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国土交通白書 2021

第2節 過去の危機と変化

コラム 3.11から10年、その経験や教訓を未来へ伝える

 2011年3月11日に発生した東日本大震災から10年が経ちました。私たちはこの震災で、改めて災害の恐ろしさを知り、多くの教訓を得ました。東日本大震災の記憶を風化させず、教訓も含めて後世に伝承し、これからの防災減災に活かしていくことが大切です。青森県、岩手県、宮城県、福島県には、被災の実情や教訓を伝える遺構や展示施設が数多くあり、令和3年4月1日時点で276施設が震災伝承施設として登録されています。そして、この4県を縦断するような震災伝承施設の連なりは「3.11伝承ロード」と呼ばれ、これを通じて、被災の実情や教訓を日本中、世界中に発信するとともに、子や孫へと未来に伝え続けていく取組みがなされています。また、震災伝承施設を巡るバスツアーや研修会注1の他、各地でパネル展も開催されています。

 今回、私たち白書制作班は、4つの主要な伝承館を中心に、3.11伝承ロードを巡ってきました。それぞれに特徴があり、とても見応えのある施設ばかりで、テレビやインターネットでは得られない貴重な経験となりました。また、施設によっては、語り部さんからお話を聞いたり案内してもらうことができます(要予約)。周辺の観光名所と合わせて、ぜひ実際に訪れてみてはいかがでしょうか。震災伝承施設一覧や3.11伝承ロードマップは「国土交通省東北地方整備局」や「(一財)3.11伝承ロード推進機構」等のHP注2をご覧ください。

1.東日本大震災津波伝承館(愛称「いわてTSUNAMIつなみメモリアル」)(岩手県陸前高田市) 注3

 高田松原津波復興祈念公園注4内にある施設で、令和元年9月22日に開館し、校外学習や各種研修会でも利用されており、令和3年3月31日現在で約31万人が来館しました。津波で被災した消防車やはしげた等の実物展示、東北地方整備局の災害対策室の再現など、充実した展示を見ることができます。また、岩手県の沿岸地域に伝わる「津波の時はてんでんこ(周りを気にせず、てんでんばらばら、それぞれで逃げなさい)」という命を守る教えを、伝承館では伝えています。

 岩手・宮城・福島の祈念公園の中で、この高田松原は最も整備が進んでおり、3.11伝承ロードの核ともいえる存在です。祈念公園内には、「奇跡の一本松」や旧道の駅「タピック45」、「陸前高田ユースホステル」などの震災遺構があります。

奇跡の一本松
奇跡の一本松
海を望む場
奇跡の一本松

(上)約7万本の中で唯一生き残った「奇跡の一本松」
(震災後に枯死したためモニュメントとして保存)
(下)祈念公園内の「海を望む場」より。
中央が「追悼の広場」、奥が伝承館と道の駅
資料)国土交通省

2.気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館(宮城県気仙沼市)注5

 こちらの施設では、気仙沼こうよう高校(水産高校)の校舎が、ほぼ被災当時のまま震災遺構として残されており、実際に内部を見学することができます。当時、4階建て校舎の4階まで津波が押し寄せた、その爪痕の凄まじさは衝撃的で、私たちも、写真や映像よりも遥かに鮮明に記憶に刻まれました。幸いにも、同校の生徒は全員、より高台にある気仙沼市立はしかみ中学校などに避難して無事だったほか、校舎に残った先生や気仙沼向洋高校の北校舎の改修工事をおこなっていた工事関係者らは屋上に避難し助かったそうです。

 併設する伝承館では様々な映像や展示等を見ることができますが、その中でも、私たちには、気仙沼市立階上中学校の卒業式答辞の映像がとても印象的でした。卒業生代表による答辞ですが、大切なものを奪われた辛さ、悔しさを抱えながらも、強く、正しく、たくましく生きていきたいというその言葉に、思わず涙がこぼれました。

破壊された校舎
破壊された校舎
見学した学生による感想
見学した学生による感想

資料)国土交通省

3.いわき震災伝承みらい館(福島県いわき市) 注6

 いわき市では、本震からちょうど1か月後に発生した震度6弱の余震によっても、道路寸断や断水など大きく被災したため、パネル展示では、この余震についても取り上げられています。また、津波の傷跡が残る「奇跡のピアノ」なども展示されています。

 語り部によるガイダンス映像では、「私たちの多くが、津波が来ることを知っていたのに、私は愚かにも、わざわざ海岸を見に行ってしまった。私たちの心の隙間に災害が入り込んでしまった。」と自ら経験した震災の記憶と教訓を語っていたことが印象的でした。

施設外観
施設外観
展示室
展示室

資料)国土交通省

4.東日本大震災・原子力災害伝承館(福島県双葉町)注7

 令和2年9月20日にオープンしたこちらの施設は、福島第一原子力発電所が位置する福島県双葉郡に設置されており、地震、津波災害のほか、福島特有の原子力災害について学ぶことができます。展示の導入部分の7面巨大スクリーンで見る映像は圧巻で、その後も事故直後の原子力発電所や、県民の想い、原子力災害の影響、復興への挑戦と展示が続きます。福島第一原発の精巧なミニチュアもあり、当時の状況を理解するのに役立ちます。

施設外観
施設外観
福島第一原発ミニチュア
福島第一原発ミニチュア

資料)国土交通省

3.11伝承ロードロゴ
3.11伝承ロードロゴ
ロードマップ表紙
ロードマップ表紙

資料)3.11伝承ロード推進機構

【関連リンク】

・(一財)3.11伝承ロード推進機構

https://www.311densho.or.jp/

・3.11伝承ロード(国土交通省東北地方整備局)

https://www.thr.mlit.go.jp/shinsaidensho/

・東日本大震災津波伝承館(愛称「いわてTSUNAMIメモリアル」)(岩手県陸前高田市)

https://iwate-tsunami-memorial.jp/

・高田松原津波復興祈念公園

https://takatamatsubara-park.com/

・気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館(宮城県気仙沼市)

https://www.kesennuma-memorial.jp/

・いわき震災伝承みらい館(福島県いわき市)

https://memorial-iwaki.com/

・東日本大震災・原子力災害伝承館(福島県双葉町)

https://www.fipo.or.jp/lore/

・東日本大震災発災10年ポータルサイト

https://www.reconstruction.go.jp/10year/