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国土交通白書 2020

第2節 国際交渉・連携等の推進

■2 国際機関等への貢献と戦略的活用

(1)アジア太平洋経済協力(APEC)

 APECは、アジア太平洋地域の持続可能な成長と繁栄に向けて、貿易・投資の自由化、ビジネスの円滑化、経済・技術協力等の活動を行う経済協力の枠組みであり、国土交通省では、APECの交通・観光分野に係る大臣会合及び作業部会に積極的に取り組んでいる。

 交通分野では、地域内のモノと人の流れを円滑化し貿易と投資を支えるべく交通大臣会合が開催されている。

 平成29年10月にパプアニューギニアで開催された第10回APEC交通大臣会合では、強靱的且つ持続可能な交通やイノベーションを通じた地域連結性をテーマとした議論が行われ、我が国からは、「インフラプロジェクトにおけるPPPの促進」のテーマでプレゼンテーションを行い、これらの議論が共同大臣宣言として取りまとめられた。

 また、APECの交通分野を取り扱う作業部会「APEC交通ワーキンググループ」の第48回会合が令和元年11月にモスクワにて開催され、APEC域内の交通分野における自由化・円滑化、保安、安全等について議論された。

 国内では、平成31年3月に開催した「APEC質の高いインフラ東京会議」における議論を踏まえ、APEC加盟国・地域における「質の高いインフラ」及びスマートシティの更なる理解の醸成や国際的スタンダード化の推進を図るため、令和2年度以降にAPEC加盟国・地域のインフラ担当省庁幹部を招聘し、「APEC質の高いインフラ投資を通じたスマートシティ会議」を開催することとしている。

(2)東南アジア諸国連合(ASEAN)との協力

 国土交通省は、ASEANにおける「質の高い交通」をさらに推進するため、平成15年に創設された日本とASEANの交通分野の協力枠組みである「日ASEAN交通連携」の下、道路交通安全に関する共同調査、港湾技術に関する共同研究、マラッカ・シンガポール海峡における水路再測量・海図整備、航空セキュリティ体制支援等、陸上、海上、航空にわたる様々な協力プロジェクトを実施している。これらのプロジェクトの進捗状況について確認するとともに、今後の方向性、新たなプロジェクトについて議論するため、「日ASEAN交通大臣会合」等の会合が毎年開催されている。令和元年11月にベトナム・ハノイで開催され、我が国からは御法川国土交通副大臣が出席した「第17回日ASEAN交通大臣会合」においては、「日ASEAN交通連携」の具体的実施計画である「日ASEAN交通連携ワークプラン 2019-2020」とともに、「ASEAN地域へのGNSS教育訓練プロジェクト」、「過積載車両管理のためのICTソリューション実証実験」、「橋梁維持管理技術共同研究プロジェクト」、「船舶通航サービス(VTS)管制官要員の増強」、及び「公共交通におけるバリアフリー推進」の5つの新規協力プロジェクトが承認された。また、これまでのプロジェクトの成果物として、「ASEAN 低環境負荷船普及戦略」が承認された。

 また、国土交通省では、平成30年にASEANが「ASEANスマートシティ・ネットワーク(ASCN)」を設立したことを踏まえ、関係府省とも連携してこれに協力するため、令和元年10月、「日ASEANスマートシティ・ネットワーク・ハイレベル会合」を横浜で開催するとともに、「日ASEANスマートシティ・ネットワーク官民協議会(JASCA)」を設立した。令和元年11月の日ASEAN首脳会合においても、これらの取組みを通じ、引き続きASCN推進に日本が協力していくことを確認した。

(3)経済協力開発機構(OECD)

 国土交通省では、OECDの活動のうち、国際交通フォーラム(ITF)、交通研究委員会(TRC)、造船部会、地域開発政策委員会(RDPC)並びに観光委員会に参画している。

 ITFは、60ヵ国の交通担当大臣を中心に、年1回、世界的に著名な有識者・経済人を交え、交通政策に関するハイレベルかつ自由な意見交換を行うITF交通大臣会合を開催しており、これまで、交通分野に関する気候変動問題、自動運転やインフラファイナンス等に関して議論を行ってきた。令和元年5月の大臣会合では、「地域統合のための交通連結性」をテーマとして、COP24を踏まえた気候変動対策や新しいモビリティのガバナンスのあり方等について、様々な角度から議論が行われた。

 TRCでは、加盟国に共通した政策課題について調査研究を行っており、平成31年3月には我が国が議長を務めたワーキンググループの報告書「Smart Use of Roads」が刊行された。

 造船部会は、造船に関する唯一の多国間フォーラムとして、国際造船市場に関する政策協調のため重要な役割を担っており、造船に関する公的支援の適正化や透明性確保、輸出信用等に関する議論を行っている。29年より、市場を歪曲する公的助成を防止するための国際規律の策定等についての議論を進めてきたが、韓国の強い反対により合意に至らず、令和元年12月の第129回造船部会において、議論を当面凍結することが決定された。他方、各国の支援策の報告制度の改善や政策レビュー強化のための議論が進んでおり、引き続き、OECD造船部会における各国との政策協調のための議論を継続的に実施し、公正な競争条件の確保に努める。

 RDPCでは、国土・地域政策等に関する各加盟国の政策レビューや、土地利用のガバナンスに関する調査等に積極的に取り組んでいる。平成31年3月には由木国土交通審議官が閣僚級会合に出席し、世界の中長期的な変動(メガトレンド)を踏まえた地域・都市政策のあり方についての議論に参加した。

 観光委員会では、各国の観光関連政策のレビューや、観光統計データの整備及び分析等を行っている。我が国は同委員会の副議長国として活動しており、同委員会と積極的に連携している。令和元年10月に日本が議長国として開催したG20観光大臣会合においては、充実した議論を行うため、OECDから調査結果の報告があった。

(4)国際連合(UN)

1)国際海事機関(IMO)

 IMOは、船舶の安全・環境等に関する国際ルールを定めている国連の専門機関である。我が国は、世界の主要海運・造船国として同機関の活動に積極的に参加しており、環境関係の条約を採択する委員会の議長は日本人が務めている。

 令和元年度には、国際海運からの温室効果ガス(GHG)排出削減のための就航済み船舶への対策等新たな国際ルールをIMOに提案した他、舶用燃料油の硫黄分濃度規制の統一的実施のための不正対策ルールの策定、自動運航船の実証運航に関する指針の策定等に積極的に貢献した。

 また、元年11月に開催された第31回総会における理事国選挙の結果、我が国はカテゴリーA(主要海運国)においてトップで再選を果たした。

2)国際民間航空機関(ICAO)

 ICAOは、国際民間航空の安全かつ秩序ある発達及び国際航空運送業務の健全かつ経済的な運営に向け、一定のルール等を定めている国連の専門機関の1つである。我が国は加盟国中第3位(令和元年)の分担金を負担し、また、第1カテゴリー(航空輸送において最も重要な国)の理事国として、ICAOの諸活動に積極的に参加し、国際民間航空の発展に寄与している。

3)国連人間居住計画(UN-Habitat)

 UN-Habitatは、人間居住問題を専門に扱う国連の基金・計画の一つである。我が国は、設立以来の理事国としてUN-Habitatの諸活動に積極的に参加し、我が国の国土・地域・居住環境改善分野での経験、知見を活かした協力を通じ、世界、特にアジアでの人口爆発、急激な都市化に伴う人間居住問題の改善に貢献している。

 令和2年2月には、今後20年間の都市化や人間居住に係る課題解決のための国際的な取組指針である「ニュー・アーバン・アジェンダ」の実施における文化とイノベーションが果たす役割の探求をテーマに、第10回世界都市フォーラムがアブダビで開催された。本フォーラムにおいて、我が国として、国土・地域政策、質の高いインフラ投資等を通じて、持続可能で包括的な都市の成長を導くなど、「ニュー・アーバン・アジェンダ」の実現に貢献する旨明言した。また、スマートシティをテーマに、我が国の都市開発・住宅分野の優れた最新技術、インフラシステム等の紹介を目的とした展示を実施した。

4)国連における水と防災に関する取組み

 「水と災害ハイレベルパネル」の第13・14回会合及び「第4回 国連 水と災害に関する特別会合」に参加し、水関連災害に関する国際的な意識の高揚、経験や知見の共有、各国施策を前進させるための国際社会の取組みを議論した。また、「第4回 国連 水と災害に関する特別会合」では事前投資や予防防災の重要性を示す「水防災投資原則」が発表された。

5)持続可能な開発目標(SDGs)

 平成27年9月の国連サミットにおいて、持続可能な開発目標(SDGs)が採択されたことを受け、28年12月に安倍総理を本部長とするSDGs推進本部が、我が国におけるSDGsの実施のための指針(SDGs実施指針)を決定した。令和元年度においては、平成28年の策定以降初めて「SDGs実施指針」を改定するとともに、令和元年のSDGs推進のための具体的施策をとりまとめた『SDGsアクションプラン2020』を決定した。国内外における持続可能な開発の実現に向けて、国土交通省においても「質の高いインフラ投資の推進」等の関連施策を通じて、SDGsの達成に向けて取り組みを行っていく。

6)国連における地理空間情報に関する取組み

 国連経済社会理事会に設置されている地球規模の地理空間情報管理に関する国連専門家委員会(UN-GGIM)に参加し、我が国の経験を活かし、地球規模の測地基準座標系(GGRF)の構築や災害情報を共有するための地理空間情報、サービス等に貢献している。また、我が国はUN-GGIMアジア太平洋地域委員会の副会長、測地基準座標系に関する作業部会長として、国連の取組みに寄与している。

(5)世界銀行(WB)

 国土交通省は、「質の高いインフラ投資」の情報発信のため、世界銀行が実施する各国の住宅・都市開発担当者を対象とした招聘事業(令和元年6月及び2年2月)及び現地でのワークショップ(2年3月:於ケニア)において、日本の住宅供給及び都市開発に関する知見を紹介した。

(6)アフリカ開発会議(TICAD)

 アフリカにおける「質の高いインフラ投資」を推進するために、「アフリカインフラ協議会(JAIDA)」と連携し、官民インフラ会議等の取組みを進めているところ、令和元年に日本で開催されたTICAD7の機会をとらえて、7ヵ国・機関から8大臣を招き「第2回日・アフリカ官民インフラ会議」を開催し、「質の高いインフラ投資」に対する更なる理解を深めるとともに、官民連携による案件形成に向けた議論を行った。

(7)アジア欧州会合(ASEM)

 ASEMは、アジア・欧州関係の強化を目指して1996年に発足した対話と協力の場であり、アジア側参加メンバー(21か国と1機関)、欧州側参加メンバー(30か国と1機関)の合計51か国と2機関によって構成される。

 令和元年12月に開催された第5回ASEM交通大臣会合では、交通のデジタル化に向けた技術開発の重要性、交通の脱炭素化、環境に優しい交通の重要性などに関する議論が行われた。我が国からは、和田国土交通大臣政務官が出席し、MaaSや自動運転など交通のデジタル化に関する取組みや、交通分野における脱炭素化に向けた取組みを紹介した。