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国土交通白書 2020

第4節 健全な水循環の維持又は回復

コラム 利根川上流域の少雪に伴う水利用への影響に備え、「渇水対応行動計画」を拡充・強化

 昭和39年にオリンピックが開催された東京では、「東京砂漠」と呼ばれるほどの深刻な水不足に陥っていましたが、昭和38年に着手した利根導水路建設事業の一部工事をオリンピック開催直前に完了させ、一部施設を先行供用すること等、様々な緊急的な対策により、無事に大会を開催させることが出来ました。近年では、水資源開発施設の整備や水利用の効率化など、供給側・需要側それぞれの立場で取り組まれた先人の努力により、徐々に安定的な水利用が可能になってきており、慢性的な水不足に追い込まれるような状況からは脱してきていると言えます。しかしながら、首都圏では、平成28年には利根川、平成29年には荒川と2年連続で、取水制限を実施しました。また、令和元年から令和2年の冬期は、日本海側では降雪量が記録的に少なく、利根川上流域でも少雪の影響を受けました。少雪により流域内の水資源が例年に比べ少なくなること等により、降雨が少ない場合には、水需要が増加する時期に水利用に影響が生じました。

 「東京2020大会」は、開催が来年夏に延期されることになりましたが、首都圏に水を安定的に供給することは、引き続き重要であり、渇水対策を着実に進めていく必要があります。

 首都圏への水の安定的な供給に万全を期すため、国土交通省関東地方整備局が主体となり令和元年8月に策定した「東京2020オリンピック・パラリンピック渇水対応行動計画」に基づき、水資源のより効果的かつ計画的な活用を図ってきました。令和2年4月には、利根川上流域の少雪に伴う水利用への影響に備えるため、洪水期のダムの弾力的管理に渡良瀬貯水池等を追加し計11ダムで実施するなど、「渇水対応行動計画」の拡充・強化を図りました。

 引き続き、関係機関の連携・協力のもと、「渇水対応行動計画」を適切に実行し、ダム群の貯水量の温存に努めます。また、東京2020大会開催に向け、渇水に備えた対応を実施し、水の安定的な供給に万全を期してまいります。

~「洪水期のダムの弾力的管理」を計11ダムで実施~