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国土交通白書 2020

第2節 観光先進国の実現に向けた取組み

■2 観光産業を革新し、国際競争力を高め、我が国の基幹産業に

(1)観光関係の規制・制度の適切な運用及び民泊サービスへの対応

 平成30年1月に施行された「通訳案内士法及び旅行業法の一部を改正する法律」に基づき新たに12地域で地域通訳案内士制度が導入(令和2年3月31日現在で37地域にて導入・3,235名が登録)されたほか、通訳案内士の資格を有さない者であっても、「多様な主体による外国語ガイド」として、外国語を用いた有償での通訳案内業務を行うことが可能となったことから、その実態等を把握する調査事業を実施し、活動実態、国内での対応可能範囲、得意とするツアーのジャンル等の状況が判明した。また、旅行サービス手配業の登録制度について、都道府県等とも連携して制度周知を図り、令和2年1月1日時点で1,434社の登録がなされた。

 また、「住宅宿泊事業法」に基づき、健全な民泊を推進している。住宅宿泊事業の届出住宅数は、令和2年3月11日時点で21,158件となった。さらに、東京オリンピック・パラリンピックに向けて、地域の交流を促進するため、元年12月にイベントホームステイ(イベント民泊)の実施要件を緩和した。

(2)産業界ニーズを踏まえた観光経営人材の育成・強化

 観光分野における人材の育成及び確保のため、トップレベル、中核レベル、実務レベル、それぞれのレベルで取組みを行った。

 トップレベルについては、我が国の観光産業を牽引する人材を育成するために、一橋大学及び京都大学の大学院段階(MBAを含む)に経営人材を恒常的に育成する拠点として、平成30年4月に設置した「観光MBA」について、全国の観光系大学・学部、大学院へ周知・展開を図るとともに、恒常的な経営人材育成拠点の構築に向けた検討・支援を実施した。

 中核レベルについては、平成30年度に採択した神戸山手大学、信州大学、横浜商科大学、令和元年度(平成31年度)に採択した愛媛大学、滋賀大学、北陸先端科学技術大学院大学の6大学において地域の宿泊業等の経営力向上に向けた講座を開講した。

 実務レベルについては、国内人材向けでは、地域の観光産業の強化・発展を推し進める実務人材を確保・育成するため、令和元年度は、全国3地域(乳頭温泉組合、栃木県観光物産協会、草津温泉観光協会)で人材の採用・定着に関する取組みをモデル事業として行った。

 また、外国人材向けでは、平成31年4月に新たな在留資格である「特定技能」が創設され、宿泊業においても国内外において技能測定試験を実施した他、同年2月に宿泊業が技能実習制度「2号移行対象職種」へ追加されるなど、外国人材の受入れを進めている。

(3)宿泊施設不足の早急な解消及び多様なニーズに合わせた宿泊施設の提供

 平成28年6月に発出した宿泊施設の整備に着目した容積率緩和制度の創設に係る通知に基づき、積極的な取組みを進めるとともに、旅館・ホテル等の宿泊施設におけるインバウンド対応の取組みへの支援を行い、多様なニーズに合わせた宿泊施設の提供を促進した。

(4)観光地域づくり法人(DMO)を核とする観光地域づくりの推進

 観光地域のマネジメント及びマーケティングを担う観光地域づくり法人(DMO)を核とする観光地域づくりを推進するため、令和2年3月31日時点で281団体を登録するとともに、情報・人材・財政の3つの側面から支援を行った。

(5)「観光地再生・活性化ファンド」の継続的な展開および次世代の観光立国実現のための財源の展開

 観光庁と包括的連携協定を締結している㈱地域経済活性化支援機構(REVIC)において、令和元年6月、地域の観光資源の磨き上げ等を図るため「観光遺産産業化ファンド」が設立された。観光庁では、同機構と連携して、本ファンドの設立に向けたファンドの方針や投資分野の選定を行ったほか、関係省庁等と同機構からなる会議を開催するなどの取組みを行った。

 また、観光先進国の実現に向けた観光基盤の拡充・強化を図る観点から、観光促進のための税として国際観光旅客税が創設された(平成31年1月7日制度開始)。財源の使途に関しては、受益と負担の関係から日本人出国者を含む負担者の納得が得られ、先進的で費用対効果が高く、地方創生をはじめとする我が国が直面する重要な政策課題に合致するものに充てることとしている。

(6)オリパラ後を見据えた訪日プロモーションの戦略的高度化及びインバウンド観光促進のための多様な魅力の対外発信強化

 日本政府観光局は、欧米豪地域からのインバウンドを更に促進するため、平成30年2月から、日本の旅行先としての認知度向上を目的とした「Enjoy my Japan グローバルキャンペーン」を開始し、デジタル技術を活用しつつ、ウェブを中心に広告・情報発信を展開した。

 また、日本政府観光局のウェブサイト等の利用状況等をデータとして蓄積・活用することで、外国人旅行者の興味関心等の定量的な分析を可能とし、ニーズに応じた機動的なプロモーションにつなげた。

 さらに、地方部への誘客を促進するため、日本政府観光局が地方自治体等に対してインバウンドの最新動向などを提供するセミナー等を開催した。

(7)MICE誘致の促進

 我が国のMICE国際競争力の更なる強化に向けて、平成30年7月に策定した「MICE国際競争力強化委員会提言」等に基づき、MICE誘致に意欲的な都市に対する機能高度化支援、関係省庁や日本政府観光局(JNTO)と連携した取組みを実施する等、より一層取組みを強化した。また、グローバル企業のビジネス活動を支える会議施設等の整備への支援を実施している。

(8)ビザの戦略的緩和

 ロシアについて、8項目の協力プランに関与するロシア企業等の常勤者に対する数次ビザの発給や、大学生等に対する一次ビザ申請手続の簡素化を実施した。また、カタール及びラオスに対する商用目的、文化人・知識人向け数次ビザの発給対象者の拡大及びビザの有効期限を延長した。

(9)訪日教育旅行の活性化

 日本政府観光局が運営する一元的窓口を通じ、訪日教育旅行のマッチングを支援したほか、教育関係者等の招請事業等を行った。

(10)観光教育の充実

 子供たちが地元や日本各地の歴史や文化の魅力的な観光資源等を学習し、その魅力を自ら発信できることを目指す観光教育では、小学校・中学校の社会科教育と観光教育の連携を図った学習指導案を制作し、観光庁のウェブサイトで公開した。

(11)若者のアウトバウンド活性化

 平成31年1月に「若者のアウトバウンド推進実行会議」を設立し、本会議の取組みとして、令和元年に官民連携による「ハタチの一歩~20歳 初めての海外体験プロジェクト~」を実施した。

 また、若者に旅の意義や素晴らしさを伝える「若旅授業」の全国展開に向け、文部科学省、地方運輸局、教育委員会や関係機関等と連携を強化し、31年度は計15回(うち地方部が8回)実施した。

  1. 注 DMO:Destination Management/Marketing Organization