示等を厳正に行っている。
8)自動車検査の高度化
 より確実な自動車検査の実施のため、ICT化された自動車検査情報の活用等による検査の高度化を進めている。

(4)自動車損害賠償保障制度による被害者保護
 自動車損害賠償保障制度は、自賠責保険、政府の保障事業、被害者救済対策事業等により交通事故被害者の保護に大きな役割を担っている。また、被害者保護の充実を図るため、保険会社に対し、被害者等への保険金支払いに係る情報提供を義務付けるなどの支払適正化の措置を講じている。


(注1)飲酒状態の有無を判断し、飲酒状態にある場合にはエンジンを始動させないようにする装置
(注2)事故や急ブレーキ作動時の車両の状態を映像及び減速度等のデータで記録する装置
(注3)自動車の一部部品を取り付けない又は取り外した状態で新規検査を受検し、自動車検査証の交付を受けた後に、当該部品を取り付けて使用者に納車する行為

 

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む