第II部 国土交通行政の動向 

3 海上保安体制の強化

(1)業務体制の充実強化
 老朽・旧式化が進んだ巡視船艇・航空機を緊急かつ計画的に代替整備し、併せて高性能化を図るとともに、しょう戒等による情報を一元的に集約し分析・評価等を行うシステムの構築等を進め、巡視勢力の効率的・機動的な運用を図ることとしている。また、沿岸部の365日24時間即応体制を確保するため、「空き巡視艇ゼロ」を目指して、平成20年にCL型巡視艇1隻のみが配属されている34部署の巡視艇の乗組員に複数クルー制を導入した。

(2)テロ対策の推進
 テロの未然防止措置として、臨海部の米軍施設、原子力発電所、石油備蓄基地等の重点警備対象施設に対する巡視船艇・航空機による所要の警備を行っている。特に原子力発電所の警備においては、関係事業者、警察等との情報交換や共同訓練等を実施している。また、国内の主要航路を航行する旅客船等への海上保安官による警乗等を実施するとともに、海賊対策のため東南アジア周辺海域に派遣している巡視船・航空機によるテロにも備えたしょう戒を実施し、我が国関係船舶の安全確保を図っている。
 さらに、高性能化により対応能力の強化を図った巡視船艇・航空機の整備を推進するとともに、関係機関との連携を強化し、海上テロ対策に取り組んでいる。

(3)不審船・工作船対策の推進
 不審船・工作船は、我が国領域内における重大凶悪な犯罪に関与している疑いがあり、その目的や活動内容を明らかにするためには、確実に不審船を停船させて立入検査を実施し、犯罪がある場合の犯人逮捕等適切な犯罪捜査を行う必要がある。このため、不審船・工作船への対応は、関係省庁と連携しつつ、警察機関である海上保安庁が第一に対処することとなっている。
 海上保安庁では、これまでの不審船・工作船事案を踏まえ、立入検査を目的として不審船を停止させる際に行う射撃について、人に危害を与えたとしても違法性が阻却されるよう「海上保安庁法」を改正し、巡視船艇・航空機の防弾化や武器の整備、高速・高機能の巡視船の整備を図っている。また、防衛省との共同対処マニュアルに基づき、早期の情報共有や、不審船対処に係る自衛隊との共同訓練を実施している。

(4)海上犯罪対策の推進
 国内における薬物・銃器犯罪、来日外国人による凶悪犯罪の多くは、国際犯罪組織が関与する密輸・密航事犯に端を発していると考えられるため、政府において、これらの事犯を水際で阻止すべく、「犯罪対策閣僚会議」等により対策を講じてきた。海上保安庁においても、犯罪情報の収集・分析、監視取締りの強化等により、摘発水準の向上を図るとともに、警察、税関等の国内関係機関や中国、フィリピン、ロシア等の国外関係機関との情報交換等、効果的な密輸・密航対策を講じている。
 また、最近の国内密漁事犯は、悪質・巧妙化の一途をたどっており、貴重な水産資源の枯渇を招くのみならず暴力団等の資金源になるとともに、外国漁船による我が国領海及び排他的経済水域における不法操業は、我が国の漁業秩序を著しく乱す行為である。これらに対し、関係機関等と連携して、監視・取締体制を強化している。
 さらに、海域への廃棄物の不法投棄、汚水の不法排出等の海上環境事犯が続発しており、なお一層関係機関等と連携協力して悪質事業者等に係る情報共有体制を構築するとともに、監視取締体制の効率化・強化を図ることとしている。

 

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