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国土交通白書 2020

第2節 自然災害対策

■3 災害に強い交通体系の確保

(1)多重性・代替性の確保等

 鉄道、港湾、空港等の施設の耐災化や救援・復旧活動・事業継続に資する緊急輸送体制の確立を図ることにより、多重性、代替性を確保するとともに、利用者の安全確保に努めている。

 道路ネットワークは、災害により地域が孤立しやすいなどの災害面からの弱点を克服するために必要なものであり、計画的に整備を推進していく。

(2)道路防災対策

 大規模災害時の救急救命活動や復旧支援活動を支えるため、代替性確保のためのミッシングリンクの整備、レーザープロファイラ等を活用した土砂災害等の危険箇所の把握及び防災対策(斜面・盛土対策等)、震災対策(耐震補強等)、雪寒対策(防雪施設の整備等)、道路施設への防災機能強化(道の駅及びSA・PAの防災機能の付加、避難路・避難階段の整備)、土砂災害リスクに応じた通行規制基準の導入検討を進めるとともに、道路啓開計画の実効性を高めるため、民間企業等との災害協定の締結や、道路管理者間の協議会による啓開体制の構築を推進している。また、平成26年11月の「災害対策基本法」の改正を踏まえ、速やかな道路啓開に資する、道路管理者による円滑な車両移動のための体制・資機材の整備を推進している。

 さらに、バイクや自転車、カメラの活用に加え、UAV(無人航空機)による迅速な状況把握やETC2.0等の官民ビッグデータなども活用した「通れるマップ」により関係機関に情報共有・提供を実施している。

 その他、国土交通大臣が地方管理道路の道路啓開・災害復旧を代行できる制度を拡充する道路法の改正について、令和2年2月に閣議決定した。

 なお、東日本大震災による津波により壊滅的な被害を受けた地域等において、復興計画に位置付けられた市街地整備に伴う道路整備や、高速道路ICへのアクセス道路等の整備を推進している。また、津波被害を軽減するための対策の一つとして、標識柱等へ海抜表示シートを設置し、道路利用者への海抜情報の提供を推進している。

 また、令和元年房総半島台風においては、道路啓開と併せて、大規模停電からの復旧を支援するため、経済産業省と連携して東京電力が支援を必要とする箇所に対し、建設事業者と電気事業者のマッチングを行い、電線の復旧作業等の加速化を支援した。併せて、北海道開発局より、給水装置付きの散水車を派遣し、千葉県内において給水支援を実施した。

(3)無電柱化の推進

 「無電柱化推進計画」(平成30年4月国土交通大臣決定)及び「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」(平成30年12月閣議決定)に基づき、緊急輸送道路等災害の被害の拡大の防止を図るために必要な道路の無電柱化を推進している。また、緊急輸送道路のほか幅員が著しく狭い歩道等も対象に電柱の新設を禁止する措置や道路事業等にあわせた道路上の電柱の設置抑制、地方公共団体が実施する無電柱化への重点的な支援を実施している。

(4)各交通機関等における防災対策

 鉄道については、旅客会社等が行う落石・雪崩対策等の防災事業や、開通以来30年以上が経過する青函トンネルについて、(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構が行う先進導坑や作業坑に発生している変状への対策等に対し、その費用の一部を助成している。

 また、土砂災害等からの鉄軌道の安全確保を図るため、トンネル、雪覆、落石覆その他の災害等防止設備等の点検、除雪体制の整備及び災害により列車の運転に支障が生ずるおそれのあるときには当該路線の監視等の適切な実施など、災害に強く安全な鉄道輸送の確保のために必要な対応を行っている。

 さらに、近年、地域に深刻な影響を与える大きな災害が続いていることから、平成30年度に総理の指示により重要インフラの緊急点検を実施し、鉄道においては、1)河川橋梁の流失・傾斜対策、2)斜面からの土砂流入防止対策、3)地下駅・電源設備等の浸水対策、4)地震による落橋・桁ずれ、高架橋等の倒壊・損壊対策を対応方策としてとりまとめた。これを踏まえ、「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」を平成30年度から令和2年度までの3か年集中で実施している。また、令和元年東日本台風等により、地域鉄道においても橋梁の流失や隣接斜面の崩壊、電気設備等の浸水等の被害が多数発生したため、3か年緊急対策で実施している上記1)、2)、3)について、対象を拡大し、地域鉄道においても対策を実施している。

 被災した鉄道に対する復旧支援については、鉄道軌道整備法に基づく災害復旧事業費補助により、地震や豪雨などの災害で被災した鉄道の早期復旧を支援している。また、特に大規模な災害で甚大な被害を受けた鉄道については特別な支援制度により、復旧を強力に支援している。

 港湾については、令和元年房総半島台風及び令和元年東日本台風をはじめとする近年の台風による港湾での被害等を踏まえ、想定を超える高波・高潮・暴風が来襲した場合でも被害を軽減させるため、有識者による委員会を開催して「自助」「共助」「公助」が一体となった総合的な防災・減災対策について検討を行っている。また、大規模災害時でも港湾機能を維持するため、関係機関と連携し、防災訓練の実施や港湾BCPの改善を図る等、災害対応力強化に取り組んでいる。

(5)円滑な支援物資輸送体制の構築

 首都直下地震や南海トラフ巨大地震等の広域かつ大規模な災害が発生し、物流システムが寸断された場合、国民生活や経済活動へ甚大かつ広域的な影響が生じることが想定される。

 また、被災者の生活の維持のためには、必要な支援物資を迅速・確実に届けることが重要である中、平成28年熊本地震等においてラストマイル輸送の混乱等、課題が顕在化した。

 これを受け、平成30年度に有識者、業界団体等で構成する検討会を実施、策定した「ラストマイルにおける支援物資輸送・拠点開設・運営ハンドブック」を活用し、地方公共団体と連携した実践的な訓練を実施する等、円滑な支援物資輸送を実現するための取組みを実施した。

 また、令和元年房総半島台風、令和元年東日本台風等の大規模災害時においては、政府によるプッシュ型支援物資輸送に係る調整を実施した。