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国土交通白書 2020

第2節 国際交渉・連携等の推進

■3 各分野における多国間・二国間国際交渉・連携の取組み

(1)国土政策分野

 平成30年8月に設立された、アジア各国等において、政府関係者、国際機関等様々なステークホルダーをネットワーク化し、会議、ウェブサイト等により国土・地域政策に係る課題や知見を共有する仕組みである「国土・地域計画策定・推進支援プラットフォーム(SPP)」の第2回会合を、SPPに関わる様々なステークホルダーが参加する第10回世界都市フォーラムに併せて開催した。会合では、SPPを通じたアジア各国への国土・地域計画策定支援の取組みの紹介及び今後のSPPを通じた支援についてのディスカッションが行われた。

(2)都市分野

 国際的な不動産見本市である「MIPIM」(平成31年3月フランス・カンヌ開催)への日本ブース出展の開催支援等を行っている。

 また、令和元年5月は、EUとの間で都市政策に関する政策対話を行った。

 ミャンマーに対しては、同国建設省及びヤンゴン地域政府の要請を受け、都市・地域開発計画法関連法令の策定支援を実施するとともに、現地JICA専門家を通じて技術協力を行った。また、タイに対し、同国運輸省の要請を受け、バンスー開発計画の実現に向けて、現地JICA専門家を通じて技術協力を行った。

 さらに、令和元年度は新たな支援枠組みの下、タイ及びインド、ベトナムにおいて我が国企業の参入促進のための調査やセミナー等を実施した。

(3)水分野

 水問題は地球規模の問題であるという共通認識のもと、国際会議等において問題解決に向けた議論が行われている。今後、熊本市で第4回アジア・太平洋水サミットの開催が予定されている。同サミットは、アジア・太平洋地域の各国政府首脳級や国際機関の代表などが参加し、アジア、太平洋地域の水に関する諸問題について、幅広い視点から議論を行うものであり、本サミットの円滑な実施のため、関係各省が連携して準備を行った。また、令和元年6月にアメリカ(ワシントン)で開催された日本-世界銀行水災害に関するセミナーにおいて、日本における統合的な渇水リスクマネジメントの取組みとして、全国および流域レベルでの水資源開発計画、需要マネジメント、水利権、環境用水、渇水時の利水者間調整などの取組みを紹介した。

 それに加え、水資源分野では、独立行政法人水資源機構を事務局とし関係業界団体や関係省庁からなる「水資源分野における我が国事業者の海外展開活性化に向けた協議会」を活用し、ミャンマーにおいて統合水資源管理マスタープランの作成に向けた調査を行うなど、水資源分野の案件形成に向けた取組みを実施した。また、アジア河川流域機関ネットワーク(NARBO)と連携し、統合水資源管理(IWRM)の普及・促進に貢献している。このほか、アジアにおける汚水管理の意識向上等を目的としたアジア汚水管理パートナーシップ(AWaP)を平成30年に設立し、国連サミットで採択されたSDGs(ターゲット6.3「未処理汚水の割合の半減」)の目標達成に貢献するための協力関係を参加国・国際機関及び日本下水道事業団を含む関係機関と構築した。

(4)防災分野

 世界の水関連災害による被害の軽減に向けて、災害予防が持続可能な開発の鍵であるという共通認識を形成するため、我が国の経験・技術を発信するとともに、水災害予防の強化に関する国際連帯の形成に努めている。また、相手国の防災課題と日本の防災技術をマッチングさせるワークショップ「防災協働対話」をインドネシアやベトナム、ミャンマー、トルコで実施している。現在、既存ダムを有効活用するダム再生や危機管理型水位計などの本邦技術を活用した案件形成を進めているところである。また、国立研究開発法人土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)では、統合洪水解析システム(IFAS)や降雨流出氾濫(RRI)モデル等の開発、リスクマネジメントの研究、博士課程及び修士課程を含む人材育成プログラムの実施、UNESCOやアジア開発銀行、及び世界銀行のプロジェクトへの参画及び国際洪水イニシアチブ(IFI)事務局としての活動等を通じ、水災害に脆弱な国・地域を対象にした技術協力・国際支援を実施している。

 また、砂防分野においては、イタリア、韓国、スイス及びオーストリアと砂防技術に係る二国間会議を開催しているほか、JICA専門家の派遣等や研修の受入を通じて土砂災害対策や警戒避難、土地利用規制などの技術協力を行っている。

(5)道路分野

 世界道路協会(PIARC)の各技術委員会等に継続的に参画し、積極的に情報発信し国際貢献に努めている。令和元年10月には第26回世界道路会議がアラブ首長国連邦(UAE)・アブダビ首長国において開催され、世界131ヵ国から約3,750名の道路行政担当者が参加した。会議では「Connecting Cultures, Enabling Economies」をテーマとして、自動運転、インフラの維持管理等、各国の最新動向が報告され、意見交換が行われた。34カ国の大臣等も参加し、数多くの討議セッションが開催された。

 また、日ASEAN交通連携の枠組みの下、ASEAN地域における橋梁維持管理の質の向上を目指して新たに「橋梁維持管理技術共同研究プロジェクト」を開始することが、同年11月に開催された第17回日ASEAN交通大臣会合において承認された。

(6)住宅・建築分野

 国際建築規制協力委員会(IRCC)等への参加など、建築基準等に係る国際動向について関係国間での情報交換を行った。

 二国間としては、フランス、中国との会合を開催し、省エネ建築、木造建築、既存住宅改修等に関する情報交換等を行った。

 ミャンマー・バングラデシュ・フィリピン等に対しては、JICA専門家の派遣やセミナーの開催等を通じて幅広く技術協力を行った。

 また、国立研究開発法人建築研究所国際地震工学センター(IISEE)では地震学・地震工学・津波防災の研修を実施し、開発途上国の研究者、技術者の養成を通じて世界の地震防災対策の促進に貢献している。

(7)鉄道分野

 令和元年度も、日EU鉄道産業間対話やインド高速鉄道に関する合同委員会の開催、JICA専門家の派遣を通じた技術協力など、多国間・二国間での連携に向けた取組みを実施している。

 また、(一社)海外鉄道技術協力協会(JARTS)や(一社)国際高速鉄道協会(IHRA)において各国要人を招いての国際会議やセミナーを開催するなど、我が国鉄道技術の強みの紹介にも積極的に取り組んでいる。

(8)自動車分野

 平成27年の第13回日ASEAN交通大臣会合にて承認された、「自動車基準・認証制度をはじめとした包括的な交通安全・環境施策に関する日ASEAN新協力プログラム」に基づき、令和元年12月にアジア地域官民共同フォーラムを開催するなど、アジア地域における基準調和・相互認証活動・交通安全・環境保全施策などについて情報交換を行った。

(9)海事分野

 海事分野では、IMOにおける世界的な議題への対応の他、局長級会談等を通じた二国間協力、日ASEAN交通連携を通じた多国間協力の取組み等を実施している。

 令和元年度には米国及び中国と局長級会談をそれぞれ8月及び9月に開催し、海事分野における諸問題の解決に向け、情報共有や意見交換を実施したほか、国土交通省とギリシャ海運・島嶼政策省との間で、「海事技術・産業分野における協力覚書」を12月に締結した。

 ASEAN等新興国・途上国に対する海上保安能力向上や公共交通インフラの整備として巡視船や旅客船等の供与を行っており、平成31年3月には、ミャンマーに対し新造旅客船を供与した。同年には、我が国は、ジブチ及びサモアに対する船舶供与を行うことで合意した。この他、マラッカ・シンガポール海峡の共同水路測量調査事業の現地調査が30年3月に開始された。

 多国間協力に関しては、日ASEAN交通連携協力プロジェクトの一環として、クルーズ分野について、「日ASEANクルーズ振興戦略」に基づき、インドネシアにて現地旅行会社等を対象としたセミナーを開催した。また、ASEAN域内の内航船等において低環境負荷船を普及促進させるため、「ASEAN低環境負荷船普及戦略」を策定(令和元年11月の第17回日ASEAN交通大臣会合において承認)し、また同戦略を推進することを目的に、同年11月、日ASEAN各国の海事担当者による専門家会合を日本で開催した。

 その他、洋上浮体技術を活用した物流拠点の事業化可能性の検討、造船分野の人材育成支援等、我が国の優れた海事技術の海外展開にも取り組んでいる。

(10)港湾分野

 北東アジア港湾局長会議やAPEC交通WGを通じて、港湾行政に関する情報交換や、クルーズの促進等を実施している。また、国際航路協会(PIANC)や国際港湾協会(IAPH)等との協調を重視し、政府自らその会員となり、各国の政府関係者等との交流を行うとともに、各種研究委員会活動に積極的に参画している。特にPIANCに関しては、令和元年6月に各国の港湾・航路の専門家を集めた年次総会を開催し、我が国の質の高い港湾技術の発信や、世界の様々な港湾技術に関する最新の知見を得るなど、技術基準等の海外展開・国際標準化の推進にも積極的に取り組んでいる。

 さらに、平成30年10月には、LNGバンカリングを促進するための国際的な港湾間協力に関する覚書(28年10月に7箇国8者の港湾当局により署名、29年7月に3箇国3者が追加署名)に、新たにスエズ運河経済特区庁が加わり11箇国12者となり、LNGバンカリング港湾の国際的なネットワークが更に強化された。

(11)航空分野

 令和元年8月、ネパールにて第56回アジア太平洋航空局長会議が開催され、航空安全、航空保安及び航空管制等、航空全般に関するアジア太平洋地域各国の取組みについて意見交換を行った。

(12)物流分野

 第7回日中韓物流大臣会合(平成30年7月)における合意に基づき、環境にやさしい物流、シャーシの相互通行の拡大、北東アジア物流情報サービスネットワーク(NEAL-NET)の加盟国・加盟港湾の拡大等、日中韓の物流分野における協力の推進について中韓と議論を進めた。

 また、ASEANにおける我が国コールドチェーン物流の展開を官民で戦略的に推進するため、31年2月に関係機関及び事業者等とともに「ASEANスマートコールドチェーン構想」を策定した。加えて、日ASEAN交通連携の下、令和元年10月にタイと、2年1月にミャンマーと、物流政策対話を実施し、物流環境の改善等を協議したほか、マレーシアにおけるASEAN初のグリーン物流パートナーシップ会議の開催を支援した。元年5月ラオス、同年7月ベトナム物流人材育成事業にも取り組んでいる。

 さらに、海上輸送、航空輸送に続く第3の輸送手段としてのシベリア鉄道の利用拡大に向けて、平成30年度と令和元年度に、ロシア政府と共同で、シベリア鉄道を利用した貨物輸送の実証事業を実施した。

(13)地理空間情報分野

 ASEAN等に対し、電子基準点網の設置・運用支援等を行っている。タイでは、平成27年の日タイ首脳会談での協力合意等を踏まえ、電子基準点網の統合化に向けた知見の共有や専門家派遣を通じ、電子基準点網の整備支援を行っている。ミャンマーでは、ヤンゴン管区の地形図及び電子基準点設置を目的としたヤンゴンマッピングプロジェクトに参画し、令和元年11月には国土地理院で電子基準点に関する技術研修を実施した。また、ベトナムにおいて電子基準点に関するセミナーを開催、中国との間では測量・地図に関する協力会議を開催した。

(14)気象・地震津波分野

 世界気象機関(WMO)の枠組みの下、気象観測データや技術情報の交換に加え、我が国の技術を活かした台風情報等を提供している。また、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)政府間海洋学委員会(IOC)の枠組みの下、北西太平洋における津波情報を各国に提供している。

(15)海上保安分野

 海上保安庁は、世界海上保安機関長官級会合、北太平洋海上保安フォーラム、アジア海上保安機関長官級会合といった多国間会合や、二国間での長官級会合、連携訓練等を通じて、捜索救助、海上セキュリティ対策等の各分野で海上保安機関間の連携・協力を積極的に推進している。

 また、インド太平洋沿岸国の警備、救難、環境防災、海上交通安全、海図作製といった分野における能力向上支援のため、国際協力機構(JICA)や日本財団の枠組みにより、海上保安庁モバイルコーポレーションチームや専門的な知識を有する海上保安官を専門家として各国に派遣するとともに、各国の海上保安機関等の職員を日本に招へいし、能力向上支援に当たっている。また、海上保安政策に関する修士レベルの教育を行う海上保安政策プログラムを開講し、アジア諸国の海上保安機関職員を受け入れるなどして各国の連携協力、認識共有を図っている。

 このほか、海上保安庁は国際水路機関(IHO)の委員会等における海図作製に関する基準の策定、コスパス・サーサット機構における北西太平洋地域の取りまとめ、国際航路標識協会(IALA)の委員会等におけるVDES 注1の開発に係る検討、アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)に基づく情報共有センターへの職員の派遣など、国際機関へ積極的に参画している。

図表II-9-2-1 「フィリピン沿岸警備隊に対する高速小型艇等を用いた海上法執行訓練」
図表II-9-2-1 「フィリピン沿岸警備隊に対する高速小型艇等を用いた海上法執行訓練」