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国土交通白書 2020

第4節 健全な水循環の維持又は回復

■3 水をはぐくむ・水を上手に使う

(1)水資源の安定供給

 水利用の安定性を確保するためには、需要と供給の両面から地域の実情に応じた多様な施策を行う必要がある。具体的に、需要面では水の回収・反復利用の強化、節水意識の向上等があり、供給面ではダム等の水資源開発施設の建設、維持管理、老朽化対策、危機管理対策等がある。また、持続可能な地下水の保全と利用、雨水・再生水の利用促進のほか、「水源地域対策特別措置法」に基づいて、水源地域の生活環境、産業基盤等を整備し、あわせてダム貯水池の水質汚濁の防止等に取り組んでいる。

 さらに、地球温暖化などの気候変動により、渇水が頻発化、長期化、深刻化し、更なる渇水被害が発生することが懸念されている。このため、渇水による被害を防止、軽減する対策を推進するべく、既存施設の水供給の安全度と渇水リスクの評価を行うとともに、渇水被害を軽減するための対策等を定める渇水対応タイムライン(時系列の行動計画)の作成を促進する。

(2)水資源の有効利用

1)下水処理水の再利用拡大に向けた取組み

 下水処理水は、都市内において安定した水量が確保できる貴重な水資源である。下水処理水全体のうち、約1.2%が用途ごとに必要な処理が行われ、再生水としてせせらぎ用水、河川維持用水、水洗トイレ用水等に活用されており、更なる利用拡大に向けた取組みを推進している。

2)雨水利用等の推進

 水資源の有効利用のため、雨水を水洗トイレ用水や散水等へ利用する取組みを推進している。これらの利用施設は、平成30年度末において約3,593施設あり、その年間利用量は約1,121万m3である。

 「雨水の利用の推進に関する法律(平成26年法律第17号)」が26年5月1日に施行され、27年3月には、「雨水の利用の推進に関する基本方針」、「国及び独立行政法人等が建築物を整備する場合における自らの雨水の利用のための施設の設置に関する目標」を定めており、雨水の利用を推進し、もって水資源の有効利用を図り、あわせて下水道、河川等への雨水の集中的な流出の抑制に寄与することを目的に国は総合的な施策を策定し、実施していく。

(3)安全で良質な水の確保

 安全で良質な水道水の確保のため、河川環境や関係河川使用者の水利用に必要となる河川流量の確保や、水質事故などの不測の事態に備えた河川管理者や水道事業者等の関係機関の連携による監視体制の強化、下水道、集落排水施設、浄化槽の適切な役割分担のもとでの生活排水対策の実施により、水道水源である公共用水域等の水質保全に努めた。

(4)雨水の浸透対策の推進

 近年、流域の都市開発による不浸透域の拡大により、降雨が地下に浸透せず短時間で河川に流出する傾向にある。降雨をできるだけ地下に浸透させることにより、豪雨による浸水被害等を軽減させるとともに、地下水の涵養や湧水の復活等の健全な水循環系の構築にも寄与する雨水貯留浸透施設の整備を推進・促進している。

(5)持続可能な地下水の保全と利用の推進

 地下水汚染、塩水化などの地下水障害はその回復に極めて長時間を要し、特に地盤沈下は不可逆的な現象である。このため、地下水障害の防止や生態系の保全等を確保しつつ、地域の地下水を守り、水資源等として利用する「持続可能な地下水の保全と利用」を推進するため、地域の実情に応じた地下水マネジメントの推進を支援する。