
国土交通白書 2020
第11節 効率的・重点的な施策展開
建設業の働き方改革、生産性向上、災害時の緊急対応強化等を目的として、令和元年6月に「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(公共工事品確法)、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(入札契約適正化法)及び「建設業法」を改正する「新・担い手3法」が成立した。同改正を受け、同年10月には、「公共工事品確法」第9条に基づく「基本方針」及び入札契約適正化法第17条に基づく「適正化指針」の改正が閣議決定された。さらに、2年1月に「公共工事品確法」第7条に規定された「発注者の責務」を果たすため、発注関係事務を適切かつ効率的に運用することができるよう、同法第22条に基づき「発注関係事務の運用に関する指針(運用指針)」(公共工事の品質確保の促進に関する関係省庁連絡会議申合せ)が策定された。
国土交通省では、新・担い手3法の本格運用を受けて、市町村をはじめとするすべての公共工事の発注者が本指針等を踏まえた具体的な取組みを進めるよう求めている。
(1)発注者責務を果たすための取組み
国土交通省では、「適正化指針」や「運用指針」を踏まえた発注関係事務の適切な運用に向けて様々な取組みを行っている。また、各発注者においてこれらの指針を踏まえた発注関係事務が適切に実施されているかについて、毎年、「入札契約適正化法等に基づく実態調査」等を行うとともに、その結果を取りまとめ、公表している。
1)予定価格の適正な設定
適正な積算に基づく設計書金額の一部を控除して予定価格とするいわゆる「歩切り」の根絶に向けた取組みとして、総務省とも連携し、あらゆる機会を通じて早期に見直すよう求めてきた結果、平成27年1月時点で慣例や自治体財政の健全化等のため歩切りを行っていたすべての地方公共団体(459団体)が、28年4月時点で、歩切りを廃止することを決定した。また、公共建築工事積算基準とその運用に係る各種取組みをとりまとめた「営繕積算方式活用マニュアル」を31年3月に改訂するなど、積算に係る最新の各種基準・マニュアル類の整備・周知にも努めている。
2)ダンピング対策
ダンピング受注は建設業の健全な発達を阻害することから、国土交通省では低入札価格調査制度及び最低制限価格制度をいずれも未導入の地方公共団体に対して、早急に導入に向けた検討を行うようあらゆる機会を通じて求めてきた。この結果、平成29年3月時点で126団体あった未導入団体は、30年8月時点で109団体まで減少した。
3)適切な設計変更
設計図書に施工条件を適切に明示するとともに、必要があると認められたときは、適切に設計図書を変更することとし、設計変更業務の円滑化を図るため、「設計変更ガイドライン」を策定し、地方公共団体に対しても策定を求めている。
4)施工時期等の平準化
繰越明許費や債務負担行為の活用による翌年度にわたる工期設定等の取組みについて地域の実情等に応じた支援を行うとともに、施工時期の平準化の取組みの意義についての周知や好事例の収集・周知、発注者ごとの施工の時期の平準化の進捗・取組状況の把握・公表により、施工時期の平準化の促進を図っている。
5)多様な入札契約方式の活用
「公共工事品確法」では、多様な入札契約方式の選択・活用、段階的選抜方式、技術提案・交渉方式、地域における社会資本の維持管理に資する方式(複数年契約、包括発注、共同受注による方式)等が規定されている。国土交通省では、事業の特性等に応じた入札契約方式を各発注者が選定できるよう、「公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドライン」を策定している。
(2)発注者間の連携・支援
国土交通省では、公共工事の品質確保等に資する各種取組みについて、「地域発注者協議会」、「国土交通省公共工事等発注機関連絡会」や「地方公共工事契約業務連絡協議会」等を通じて、情報共有を実施し、発注者間の一層の連携に努めている。また、公共建築工事の分野では、品確法に規定された「発注者の責務」も踏まえ、平成29年1月に社会資本整備審議会より答申された「官公庁施設整備における発注者のあり方について」及び30年10月に改定した答申解説書等を地方公共団体等へ普及するなど、発注者の役割に関する理解の促進に努めている。
