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国土交通白書 2021

第2節 豊かな未来の姿

コラム 日本の幸福度はどれぐらい?

 国の幸福度を数値で測定することはできるでしょうか。政府の役割をすごく単純化して表現するならば、「幸福な社会を形成すること」と言って差し支えないと思います。このため、幸福度を測定できれば、「幸福な社会」に向かう道筋や手段が把握しやすくなります。

 国の豊かさを測定する指標としてなじみ深いものは、GDP(国民総生産)です。しかし、GDPは、「一国の領土内で一定期間に政府、全企業、非営利組織、家計によって行われたすべての生産を、財・サービスの種類にかかわらず数値化したもの」であり、幸福度を測定するものではありません。例えば、GDPでは、不平等の度合いや、持続可能性も表すことができません。このようなGDPに対する問題意識から、幸福度を測定する新たな指標を開発する動きが国際機関を中心に活発化しています。

 このような動きにより開発された幸福度指標として代表的なものが、OECDの「Better Life Index(より良い暮らし指標)」です。Better Life Indexは、住宅、所得と富、雇用と仕事の質、社会とのつながり、知識と技能、環境の質、市民参画、健康状態、主観的幸福、安全、仕事と生活のバランスという11の項目により構成されます。一言に「幸福」と言っても、幸福を形成する要素は多様であるため、国の幸福度を把握する上で重要と考えられる要素をこの11項目に設定しています。このように複数の指標により幸福度を測定する手法は、Better Life Index以外の幸福度指標にも共通しています。

 ただし、国ごとの環境や国民性などによって、幸福度指標の数値の現れ方には影響が出ると考えられています。このため、国ごとに数値を単純比較することはリスクがあります。ですが、各国と比較した自国の特徴や、特定の国における項目ごとの経年変化などを把握する上で有用であることは間違いないと言えます。

 日本のBetter Life Indexの状況はどうなっているのでしょうか。Better Life Indexによる分析結果は、2年に一度、「How's Life」という報告書によって公表されています。下に掲載したグラフは、2020年に公表された「How's Life」における日本のBetter Life Indexの分析結果について、他のOECDメンバー国と比べた相対的な日本の強みと弱みを示したグラフです。バーが長い指標は他国より優れている(幸福度が高い)ことを、バーが短いと劣っている(幸福度が低い)ことを示しています(「*」が付いている項目はネガティブ項目のため、反転スコアである)。ストライプのバーは不平等を示す指標なので、逆に、バーが長いと幸福度が低いことを示します。データがない指標は白く表示されています。見ての通り、日本のBetter Life Indexは指標によって大きくばらつきがあります。例えば、「就業率」、「平均余命」などは非常に良い結果ですが、「過密率」、「休暇」、「負の感情・バランス」などはOECD平均よりも大きく劣っています。

「How's Life? 2020 measuring Well-being」 表紙
「How's Life? 2020 measuring Well-being」 表紙

日本の幸福度(2018年またはデータが利用可能な直近年)
(「How's Life in Japan(OECD Better Life Initiative)」より抜粋。)

 幸福度指標及びBetter Life Indexについての紹介は以上ですが、今回の白書においては、幸福論の有識者に対し、現在の日本社会の幸福度や目指すべき豊かな社会の姿についてインタビューした記事も掲載していますので、そちらも併せてお読みいただきたいと思います。

【関連リンク】

・OECD 東京センター HP Better Life Index ページ

https://www.oecd.org/tokyo/statistics/aboutbli.htm

・OECD HP Better Life Index ページ(英語)

http://www.oecdbetterlifeindex.org/