国土交通省ロゴ

国土交通白書 2020

第2節 地球環境・自然災害に関する予測

■2 巨大地震のリスク

(1)南海トラフ地震

(地震の発生確率)

 2014年(平成26年)3月に内閣府中央防災会議において、「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」が作成され、2019年5月に変更された。この基本計画では、建物の耐震化・火災対策・津波対策といった防災対策や、地震発生後の初動体制・膨大な避難者等への対応といった災害応急対策等を示している。

 地震調査研究推進本部地震調査委員会注19では、主要な活断層や海溝型地震(プレートの沈み込みに伴う地震)の活動間隔や次の地震の発生可能性を評価し、随時公表している。南海トラフ地震については、マグニチュード8~9クラスの地震の30年以内の発生確率が70~80%(2020年1月24日時点)とされている。なお、同委員会は、南海トラフでは過去1,400年間に約90~150年の間隔で大地震が発生していることから、次の地震までの間隔を88.2年と予測している。1944年の昭和東南海地震や1946年の昭和南海地震が発生してから、2020年は約75年を経過しており、南海トラフにおける大地震発生の可能性が高まっている。

(震度分布、津波高及び被害想定)

 2013年(平成25年)の内閣府「南海トラフ巨大地震対策について(最終報告)」によると、静岡県から宮崎県にかけての一部では震度7となる可能性があるほか、それに隣接する周辺の広い地域では震度6強から6弱の強い揺れになると想定されている(図表I-2-2-6)。さらに、関東地方から九州地方にかけての太平洋沿岸の広い地域に10mを超える大津波の襲来が想定されている(図表I-2-2-7)。

図表I-2-2-6 震度の最大値の分布図
図表I-2-2-6 震度の最大値の分布図
図表I-2-2-7 津波高分布図(一部抜粋)
図表I-2-2-7 津波高分布図(一部抜粋)

 また、この地震の被害としては、最大で死者が約32.3万人注20、建物の全壊及び焼失棟数が約238.6万棟注21と想定されている。被災地の経済被害は最大で約169.5兆円と試算されており、東日本大震災(16.9兆円)注22をはるかに超えるものと想定されている。

(2)首都直下地震

(地震の発生確率)

 首都直下地震については、2015年(平成27年)3月に「首都直下地震緊急対策推進基本計画」が公表され、首都中枢機能を確保するための体制やインフラの維持、人的・物的被害に対応するための耐震化や火災対策など、政府として講ずべき措置が示されている。

 地震調査研究推進本部地震調査委員会では、首都直下地震で想定されるマグニチュード7程度の地震の30年以内の発生確率は、70%程度(2020年1月24日時点)と予測している。

(震度分布、津波高及び被害想定)

 2013年(平成25年)12月の内閣府「首都直下のM7クラスの地震及び相模トラフ沿いのM8クラスの地震等の震源断層モデルと震度分布・津波高等に関する報告書」によると、最大震度が7となる地域があるほか、広い地域で震度6強から6弱の強い揺れになると想定されている(図表I-2-2-8)。ただし、発生場所の特定は困難であり、どこで発生するかわからないため、想定されるすべての場所において、最大の地震動に備えることが重要である。なお、東京湾内の津波高さは1m以下とされている。

図表I-2-2-8 震度の最大値の分布図
図表I-2-2-8 震度の最大値の分布図
内閣府「首都直下地震対策検討ワーキンググループ最終報告の概要」によると、最大で死者が約2.3万人、建物の全壊及び焼失棟数が約61万棟、経済被害は、建物等の直接被害だけで約47兆円と試算されている。
  1. 注19 1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の経験を活かし、地震に関する調査研究の成果を社会に伝え、政府として一元的に推進するために作られた組織。
  2. 注20 東海地方が大きく被災するケース。
  3. 注21 九州地方が大きく被災するケース。
  4. 注22 内閣府「地域の経済2011―震災からの復興、地域の再生―」より。