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国土交通白書 2020

第1節 ICTの利活用による国土交通分野のイノベーションの推進

コラム 地図と高精度測位を結びつける~定常時地殻変動補正システム(POS2JGD)の構築~

 地図などの位置情報は、過去の基準となる日に基づいた位置で表されています。一方、GPSなどの衛星測位技術により得られる位置は、計測時点の位置を表しています。日本列島はプレート境界に位置しており、常に複雑な地殻変動の影響を受けているため、同じ場所を計測しても、計測日が異なれば違った結果になります。「地図」と「測位結果」との間の位置のズレは、衛星測位により得られる位置の誤差と比較すると十分小さかったため、これまでズレはあまり問題になりませんでした。

 近年、センチメータ級測位補強サービス(CLAS)の開始や精密単独測位(PPP)技術の進展などにより、誰でも簡単に数センチメートルの精度で位置を知ることができる高精度測位が普及しつつあり、i-Constructionやスマート農業などの分野では既に利用が始まっています。そこで前述のズレを解消するために国土地理院では、測位結果を補正して地図上の位置に合わせる「定常時地殻変動補正システム(POS2JGD)」を構築し、令和2年3月から運用を開始しました。

図1 地図と測位結果のズレを補正する「定常時地殻変動補正システム(POS2JGD)」
図1 水準測量を実施する路線
図2 「定常時地殻変動補正システム(POS2JGD)」利用イメージ
図2 「定常時地殻変動補正システム(POS2JGD)」利用イメージ

 POS2JGDでは、測位結果を補正するパラメータの提供に加え、Webサイト上で補正計算ができるサービスや、GNSS受信機モジュールから補正計算サービスを利用できるようWebAPIも提供しています。これにより、高精度な位置情報を誰でも簡単に利用できる環境を整えるとともに、自動運転やドローン物流に代表される新たなサービスの創出に貢献していきます。