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国土交通白書 2021

第2節 観光先進国の実現に向けた取組み

■2 観光産業を革新し、国際競争力を高め、我が国の基幹産業に

( 1 )観光関係の規制・制度の適切な運用及び民泊サービスへの対応

 平成30年1月に施行された「通訳案内士法及び旅行業法の一部を改正する法律」に基づき新たに12地域で地域通訳案内士制度が導入(令和3年1月28日現在で38地域にて導入・3,259名が登録)されたほか、通訳案内士の資格を有さない者であっても、「多様な主体による外国語ガイド」として、外国語を用いた有償での通訳案内業務を行うことが可能となったことから、その実態等を把握する調査事業を実施し、活動実態、国内での対応可能範囲、得意とするツアーのジャンル等の状況が判明した。また、旅行サービス手配業の登録制度について、都道府県等とも連携して制度周知を図り、3年1月1日時点で1,725社の登録がなされた。

 また、「住宅宿泊事業法」に基づき、健全な民泊を推進している。住宅宿泊事業の届出住宅数は、令和3年3月9日時点で19,520件となった。健全な民泊サービスの更なる普及に向けて、営業日数を効率的に集約するシステムを構築すること等により、違法民泊対策の実効性を向上させた。

( 2 )産業界ニーズを踏まえた観光経営人材の育成・強化

 観光分野における人材の育成及び確保のため、トップレベル、中核レベル、実務レベル、それぞれのレベルで取組みを行った。

 トップレベルについては、我が国の観光産業を牽引する人材を育成することを目的とし、一橋大学及び京都大学の大学院段階(MBAを含む)に設置した「観光MBA」の取組み及び新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、これからの観光産業で求められる産業を牽引する人物像について、産学官による意見交換の場として協議会をオンライン開催した。

 中核レベルについては、令和元年度に採択した愛媛大学、滋賀大学、北陸先端科学技術大学院大学、令和2年度に採択した山口大学の4大学において地域の観光産業等の経営力向上に向けた講座を開講した。

 実務レベルについては、国内人材向けでは、地域の観光産業の強化・発展を推し進める実務人材を確保・育成するため、令和元年度に採択した3地域(乳頭温泉組合、栃木県観光物産協会、草津温泉観光協会)、2年度に採択した5地域(乳頭温泉組合、一関温泉郷協議会、湯田川温泉観光協会、蓼科観光事業者向け「女性活躍」支援策事業化協議会、黒川温泉観光旅館協同組合)において人材の採用・定着に関する取組みをモデル事業として行った。

 また、外国人材向けでは、平成31年4月に新たな在留資格である「特定技能」が創設され、宿泊業においても国内外において技能試験を実施したほか、令和2年2月に宿泊業職種(接客・衛生管理作業)が技能実習制度「2号移行対象職種」へ追加されるなど、外国人材の受入れを進めている。

( 3 )宿泊施設不足の早急な解消及び多様なニーズに合わせた宿泊施設の提供

 宿泊施設の整備に着目した容積率緩和制度の創設に係る通知(平成28年6月)に基づく取組みを進めるとともに、旅館・ホテル等の宿泊施設におけるインバウンド対応の取組みへの支援を行い、多様なニーズに合わせた宿泊施設の提供を促進した。

( 4 )観光地域づくり法人(DMO)を核とする観光地域づくりの推進

 観光地域のマネジメント及びマーケティングを担う観光地域づくり法人(DMO)注2を核とする観光地域づくりを推進するため、令和3年3月31日時点で295団体を登録するとともに、情報・人材・財政の3つの側面から支援を行った。

( 5 )「観光遺産産業化ファンド」の継続的な展開および次世代の観光立国実現のための財源の展開

 観光庁と包括的連携協定を締結している㈱地域経済活性化支援機構(REVIC)において、令和元年6月に設立した「観光遺産産業化ファンド」により、観光庁では、同機構、関係事業者や関係省庁、自治体と連携して、地域の観光資源の磨き上げ等を図るための取組を行った。

 また、観光先進国の実現に向けた観光基盤の拡充・強化を図る観点から、観光促進のための税として国際観光旅客税が創設された(平成31年1月7日制度開始)。財源の使途に関しては、受益と負担の関係から日本人出国者を含む負担者の納得が得られ、先進的で費用対効果が高く、地方創生をはじめとする我が国が直面する重要な政策課題に合致するものに充てることとしている。

( 6 )コロナ禍の訪日プロモーション

 新型コロナウイルス感染症の影響により、商談会、メディア招請等の国際的な往来を伴う事業の多くが延期や中止を余儀なくされたが、日本政府観光局においては、随時変化する感染状況や日本への渡航制限に関する情報等を的確に発信するとともに、閲覧データの分析等により、閲覧者の属性や関心を踏まえ、ウェブサイトやSNS等による我が国の魅力の効果的な発信を行った。

 また、オンラインの商談会や旅行博等への出展等、発信方法を工夫しつつ「将来の訪日」につながる事業を実施した。

 さらに、地方部への誘客を促進するため、日本政府観光局において、地方自治体・DMO等を対象とした研修会やコンサルティングのほか、全国各地の観光コンテンツ収集やウェブサイト等による地域の情報発信等を実施した。

【関連リンク】

日本政府観光局

URL:https://www.jnto.go.jp/jpn/

( 7 )MICE誘致の促進

 新型コロナウイルス感染症収束後のMICEの安全な再開と国際競争力の更なる強化に向けて、MICE誘致に意欲的な地方都市に対する誘致力の強化に向けた支援や、ウィズコロナおよびポストコロナ時代の国際会議のあり方に関する調査及びMICE施設の感染症対策に関する国際的認証制度についての調査及び4施設における認証取得支援を実施した。また、グローバル企業のビジネス活動を支える会議施設等の整備への支援を実施している。

( 8 )ビザの戦略的緩和

 新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大が収束し、国際的な人の往来が再開する段階で、今後のビザ緩和の実施について検討を行うこととした。

( 9 )訪日教育旅行の活性化

 日本政府観光局が運営する訪日教育旅行のウェブサイトを通じ情報発信を行った。

(10)観光教育の充実

 子どもたちが地域固有の文化、歴史、観光による交流の意義や経済的な効果等を実社会を通じて学ぶ観光教育の充実を図るため、学識経験者等による協議の場を立ち上げ、産学官で観光教育の意義を再確認するとともに、今後の普及施策について検討した。

 また、学校教員を中心としたワークショップを開催し、協議内容について共有を図った。

(11)若者のアウトバウンド活性化

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、大きな影響を受けた若年層を含むアウトバウンドの段階的な回復に向けて、各国・地域における感染症対策や、これまでに海外教育旅行を実施した学校へのアンケート調査や事例収集を行う等、海外教育旅行の再開・回復のために必要な情報の収集及び分析を行った。また日本旅行業協会(JATA)と連携し、将来のグローバル人材の育成を目指すことを目的に、「2020年海外教育旅行オンラインセミナー」を開催した。

 また、若者に旅の意義や素晴らしさを伝える「若旅授業」を新型コロナウイルス感染症の観点からオンラインを導入し、令和2年度は計8回実施した。

  1. 注2 DMO:Destination Management/Marketing Organization