国土交通白書 2020
特集 新型コロナウイルス感染症への対応
「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」は、コロナウイルスのひとつである。コロナウイルスには、一般の風邪の原因となるウイルスのほか、「重症急性呼吸器症候群(SARS)」や2012年以降発生している「中東呼吸器症候群(MERS)」ウイルスが含まれる。
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議等によれば、一般的には「飛沫感染注1」及び「接触感染注2」で感染が生じる。また、閉鎖した空間において近距離で多くの人と会話するなどの環境では、咳やくしゃみなどの症状がなくても感染を拡大させるリスクがあるとされる。特に、1)密閉空間(換気の悪い密閉空間である)、2)密集場所(多くの人が密集している)、3)密接場面(互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や発声が行われる)という3つの条件(「3つの密」)のある場では感染を拡大させるリスクが高いと考えられている。
新型コロナウイルスに感染すると、発熱や呼吸器症状が1週間前後続くことが多く、強いだるさ(倦怠感)や強い味覚・嗅覚障害を訴える人が多いことも報告されている。罹患しても約8割は軽症で経過し、また、感染者の8割は人への感染はなく、入院例も含めて治癒する例も多いことが報告されている。一方、重症度については、季節性インフルエンザと比べて死亡リスクが高いことが報告されており、特に、高齢者や基礎疾患のある人では重症化するリスクが高いことも報告されている。
新型コロナウイルスは、2019年12月に中国湖北省武漢市で発生が報告され、その後2020年1月31日に世界保健機関(WHO)により国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態に該当すると発表される等、感染が世界的に拡大した。国内においても、1月15日に最初の感染者が確認されて以降、都市部を中心に感染者数が増加し、地方においても急速に感染拡大する等、多くの感染者を生み出すこととなった。
国内の感染者については、1月15日に最初の感染が確認された後、4月9日には累計感染者数が5,000人を超えた。3月までは、海外において感染し、国内に移入したと疑われる感染者が多くを占めていたが、その後感染経路が特定できていない感染者が多くを占める状況となり、それまでよく見られていた特定の場所でクラスターが発生することによる集団感染に加え、感染が全国各地に広がる中での日常生活における感染が、徐々に増大していった。4月18日には累積感染者数が10,000人を超え、5月末時点で16,884人、死亡者についても、2月13日に国内で最初の死亡者が確認されて以降、5月末時点で892人となっている(図表1-1-2、図表1-1-3)。
一方、海外の状況としては、2019年12月に中国武漢市で最初の感染者が公式に報告されて以降、世界中に感染が拡大し、特に欧州や米国では3月以降に感染が爆発的に増加した。世界全体の感染者数は、4月3日には100万人を超え、5月末時点で約600万人に到達したほか、累計死亡者数についても5月末時点で約37万人となるなど、感染が拡大している。
- 注1 感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つばなど)と一緒にウイルスが放出され、他の人がそのウイルスを口や鼻などから吸い込んで感染する現象である。
- 注2 感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後にその手で周りの物に触れるとウイルスが付き、他の人がそれを触るとウイルスが手に付着し、その手で口や鼻を触ることにより粘膜から感染する現象である。