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国土交通白書 2020

第2節 自然災害対策

コラム 「防災気象情報の伝え方に関する検討会」

 気象庁は、平成30年7月豪雨において防災気象情報が必ずしも住民の避難行動につながっていなかったという指摘等を踏まえ、「防災気象情報の伝え方に関する検討会」を開催し、この検討会を通じて防災気象情報の伝え方について課題が整理され、その解決に向けた改善策が平成31年3月にとりまとめられました。これを受け、気象庁は様々な改善の取組みを令和元年度に行いました。

 また、令和元年出水期においては令和元年房総半島台風(台風第15号)や令和元年東日本台風(台風第19号)により、相次いで甚大な気象災害が発生し、防災気象情報の伝え方について新たに様々な課題が明らかになりました。そこで昨年度に引き続き開催された同検討会では、防災気象情報における避難判断への利活用状況の確認・検証を行ったうえで、防災気象情報の伝え方についての課題が再整理され、解決に向けた今後の改善策について令和2年3月にとりまとめられました。そこで示された主な課題とその改善策は以下のとおりです。

 課題1 「大雨特別警報」の解除にあたり、解除後も引き続き大河川の洪水に対する警戒が必要であることへの注意喚起が十分でなく、解除が安心情報と誤解された可能性があった

 →対策:大雨特別警報解除後の洪水への警戒を促すため、特別警報の解除を警報への切替と表現するとともに、警報への切替に併せて、最高水位の見込みや最高水位となる時間帯などの今後の洪水の見込みを発表する。また、警報への切替に先立って、本省庁の合同記者会見等を開催するなど、あらゆる手段で注意喚起を実施する。

 課題2 過去事例を引用した警戒の呼びかけに対し、強い危機感が伝わらない地域もある

 →対策:特定の地域のみで災害が起こるかのような印象を与えないよう、災害危険度が高まる地域を示す等の詳細かつ分かりやすい解説を併せて実施する。また、本庁等で行う記者会見等の中で、住民等が地元に特化した情報を取得するよう呼びかけるとともに、地元気象台等における地域に応じた解説を強化する。

 課題3 大雨特別警報が、何らかの災害が既に発生しているという警戒レベル5の状況に必ずしも適合しておらず、発表基準や表現の改善が必要である

 →対策:大雨特別警報を警戒レベル5相当の状況に一層適合させるように、災害発生との結びつきが強い「指数」を用いた新たな基準値を設定し、精度を改善する取組みを推進する。また、大雨特別警報の発表や予告の際に、特別警報を待ってから避難するのでは命に関わる事態になるという「手遅れ感」が確実に伝わるような呼びかけの表現に改善する。

記者会見資料

 課題4 「危険度分布」の認知や理解が不十分である。また長時間の情報がない、内水氾濫の危険度が表示できないなど課題があり、技術開発や表示の改善の要がある

 →対策:「危険度分布」の認知度・理解度を上げるための広報をさらに強化する。また、「危険度分布」の通知サービスの通知単位の細分化、1日先までの雨量予測を用いた「危険度分布」や「流域雨量指数の予測値」の技術開発、「本川の増水に起因する内水氾濫の危険度」を確認できるような表示の改善を進めるとともに、さらなる活用を促進していく。

 気象庁は、河川や砂防等の関係部局との緊密な連携のもと、改善策として取りまとめられた推進すべき取組みに沿って、速やかに取組みを進めていきます。