
国土交通白書 2020
第11節 効率的・重点的な施策展開
建設業は社会資本の整備の担い手であると同時に、社会の安全・安心の確保を担う、我が国の国土保全上必要不可欠な「地域の守り手」である。人口減少や高齢化が進む中にあっても、これらの役割を果たすため、建設業の賃金水準の向上や休日の拡大等による働き方改革とともに、生産性向上が必要不可欠である。国土交通省では、ICTの活用等により調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新までのあらゆる建設生産プロセスにおいて、抜本的な生産性向上を目指す「i-Construction」に取り組んでいる。
平成28年度から土工、29年度からは舗装工、浚渫工、30年度からは河川浚渫や点検などの維持管理分野、令和元年度からは地盤改良工や法面工事へICTを導入し、例えば土工では3割以上の時間短縮効果が確認された。また、積算基準の改定や自治体発注工事に対する専門家の派遣等、自治体や中小企業が更にICTを導入しやすくなるような環境整備を行った。
さらに、コンクリートの施工の効率化、施工時期等の平準化に取り組んでおり、施工時期の平準化に資する国庫債務負担行為については、令和元年度は約3,200億円に設定した。また、コンクリートの施工の効率化についても、プレキャスト製品の活用により、現場打ちの約2~5倍といった効果などを確認した。
3次元設計(BIM/CIM)については、平成24年度からBIM/CIM活用業務・工事の試行を始め、令和2年3月までに累計991件を実施し、活用を拡大させている。元年度には、BIM/CIMを作成するという視点から、BIM/CIMを活用するという視点で既存基準要領等を見直すとともに、発注者自らがBIM/CIMを活用するために必要な事項を整理し、BIM/CIMに関する基準要領等の制・改定を行った。また、平成30年度から大規模構造物の詳細設計においてはBIM/CIMを原則適用するとともに、令和元年度から詳細設計のBIM/CIMモデルの成果品がある工事においてもBIM/CIMを原則適用とするなど、更なるBIM/CIMの活用拡大を図っている。
新技術の活用については、「新技術導入促進調査経費」を活用して、実用段階に達していない技術シーズ・要素技術の現場実証や、技術シーズの試行・検証や新技術の現場実装に取り組むとともに、内閣府の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)の予算を活用して、建設現場のデータのリアルタイムな取得・活用などの革新的技術を導入・活用するモデルプロジェクトを令和元年度は25件実施するなど、革新的技術を活用した建設現場の一層の生産性向上を推進した。
また、平成29年1月に設立した産学官連携のi-Construction推進コンソーシアムでは、1,000者以上の会員の参画のもと、現場ニーズと技術シーズのマッチングの取組みを各地方整備局等に拡大するなど、技術開発・導入の促進などに取り組んでいる。加えて、建設現場の生産性向上に係る優れた取組みを表彰するために29年度に創設した「i-Construction大賞」について、表彰対象に地方公共団体等の取組みを拡大するなど、i-Constructionの更なる普及・促進に取り組んでいる。
今後は、5G、AI、クラウドなどの革新テクノロジーの導入を進め、無人化施工技術の現場実証や、現場作業員を支援する技術の公募、映像データを活用した監督検査の省力化など発注者も含めた働き方改革に資する取組みを推進するとともに、基準類の見直しに産学官連携して取り組んでいく。また、舗装修繕工など維持修繕分野へのICT施工の拡大、施工プロセスにおける3次元データの部分的活用を認める「簡易型ICT活用工事」の導入、ICT人材の育成等を進め、中小企業や地方公共団体などへの裾野拡大を図る。
