
国土交通白書 2021
第5節 観光政策の推進
平成28年3月、内閣総理大臣を議長とする「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」は「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定し、2020年に訪日外国人旅行者数4,000万人、訪日外国人旅行消費額8兆円等を目指すこととした。これらの目標の確実な達成に向け、取組を進めてきた結果、2019年の訪日外国人旅行者数は3,188万人、訪日外国人旅行消費額は4.8兆円とそれぞれ7年連続で過去最高を更新した。
一方、2020年は、新型コロナウイルス感染症の影響により、全方面からの訪日旅行者は大幅に減少した。また、国内においても旅行のキャンセル、予約控えや外出自粛の影響を受け、観光需要は大きく減少し、全国の旅行業、宿泊業はもとより、地域の交通や飲食業、物品販売業など多くの産業に深刻な影響が生じている。
ウィズ・ポストコロナにおける対応を着実に進めるため、政府の今後1年を目途とした行動計画として、「観光ビジョン実現プログラム2020」を令和2年7月に策定した。具体的には、①観光関連産業の雇用の維持と事業の継続、②反転攻勢に転じるための基盤の整備、③国内旅行の需要喚起、④インバウンドの回復、等を盛り込んだ。
さらに「感染拡大防止と観光需要回復のための政策プラン」を2年12月に策定した。具体的には、①感染拡大防止策の徹底とGo To トラベル事業の延長等、②ホテル、旅館、観光街等の再生、③国内外の観光客を惹きつける滞在コンテンツの充実、④観光地等の受入環境整備(多言語化、Wi-Fi 整備等)、⑤国内外の感染状況等を見極めた上でのインバウンドの段階的復活、を盛り込んだ。
現在、我が国の観光は厳しい状況にあるが、自然、食、文化、芸術、風俗習慣、歴史など日本各地の観光資源の魅力が失われたものではなく、国内外の感染症の状況を十分に見極めつつ、国内旅行とインバウンドの両輪により、観光立国を実現できるよう、政府、民間、地域が一体となって着実に実行していく。