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国土交通白書 2020

第4節 海外から活力を取り込むために

■4 今後の取組みの方向性

(1)観光先進国実現への取組み強化

(国際観光客の受入拡大)

 国土交通省では、訪日外国人旅行客のさらなる増加のため、アジアだけでなく、米国・欧州・豪州や富裕層を中心とした訪日層の拡大や「楽しい国 日本」という新たなブランドの確立に向け、歴史、文化だけにとどまらない、新たな観光資源の開拓に取り組んでいる。また、スキー・スノーボードなどの「コト消費」は、地方への訪問率が高くかつ長期滞在や消費拡大が期待されることから、その拡大に取り組んでいる。

(インバウンドのリスクを踏まえた対応)

 2020年(令和2年)に入り、新型コロナウイルスの影響により4月の訪日外国人旅行者数が前年同月比99.9%減となるなど、インバウンドは大きな影響を受けている(図表I-3-4-5)。

図表I-3-4-5 訪日外国人旅行者数の推移
図表I-3-4-5 訪日外国人旅行者数の推移

 我が国の訪日外国人旅行者は、図表I-3-4-5で示すとおり2003年の521万人から2019年には3,188万人と大きく拡大している。

 今回の新型コロナウイルス感染症により観光業界は大きな影響を受けていることからも、国際観光は世界的な感染症流行等が発生した場合には大きな影響を受けるリスクがある。このため、国際観光だけでなく国内観光の強化も必要である。国内観光の強化のためには、国内旅行者も長期滞在できるよう、観光地の魅力向上に加え、長期休暇が取れる仕組みづくりが必要である。働き方が多様化する中で、業務旅行と合わせて観光も実施する「ブレジャー(ブリージャー)注7」や、休暇中に業務を実施する「ワーケーション注8」といった働き方が欧米を中心に広がりを見せている。我が国でも、出張に休暇を付けられれば休暇が取りやすくなる、プライベート旅行先での仕事が業務として認められれば休暇が取りやすくなるという意識が、若い世代を中心に広がっており、ブレシャー(ブリージャー)やワーケーションが浸透することで、長期休暇が取りやすくなり国内旅行が活性化することが期待される(図表I-3-4-6)。

図表I-3-4-6 ワーケーションやブリージャーへの意識
図表I-3-4-6 ワーケーションやブリージャーへの意識

(新型コロナウイルス感染症を踏まえた今後のあり方)

 新型コロナウイルス感染症により観光業界は大きな影響を受けているが、この事態を踏まえ、これまでの施策を検証するとともに、今後、「新しい生活様式」が定着していく中で、安心して旅行ができる環境を整備するなど、感染拡大防止対策を行いつつ観光を振興するための施策を検討する必要がある。

(2)有能な人材を積極的に受け入れる環境づくり

 我が国に在留する外国人は2019年(令和元年)12月末時点で293万人、就労する外国人も2019年10月末時点で165万人となり、ともに過去最多を記録している。働き手不足の中、既に外国人労働者に依存する傾向にあるが、日本が今後も有能な外国人材に選ばれる国であるために、外国人にとって魅力的な環境づくりが必要である。言語も習慣も違う外国人と共生するためには地域社会全体の取組みも欠かせない。また、外国人向けの日本語教育サービス、多言語化も不十分であり、引き続き改善していく必要がある(図表I-3-4-7)。

図表I-3-4-7 外国人材が挙げる日本の生活環境や就労環境の長所
図表I-3-4-7 外国人材が挙げる日本の生活環境や就労環境の長所

 政府では、総合的対応策を2019年12月に改訂し、特定技能試験の円滑な実施、居住先の確保等、外国人材の円滑かつ適正な受入れの促進に向けた取組みや、災害時の情報発信、生活における多言語化、日本語教育の充実等生活者としての支援等を引き続き関係省庁で連携しつつ着実に実施することとしている。

  1. 注7 「ビジネス(Business)」と「レジャー(Leisure)」を合わせた造語(Bleisure)。出張で仕事を終えた後、休暇をとって観光する出張スタイル。
  2. 注8 「仕事(Work)」と「休暇(Vacation)」を合わせた造語(Workation)。旅先で休暇を楽しみながら仕事をする働き方。