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国土交通白書 2020

特集 新型コロナウイルス感染症への対応

■4 今後の対応

(1)感染拡大の抑止と社会経済活動の維持の両立

 2020年5月25日、全国において緊急事態が解除され、感染拡大の抑止と社会経済活動の維持を両立させる、新たなステージが始まった。基本的対処方針においては、感染拡大を予防する「新しい生活様式」(図表1-1-15)を社会経済全体に定着させていくとともに、事業者において、業種ごとに策定される感染拡大予防ガイドライン等が実践されることを前提として、地域の感染状況や医療提供体制の確保状況等を踏まえながら、一定の移行期間を設け、外出の自粛や施設の使用制限の要請等を緩和しつつ、段階的に社会経済の活動レベルを引き上げていくこととしている。

図表1-1-15 「新しい生活様式」の実践例
図表1-1-15 「新しい生活様式」の実践例

(2)ガイドラインの実践、「新しい生活様式」

 国土交通省としては、関係業界に対し積極的に情報提供・助言を行うとともに、感染症の専門家の紹介を行うなどその作成を支援し、これまでに交通・物流、宿泊、建設等国土交通省所管の47の関係団体が37のガイドラインを作成し、公表している(2020年5月末時点)。

 ガイドラインは、現場で働く従業員を感染リスクから守るとともに、利用者に安心してサービスや施設を利用いただくための指針であり、ガイドラインに沿った感染予防対策を、事業者において確実に実践することが重要であることから、関係業界に対し、ガイドラインを個々の事業者に周知し、感染予防に万全を期すよう要請するとともに、利用者が安心して公共交通機関等を利用できるよう、事業者が講じている感染予防対策、利用者に求める感染予防対策について、ホームページ等で積極的に情報発信することを促している。国土交通省としても、事業者の先進的な感染予防対策について発信している。

 今後、公共交通機関の利用者の増加が見込まれる中、車内換気の励行、「新しい生活様式」の定着に向けた、マスクの着用や会話を控えめにすること等の利用者への呼びかけ、混雑状況の情報提供等のさらなる取組みが求められる。国土交通省としても、こうした事業者の講ずる感染予防対策への支援として、バス・タクシーにおける防菌シートや感染防止仕切り板等の導入、地域公共交通事業者による駅・車両等の衛生対策、車内等の密度を上げないよう配慮した運行等の実証事業への支援等を行うとともに、事業者の先進的・積極的な取組みを国民に向けて発信していくこととしている。

 他方、公共交通機関等における「3つの密」防止の観点からは、事業者側の努力のみならず、利用者側の需要の抑制・分散を図る取組みが不可欠であることから、経済団体等に対し、テレワーク(在宅勤務)や時差出勤の積極的な取組みについて、関係省庁とともに協力を呼びかけている。

(3)感染収束後の社会の変化への対応

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機として、社会の様々な面での変化が生じている。働き方の面では、企業におけるテレワーク、ローテーション勤務、時差出勤、自転車通勤の積極的な活用等の取組みが促された。また、今回のような事態にも対応可能な遠隔教育などICT等を活用したリモート・サービスへのニーズの高さが改めて浮き彫りとなったことから、様々なサービスにおけるリモート化等によるデジタル・トランスフォーメーションが加速化すると見込まれる。さらに、マスク等の衛生用品も含めた我が国のサプライチェーンの脆弱性が顕在化したことを踏まえ、国内回帰や多元化を通じた強固なサプライチェーンの構築が進むと予想される。このような社会の変化は、感染収束後においても進行・定着すると考えられる。このため、国土交通分野においても、このような社会の変化に的確に対応していく必要がある。