
国土交通白書 2021
第4節 交通政策の推進
物流は、我が国における豊かな国民生活や産業競争力、地方創生を支える重要な社会インフラであり、昨今の新型コロナウイルス感染症の流行下においても、国民生活や経済活動を支えるエッセンシャルサービスとして、その機能を維持してきた。
一方で、近年、生産年齢人口の減少、AI・IoT等の技術革新の進展、災害の激甚化、地球環境の持続可能性の確保やSDGsに対する社会的気運の高まり等、物流を巡る社会経済情勢は大きく変化している。物流分野においてはかねてより、その厳しい労働条件環境から担い手の確保が課題となっていたが、トラックドライバーに対する時間外労働の上限規制の適用を2024年度に控え、時間外労働の削減などの労働環境の改善や、共同輸配送の推進や宅配便の再配達の削減などによる生産性向上が急務となっている。
このような状況を踏まえ、国土交通省では、関係者が連携した物流の総合化及び効率化に関する幅広い取組みを支援することを旨として、平成28年に改正された「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(平成17年法律第85号)」(改正物流総合効率化法)に基づき共同輸配送、モーダルシフト、トラック予約受付システム等を導入した倉庫への輸送網の集約等を内容とする総合効率化計画の認定を農林水産省及び経済産業省と連携して進めており、令和3年3月までに255件の計画を認定したところ。また「置き配」等の多様な受取方法の推進等による宅配便の再配達削減や、我が国の高品質なコールドチェーン物流サービス等の国際標準等の普及化の推進などの、物流事業の効率化及び高付加価値化に資する取組みを推進している。
政府においては、こうした取組みを政府全体の取組みとして改めて位置づけ、関係省庁の連携の下で推進していくためのものとして、平成9年以降6次にわたり「総合物流施策大綱」を閣議決定し、対象期間における物流施策の方向性を示してきた。直近では29年7月に「総合物流施策大綱(2017年度~2020年度)」を閣議決定し、当該大綱の下で関連する施策を展開してきたところであり、令和2年度においては、3年度からを計画期間とする新たな総合物流施策大綱の策定に向けて、「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」を開催し、同年12月に検討結果が提言としてとりまとめられた。
今後は、これから閣議決定される新たな総合物流施策大綱に基づき、民間事業者や関係省庁と連携しながら、新たな課題である物流DXの推進や、労働力不足対策の加速と物流構造改革の推進等にしっかりと取り組んでいく。