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国土交通白書 2020

第1節 社会構造に関する予測

■3 技術革新の進展

(1)移動に関する予測

(MaaSの市場予測)

 今後、MaaSの市場規模は急速に拡大していくと考えられており、2030年(令和12年)には国内市場が約6兆円、2050年までには世界市場が約900兆円にまで拡大するとの調査結果もある(図表I-2-1-14、図表I-2-1-15)。

図表I-2-1-14 MaaSの市場予測(国内)
図表I-2-1-14 MaaSの市場予測(国内)
図表I-2-1-15 MaaSの市場予測(世界)
図表I-2-1-15 MaaSの市場予測(世界)

(空飛ぶ車の将来予測)

 モビリティ分野の新たな動きとして注目されている「空飛ぶクルマ」は、電動・垂直離着陸型・無操縦者航空機を1つのイメージに、世界各国で開発が進んでおり、我が国においても走行空間や制度整備の課題はあるが、都市部での送迎サービス、離島や山間部の新たな移動手段などにつながるものと期待されている。今後「空飛ぶクルマ」は、全世界的に普及していくことが予測されており、2040年(令和22年)までに、その市場規模は約160兆円規模になると考えられている(図表I-2-1-16)。

図表I-2-1-16 空飛ぶ車の市場予測(世界)
図表I-2-1-16 空飛ぶ車の市場予測(世界)

(2)社会インフラに関する予測

(スマートシティの展望)

 ICT等の情報通信技術やAI等の情報処理技術の進展に伴い、交通や人流等の都市に関する様々なデータを活用し、都市の課題を解決していくスマートシティへの注目が高まっている。また、今後5Gが普及することにより、都市におけるデータの収集・分析は加速し、急速にスマートシティが整備されていくと考えられる。クラウドでのデータの管理やセンサーの整備等に関するスマートシティプラットフォームの市場注12は、2018年(平成30年)から2025年の間に5,000億円拡大すると予測されている(図表I-2-1-17)。

図表I-2-1-17 スマートシティプラットフォームの市場規模予測
図表I-2-1-17 スマートシティプラットフォームの市場規模予測

(シェアリングエコノミーの成長)

 シェアリングエコノミー注13は、ICTの進歩等により世界的に急速に成長している。2019年(令和元年)6月に閣議決定された「成長戦略フォローアップ」では、消費者等の安全を守りつつ、イノベーションと新ビジネス創出を促進する観点から、その普及促進を図るとしている。

 シェアリングエコノミーの市場規模は、2018年度では1.9兆円であると推計されており、現状のペースで成長すると2030年度は5.8兆円になると予測されている。これは、海運業、アパレル業注14と同程度の市場規模となる見込みである。さらに、シェアリングエコノミーの認知度が向上し、個人が提供するサービスへの不安等が解決された場合は、市場規模は11.1兆円に拡大すると推計されている(図表I-2-1-18)。これは、電子部品製造業、製薬業注15と同程度の市場規模である。

図表I-2-1-18 シェアリングエコノミーの市場規模の推計
図表I-2-1-18 シェアリングエコノミーの市場規模の推計

(ドローンの活用拡大)

 ドローンは、カメラや輸送用のボックスを搭載することで、活用の幅が広がり、様々な産業・分野において導入が進んでいる。人が直接行くことが難しい、あるいは危険が伴うようなところでの撮影・点検などでの活用が期待されるほか、人手不足が進行する建設業界や物流業界における生産性向上に寄与することが期待されている。ドローンのサービス別の市場規模予測を見ると、特に点検分野での拡大が顕著であり、2020年(令和2年)から2024年の4年間で4倍以上になるとされている(図表I-2-1-19)。

図表I-2-1-19 ドローンのサービス別市場規模予測
図表I-2-1-19 ドローンのサービス別市場規模予測

(インフラ分野のAI研究開発)

 インフラ点検においては、AIを活用することにより、ロボットにより入手したインフラの大量の点検画像を基に、迅速に補修の必要性等を判断することが可能となる。例えば、コンクリートについては画像からひび割れや汚れをAIが自動で判別し、変状を検出することができれば、人の判断を支援することが可能となる。このため、国土交通省では、産官学から成る「AI開発支援プラットフォーム」の立ち上げを検討している。これにより、国土交通省がロボットで取得した大量の点検画像(写真データ)に土木技術者の正しい判断を蓄積したものを「教師データ」として整備・提供し、開発されたAIの評価を通じて、民間の更なるAI開発を促進するとともに、研究開発成果を活用できる環境の整備を図ることとしている(図表I-2-1-20)。この取組みを通じて、将来的にはAIによってインフラメンテナンスがより効率化するものと考えられる。

図表I-2-1-20 AI開発支援プラットフォーム
図表I-2-1-20 AI開発支援プラットフォーム
  1. 注12 野村総合研究所では、「都市において、建物間を横断してサービスを提供するための共通機能(認証技術や画像解析技術など)やインフラ管理を、クラウドなどを利用して提供するソフトウェア・サービスと、その実現に必要なカメラなどのセンサー・機器の配備に要する総額」を、スマートシティプラットフォーム市場と定義した。
  2. 注13 大きく区分すると1)スペース(民泊、空き地、駐車場等)、2)モノ(中古品、個人資産を個人間で売買等)、3)スキル・時間(家事サービス等)、4)移動(サイクルシェア等)、5)お金(個人・法人等が寄付を募るクラウドファンディング等)が該当。
  3. 注14 比較した市場規模は業界動向サーチの平成27-28年の値(主要企業の有価証券報告書を元に作成)海運業5兆7,118億円、アパレル業5兆3,750億円、電子部品製造業11兆928億円、製薬業10兆7,684億円。シェアリングエコノミー関連調査結果((株)情報通期総合研究所、(一社)シェアリングエコノミー協会)より。
  4. 注15 同上