第II部 国土交通行政の動向 

第4節 多国間・二国間交渉等を通じた取組み

1 多国間交渉・フォーラムを通じた取組み

(1)世界貿易機関(WTO)への対応
 世界の多角的貿易体制を発展させるために発足したWTOは、モノの分野の自由化だけでなく、交通・観光・建設関連サービスを含むサービス分野も対象としている。2001年(平成13年)より開始されたドーハ・ラウンドでは、一層の自由化を目指し妥結に向けた交渉が進められている。我が国は、海運・建設分野における複数国会合(プルリ会合)の議長を務めるなど、サービス分野の協議を中心に積極的に参加している。また、公共事業を含め政府が行う調達に関する規律を設けている政府調達協定(GPA)について、手続の透明性の確保と市場参入の拡大を図ることを目的とした改正交渉が進められている。

(2)アジア太平洋経済協力(APEC)への対応
 APECは、貿易・投資の自由化及び円滑化と経済・技術協力を推進しており、国土交通省は交通及び観光WG(作業部会)を中心に積極的に取り組んでいる。交通WGでは、陸・海・空・インターモーダルの分野別専門家会合で議論を行っており、我が国は海事・港湾専門家会合の議長として、海運の自由化、港湾の効率性の向上等に関する議論を主導している。また、2007年(平成19年)3月に豪・アデレードで開催された第5回交通大臣会合では、交通分野における安全、保安、自由化及び円滑化等に向けて優先的に取り組むべき事項を取りまとめた大臣共同声明を採択した。観光WGは、同年5月に豪・ゴールドコーストで開催され、新たに気候変動対策や投資促進等の取組を実施していくことが確認された。

(3)経済協力開発機構(OECD)への対応
 OECD造船部会においては、世界の造船業の健全な発展に向け、公正な競争環境の整備、新興造船国との対話強化等の取組みが、また、観光委員会においては、国際観光振興に関し、地域開発政策委員会においては、国土・都市政策等に関し、各加盟国の政策レビュー等が行われており、我が国も積極的に対応している。

(4)国際海事機関(IMO)、国際労働機関(ILO)への対応
 IMOは、海上の安全、セキュリティ及び海洋汚染の防止に関する政府間の協力や条約の作成等を行う機関である。我が国は世界有数の海運・造船国として、IMOの活動に積極的に参加し、主導的な役割を果たしている。最近の活動としては、船舶からの温室効果ガス及び大気汚染物質削減、目標指向の新造船構造基準(注1)の検討等があり、特に、シップリサイクル(注2)に関しては、リサイクルヤードからの海洋汚染防止や労働安全衛生の問題解決のため、新条約を2009年(平成21年)4月に採択することを目標に議論が行なわれており、我が国も積極的に参加している。
 2006年(平成18年)2月、ILOにおいて採択された海事労働条約は、船員の労働環境の向上及び国際海上輸送における公正な競争条件の確立を図るものであり、我が国の批准に向けて、国土交通省は国内関係者との検討・調整を進めるとともに、関係各国と協力し旗国検査ガイドラインの作成等に積極的に取り組んでいる。

(5)国際民間航空機関(ICAO)への対応
 ICAOは、国際民間航空の安全と保安、健全かつ経済的な運営の確保のため、国際標準及び勧告の採択、監査等の活動を行っている。我が国は、190の締約国のうち第2位の分担金を負担し、第1カテゴリー(航空輸送において最も重要な国)の理事国として、ICAOの諸活動に積極的に参加し、国際民間航空の発展に寄与している。例えば、地球環境問題について活発な議論が行われた第36回ICAO総会(平成19年9月)においては、我が国の積極的な提案により、国際航空分野におけるエネルギー消費効率ベースのグローバル目標を検討することが決議されたところである。

(6)各分野における多国間の取組み
1)道路分野での取組み
 世界道路協会(PIARC/WRA)に設置されている技術委員会に委員を派遣するとともに、アジアオーストラレイシア道路技術協会(REAAA)の活動にも参加するなど、国際活動を推進している。
2)港湾分野での取組み
 2007年(平成19年)11月に日中韓三国により、第8回北東アジア港湾局長会議が開催され、前回の会議(平成18年11月)で確認された今後3箇年における共同研究(緊密な港湾協力の促進、浚渫土砂の有効利用、沿岸災害軽減策)について、それぞれの国から進捗状況が報告された。
3)海上保安の分野での取組み
 海上保安庁は、北太平洋海上保安フォーラム及びアジア海上保安機関長官級会合を主体的に展開し、海賊及び海上セキュリティ対策等のために海上保安機関間の連携・協力を積極的に推進しているほか、IMO、IHO等国際機関を通じ国際貢献に努めている。
4)測量・地図分野の取組み
 地球地図プロジェクト推進のため、フォーラムの開催準備、西アフリカでの地球地図セミナー開催等の普及活動を実施している。また、国連アジア太平洋地域地図会議の勧告で設置されたアジア太平洋GIS基盤常置委員会の副会長を務めるほか、同委員会と連携し関係各国と協働で地殻活動監視を推進している。


(注1)従来、各国、船級協会ごとに異なっていた船舶の構造基準について、ある一定の目標を定め、国際的に合意された要件を設定していくこと
(注2)船舶の解撤:寿命に達した船舶は、解体され、その大部分は鉄材等に再活用

 

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