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国土交通白書 2020

第2節 インフラ・交通の着実な復旧・復興

第2節 インフラ・交通の着実な復旧・復興

(1)総論

 国土交通省が所管する公共インフラについては、本格復旧・復興へ向けて、事業計画及び工程表に基づき、着実に整備を推進している。今後も、被災地の要望を踏まえつつ、東北の復興を一日でも早く実現するよう取り組んでいく。

(2)海岸対策

 海岸堤防等については、令和2年3月末時点において、復旧・復興工事を行う624の地区海岸のうち、624地区で着工、449地区で完了している。その内、国施工区間(国が災害復旧を代行する区間を含む)約40kmについては、平成29年3月末で全延長において完了した。これらの工事の際には、津波が越流した場合であっても堤防の効果が粘り強く発揮できるような構造上の工夫を、可能な限り取り入れることとしており、宮城県岩沼市や山元町においては、堤防と一体的な盛土や植生を配置した「緑の防潮堤」を整備している。また、災害廃棄物を堤防盛土材として積極的に活用するとともに、周辺の景観や自然環境にも十分配慮することとしている。

(3)河川対策

 被災した国管理区間の河川管理施設については、被災前と同程度の安全水準を確保する本復旧工事が完了している。引き続き、本復旧工事に加えて必要な地震・津波対策を実施しており、令和2年度末までの完了を目指している。また、県・市町村管理区間においては、約9割の箇所において本復旧工事が完了している。

(4)下水道

 下水処理場については、被災処理場124箇所(福島県避難指示区域等内3箇所及び廃止2箇所を除く)すべてが復旧済である。また、被災した下水管984kmについては、平成31年3月末現在、915kmの本復旧が完了している。引き続き、復興計画と整合を図りつつ、早期の復旧・復興を目指すこととしている。

(5)土砂災害対策

 宮城県、福島県において、東日本大震災で土砂災害が発生した箇所等における土砂災害対策を推進している。

(6)道路

 道路については、1)高速道路は、平成27年3月1日に全線開通した常磐自動車道について、堅調に利用が図られているとともに、福島県浜通りを中心とした常磐自動車道沿線地域において企業立地の増加、雇用拡大に貢献している。また、常磐自動車道の一部4車線化及び付加車線の設置について、復興創生期間内での完成を目指すこととしている。さらに、追加ICの大熊IC、常磐双葉ICについては、同年6月に事業化し、大熊ICは31年3月31日に、常磐双葉ICは令和2年3月7日に開通した。2)直轄国道は、24年度末までに本復旧をおおむね完了(なお、国道45号の橋梁等大規模な被災箇所については、復興計画等を踏まえて復旧)、3)復興道路・復興支援道路については、国が中心となって整備する路線全長550km全線の開通見通しが確定した。(2019年度末までに計418km・76%が開通)

(7)鉄道

 東日本大震災により被災した路線のうち、三陸鉄道については平成26年4月、石巻線については27年3月、仙石線については同年5月に全面復旧した。また、大船渡線については27年12月、気仙沼線については28年3月、BRTによる本格復旧で合意がなされたほか、山田線については、31年3月に三陸鉄道リアス線として運転が再開された。

 常磐線については、27年3月に『将来的に全線で運行を再開させる』との方針を決定し、28年3月に31年度末までの全線開通を目指すこととした。運休区間のうち、原ノ町~小高駅間は28年7月、相馬~浜吉田駅間は同年12月、小高~浪江駅間は29年4月、富岡~竜田駅間は同年10月に開通した。令和2年3月14日、浪江~富岡駅間が開通したことにより、常磐線は全線開通となった。

 これにより、東日本大震災により被災した鉄道はBRTによる復旧を含め全て復旧した。

(8)港湾

 港湾については、平成29年度に相馬港及び釜石港の防波堤が完成し、主要な港湾施設の災害復旧は完了した。経済復興の礎となる岸壁・防波堤等の港湾施設の整備を行った。海上保安庁では、東日本大震災により被災した航路標識158基のうち、復旧が完了していない2基(令和元年3月時点)については、今後、港湾や防波堤の復旧に合わせて復旧していくこととしている。

 また、被災地域の経済を支える物流拠点、エネルギー輸入拠点の形成に必要な港湾の整備として、平成29年度に仙台塩釜港仙台港区において国際物流ターミナルの供用を開始したほか、引き続き小名浜港等において民間事業者の動きと連動した岸壁、防波堤等の整備を実施している。

  1. 注 Bus Rapid Transitの略で、バス専用道路を走行することにより通常の路線バスより速達性・定時性を向上させた交通システム