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国土交通白書 2020

第5節 新技術をさらに活用するために

■3 今後の取組みの方向性

(1)新技術導入の課題

 我が国が抱える様々な課題に対して、新技術による解決への期待は大きい一方で、その導入は一部の分野ではなかなか進んでいない。新技術の導入が進まない理由の一つとして、安全面の不安が挙げられる。テレワークを導入しない理由として回答者のうち約2割(図表I-3-5-7)、キャッシュレス決済の活用に当たっての懸念等として回答者のうち約6割(図表I-3-5-8)が、情報漏洩・流出を不安視しているなど、セキュリティ面での不安が大きい。今後、諸外国から遅れず、新技術を活用していく上で、安全面を確保しながら開発・普及を進めていくことが重要である。

図表I-3-5-7 テレワークに関する意識
図表I-3-5-7 テレワークに関する意識
図表I-3-5-8 キャッシュレス決済に関する意識
図表I-3-5-8 キャッシュレス決済に関する意識

(2)具体的な方策

(安全面との両立)

 諸外国において開発・活用が進んでいる技術について、セキュリティ等を確保しつつ、普及を一層促進するための方策が必要である。

 2020年(令和2年)4月、「道路運送車両法の一部を改正する法律」が施行されることを受けて、国土交通省では、安全な自動運転車の開発・実用化・普及を図るため、自動運転車の安全性能やその作動状態の記録項目等を定めた安全基準を策定した。

 自動運転技術に関する国際ルールについては、これまで日本が主導してきた衝突被害軽減ブレーキの国際基準が成立しており、引き続き国際議論をリードするとともに、我が国の基準を国際基準に反映させるべく取り組んでいく。

(日本独自の技術の深化)

 日本で独自に発展してきた技術を活用した取組みを進めていくことも有効である。

 超電導リニアを採用した中央新幹線(リニア中央新幹線)は、2027年(令和9年)に品川・名古屋間、2037年に大阪までの全線が開業予定であり、それに向けて山梨実験線の活用や、品川駅から名古屋駅間でトンネル等の工事が進められている。リニア中央新幹線の最高設計速度505km/hという最新技術により、東京・名古屋間は40分、東京・大阪間は67分で結ばれる予定である注9。これにより、三大都市圏と地方圏のアクセスの利便性も飛躍的に向上することが期待される。また、三大都市圏が結ばれることにより、世界最大の経済規模を持つ「スーパー・メガリージョン注10」が形成されるとともに、その効果が沿線以外の都市にも拡大し、日本経済全体を発展させることが期待されている(図表I-3-5-9)。

図表I-3-5-9 スーパー・メガリージョン形成のイメージ
図表I-3-5-9 スーパー・メガリージョン形成のイメージ

 工事現場における生産性向上の取組みの一環として、無人化施工技術が開発されてきたが、災害の多い日本では、災害復旧工事等の防災の現場においても安全に施工できるような技術が独自に発展してきた。現状用いられているWi-Fiを使った無人化施工では、通信容量の不足、通信の遅延、同時接続機器数の制限等により視認性・操作性等に課題があるため、今後、超高速・大容量、超低遅延、多数同時接続の特長をもつ5Gを活用していくことで更なる生産性の向上を図っていくことが重要である(図表I-3-5-10)。

図表I-3-5-10 5Gを活用した無人化施工
図表I-3-5-10 5Gを活用した無人化施工

(デジタル・トランスフォーメーションによる生産性向上)

 これまで、インフラ・物流分野等において、デジタル化による生産性向上を推進してきたところであるが、新型コロナウイルスの感染拡大を契機として、テレワークの活用等のリモート化・デジタル化の重要性が認識された。このため、生産性の向上とともに、感染リスクの低減の観点からもデジタル・トランスフォーメーションの推進を一層徹底していくことが必要である。また、こうした流れに対応して、行政においても手続きの電子化等を進めていく必要がある。

  1. 注9 「スーパー・メガリージョン構想検討会最終とりまとめ」(2019年5月)による。
  2. 注10 ここでは東京から大阪までの人口7千万人の巨大都市圏を指す。