第II部 国土交通行政の動向 

3 住宅・建築物、下水道、都市緑化等に関する対策

(1)住宅・建築物の省エネ性能の向上
 全エネルギー消費量のうち民生部門の消費量は約3割を占めており、住宅・建築物の省エネルギー性能の向上は喫緊の課題である。平成17年8月に「省エネ法」が改正され、18年4月より施行された。新たに、住宅に関しては一定規模以上の新築・増改築、大規模改修等、建築物に関しては大規模改修等の際の省エネ措置の届出が義務付けられた。また、省エネ判断基準の見直しを行うことにより、省エネ対策の充実が図られた。
 このような取組みにより、一定の成果は見られるものの、民生部門におけるエネルギー消費量は依然として増加傾向にあるため、更なる省エネ対策の強化を図るべく、「エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案」を第169回国会へ提出した。
 このほか、住宅の省エネルギー性能を消費者に分かりやすく表示する住宅性能表示制度や、住宅・建築物の居住性(室内環境)の向上と地球環境への負荷の低減等を総合的な環境性能として一体的に評価する建築物総合環境性能評価システム(CASBEE)の開発・普及を図っている。さらに、住宅金融支援機構の証券化支援事業の枠組みを活用した金利引き下げや、環境に配慮した建築物の整備、既存建築物の設備更新・改修(省エネ化)に対し日本政策投資銀行の低利融資制度等の支援措置を講じている。また、民間事業者等の先導的な技術開発の支援、設計・施工技術者向けの講習会の開催等により省エネ住宅・建築物の設計、施工技術等の開発・普及を図っている。
 さらに、既存ストックの省エネルギー対策を促進するため、既存住宅において、一定の省エネ改修工事を行った場合に、一定の要件の下、所得税や固定資産税を軽減する特例措置を講ずることとし、また業務用ビル等に係る省エネビルシステムを現行の税制上の特例措置の対象設備に追加することとしている。

(2)官庁施設の環境負荷低減化の推進
 官庁施設における環境負荷低減プログラムに基づく施策等の着実な実施、「官庁営繕環境報告書2007」の作成・公表、ライフサイクルエネルギーマネジメント(LCEM)(注1)手法の公開・活用等を通じ、官庁施設の総合的な環境負荷低減対策を推進している。
 平成19年度は、小樽地方合同庁舎等3施設のグリーン庁舎(注2)整備、政府の実行計画(19年3月閣議決定)に基づき合同庁舎の太陽光発電及び建物緑化の整備に着手し、既存官庁施設のグリーン診断・改修(注3)の実施、保全業務支援システム(BIMMS-N)(注4)等を活用した適正な運用管理の徹底に資する取組みを推進している。
 
図表II-7-1-6 グリーン庁舎イメージ図

図表II-7-1-6 グリーン庁舎イメージ図

(3)環境共生住宅の普及促進
 環境共生住宅の普及促進のため、環境の負荷を低減するモデル性の高い住宅市街地の整備を推進する環境共生住宅市街地モデル事業を平成19年度は4地区で実施し、環境共生施設(注5)の整備費等に対し補助を行った。

(4)下水道における地球温暖化対策
 京都議定書目標達成計画に示されている下水汚泥焼却施設の燃焼の高度化による一酸化二窒素の削減等を推進している。また、下水汚泥の固形燃料化やバイオガスの有効利用、下水の温度差エネルギーの利用等によるCO2の削減等を推進している。

(5)都市緑化等によるCO2の吸収源対策の推進
 緑の政策大綱や市町村が策定する緑の基本計画等、国及び地方公共団体の緑の保全、再生、創出に係る総合的な計画に基づき、都市公園の整備、道路、河川、港湾、下水処理施設、住宅、官公庁施設等の緑化のほか、緑化施設整備計画認定制度を活用し、民有地の緑化を積極的に推進している。

(6)市街地整備における地球温暖化対策
 エネルギー需要密度の高い都市部は、市街地整備事業等の実施と一体的にエコまちネットワーク整備事業等を活用しつつ、エネルギーの面的利用によるCO2の削減等を推進している。


(注1)建築物のライフサイクルを通じ、エネルギー性能の一貫したマネジメント(要求性能の設定、性能の検証、改善等)を行う手法
(注2)計画から建設、運用、廃棄に至るまでのライフサイクルを通じて、環境負荷の低減化を図る官庁施設
(注3)官庁施設の環境保全性に関する性能を評価すること及び改修計画から改修工事、運用、廃棄に至るまでのライフサイクルを通じ、環境負荷を低減させることを目的とした改修
(注4)各省各庁の所有する官庁施設の保全に関する情報を、インターネットを通じて蓄積・分析するとともに、その情報提供等により各省各庁の施設管理業務を支援するシステム
(注5)透水性舗装、屋上緑化施設、ゴミ処理システム、太陽光発電等の自然・未利用エネルギー活用システム、コージェネレーションシステムその他の地球環境に対する負荷を軽減する施設又は周辺の自然環境との調和を図る施設をいう。

 

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