第II部 国土交通行政の動向 

第5節 海洋環境等の保全

(1)大規模油汚染等への対策
 大規模油汚染の大きな要因のサブスタンダード船(注1)を排除するため、国際的船舶データベース(EQUASIS)の構築等、国際的な取組みに積極的に参加するとともに、日本寄港船舶に立ち入り検査を行い、基準に適合しているかを確認するポートステートコントロール(PSC)(注2)を強化している。また、旗国政府が自国籍船舶に対する監視・監督業務を果たしているかを監査する制度の創設を我が国から提唱した結果、平成17年11月の国際海事機関(IMO)総会で「任意によるIMO加盟国監査スキーム」として承認され、18年9月より監査が開始された。我が国は、同制度の早期定着を促進すべく、19年2月にIMOによる監査を受け入れた。
 他方、日本海等における大規模油流出事故への緊急対応に関する日本、中国、韓国及びロシア間の協力の枠組みを取りまとめた「北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)地域油流出緊急時計画」が実施され、これまで油のみであった対象物質に危険物及び有害物質(HNS)の追加を検討するなど、大規模油汚染等対策について近隣諸国との国際的な協力・連携体制の強化に取り組んでいる。

(2)船舶からの排出ガス対策
 船舶はエネルギー消費効率の面で優れた輸送特性を有しているが、我が国全体に占める窒素酸化物(NOx)等の排出割合が大きいなどの問題があり、大気汚染防止施策が必要である。船舶は国際的に移動するものであるため、規制の実効性を確保するため、国際的に合意された規則の統一的な適用が重要である。我が国は、海洋汚染防止条約に対応した「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」に基づき、原動機のNOx放出量の確認や船舶の定期的な検査の実施のみならず、IMOにて行われている船舶からの排出ガスに関する規制強化の議論に積極的に参画している。
 また、省エネも配慮しつつ、船舶の排出ガスに含まれるNOxを大幅に削減できる舶用排ガス後処理装置の技術開発や、エンジン本体における燃焼改善手法の開発等、「環境に優しい」舶用ディーゼル機関の研究開発を推進している。
 さらに、接岸中の船舶からのCO2、NOx等の排出ガスを削減し、港湾地域における大気環境の改善を図るため、接岸中の船舶が必要とする電力を、船内発電から陸上施設による供給に切り替える船舶版アイドリングストップを推進している。

(3)バラスト水中の有害水生物問題への対応
 船舶のバラスト水(注3)に混入するプランクトン等の各種生物が、その排出に伴い本来の生息地でない場所に移動するため、生態系に有害な影響を与えるとされている。対策として世界的に統一した規制を行うため、2004年(平成16年)2月にIMOにて、バラスト水管理規制条約が採択され、条約実施に必要な指針の検討が行われている。我が国は、条約発効に向けたIMOの議論に積極的に参加しつつ、国内におけるバラスト水処理装置の認証体制整備の検討を進めている。


(注1)国際条約の基準に適合していない船舶
(注2)寄港国による外国船舶の監督
(注3)主に船舶が空荷の時に、船舶を安定させるため、重しとして積載する海水

 

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