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国土交通白書 2021

第2節 観光先進国の実現に向けた取組み

■3 すべての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境に

( 1 )最先端技術を活用した革新的な出入国審査等の実現

 関係省庁と連携の下、日本人出帰国及び外国人出国手続のための顔認証ゲートを、令和元年度までに導入済みの6空港(羽田、成田、中部、関西、福岡、新千歳空港)に加え、新たに那覇空港に配備した。また、事前にアプリで携帯品を電子申告した場合に迅速な通関を可能とする税関検査場電子申告ゲートについても、令和元年度までに導入済みの6空港(羽田、成田、中部、関西、福岡、新千歳)に加え、新たに那覇空港に配備した。

 さらに、羽田、成田空港では、搭乗関連手続を顔認証により一元化する機器の導入に向け、取り組みを進めた。

図表Ⅱ-3-2-1 免税店数の推移
>図表Ⅱ-3-2-1 免税店数の推移

( 2 )民間のまちづくり活動等による「観光・まち一体再生」の推進

 拠点駅周辺の案内サイン、バリアフリー交通施設、歩行空間等の整備を支援し、わかりやすく使いやすい歩行空間のネットワークの構築を推進している。

( 3 )訪日外国人旅行者の受入環境整備

 観光地や公共交通機関等における多言語対応、無料公衆無線LAN環境の整備や公衆トイレの洋式化等に対する支援を行った。

 また、旅館・ホテル等の宿泊施設におけるインバウンド対応の取組みへの支援を実施した。さらに、飲食店等のバリアフリー化支援を実施した。

 また、インバウンド需要の回復を見据えた免税店の拡大や、令和3年10月の免税販売手続の完全電子化に向けた事業者の対応を更に促進する観点から、必要な情報の周知広報に取り組んだ。加えて、令和3年10月から、免税販売手続を行う自動販売機 (別途国税庁長官が観光庁長官と協議して指定するものに限る。)については人員の配置を不要とする措置が講じられるところ、指定に向けた準備を進めた。さらに「道の駅」について、外国人観光案内所のJNTO認定取得や多言語表示の整備等のインバウンド対応を促進し、地域のインバウンドの受入拠点とする取組みを推進した。

( 4 )急患等にも十分対応できる外国人患者受入体制の充実

 外国人患者を受け入れる医療機関について、令和2年度に1,920(うち都道府県が指定する「外国人患者を受け入れる拠点的な医療機関」は1,450)の医療機関をリスト化し、情報発信を行った。また、引き続き外国人旅行者が医療費の不安なく治療が受けられるように、入国前後の様々な段階において旅行保険への加入を促進した。

( 5 )「地方創生回廊」の完備

 「ジャパン・レールパス」について、訪日外国人旅行者が購入しやすい環境整備のため、令和2年6月より、インターネットを通じたジャパン・レールパス購入及びこれに基づく指定席の予約が可能となった。

 さらに、多様な交通モードが選択可能で利用しやすい環境を創出し、人とモノの流れや地域活性化のさらなる促進のため、バスを中心とした交通モード間の接続(モーダルコネクト)の強化を推進している。平成31年4月には国道15号品川駅西口基盤整備が事業化され、リニア開業時(令和9年)の概成を目標に整備を進めている。今後、官民連携を強化しながら、品川駅及び神戸三宮駅をはじめとする戦略的な集約型公共交通ターミナル「バスタプロジェクト」を全国で展開していく。

 訪日外国人旅行者をはじめ、すべての利用者にわかりやすい道案内を実現するため、整備の進む我が国の高速道路ネットワークにおいて、高速道路に路線番号を付す「ナンバリング」を導入し、道路標識に路線名、路線番号、英語表記を記載するよう基準を改定し、全国の高速道路および一般道の優先区間で令和2年度末時点において約95%の整備が完了した。また、高速道路上で出口を案内する表示とは別の部分に一般道路の行き先地名に関する表示の特例を追加し、経路を把握しやすいよう取り組んでいる。

 高速道路会社等が、レンタカーを利用する訪日外国人旅行者向けに、全国の各エリアを対象とした高速道路の周遊定額パスを実施している。(ただし、新型コロナウイルスの感染拡大等に伴い、令和2年4月8日より新規の申込受付を一時停止(令和3年3月31日現在))

 海事分野においては、旅に係る新サービス創出の促進を図るため、平成28年4月から3年間、「船旅活性化モデル地区」制度を設け観光利用に特化した航路の旅客船事業の制度運用を試験的に弾力化した。この結果を踏まえ、31年4月からは「インバウンド船旅振興制度」を創設し、インバウンド等の観光需要を取り込む環境整備を図っている(令和2年度承認等実績:5件)。

( 6 )地方空港のゲートウェイ機能強化

 各地域による国際線就航を通じた訪日客誘致の促進のため、平成29年度より、国土交通省が認定した「訪日誘客支援空港」等に対して、国際線の新規就航・増便、旅客の受入環境高度化への支援等を実施している。

 日本政府観光局においては、航空路線誘致のための国際商談会への参加準備や、新規就航・増便・復便に向けた共同広告の準備を行った。

 また、民間の知恵と資金を活用して空港の活性化を目指すため、北海道内7空港、広島空港について、空港運営の民間委託に向けた手続き等を進めた。

 さらに、成田空港のC滑走路の整備、福岡空港の滑走路増設事業等、空港発着容量拡大等の取組みを進めた。

 あわせて、富裕層旅客の取り込み等インバウンド振興の観点からもビジネスジェットの重要性が増している。我が国では都市部を中心にビジネスジェットの専用施設・専用動線の供用を開始し、併せて諸手続の緩和を行ってきた。近年は地方空港においても利用環境整備が進んでおり、ビジネスジェット専用施設について令和2年度は那覇空港で整備を完了し、鹿児島空港で整備を実施している。

( 7 )クルーズを安心して楽しめる環境整備

 令和2年度は新型コロナウイルス感染症の流行・拡大に伴い、クルーズ船の運航が休止となるなど厳しい状況が続いた。このため、国土交通省ではクルーズの安全・安心の確保のための検討を行い、同年9月18日に中間とりまとめを公表し、同時に中間とりまとめを踏まえた、国内クルーズにかかるガイドラインが関係業界団体(日本外航客船協会・日本港湾協会)から公表された。国内クルーズの運航や受入は、これらのガイドラインに基づき、船内や旅客ターミナル等での感染予防対策が徹底されるほか、都道府県等の衛生主管部局を含む協議会等における合意を得た上で行われている。また、海上運送法施行規則を改正し、邦船クルーズ事業者に対して感染症対策マニュアル(衛生管理規程)の策定・届出を義務づけた。国際クルーズについては、国内外の感染状況、我が国を含む諸外国の水際対策の動向等を踏まえつつ、引き続き安全対策について検討を進めていくこととしている。

 また、クルーズの再興に向け、船内・旅客ターミナルにおける感染防止対策や、感染拡大防止に寄与する上質かつ多様なツアーメニューの造成等に対する事業について支援を行った。引き続き、ハード・ソフト両面にわたる支援を実施し、クルーズを安心して楽しめる環境整備を推進する。

 さらに、政府広報を使って、「New Style Cruise」と題して、Withコロナ時代のクルーズスタイルに関するオンラインシンポジウムを開催した。

 あわせて、訪日観光のポテンシャルを有している海洋周辺地域において、観光コンテンツの磨き上げや受入環境整備を行う意欲的な事業に対して支援を行うなど、観光の充実・開拓及び魅力向上に向けた取組みを進めた。

図表Ⅱ-3-2ー2 クルーズを安心して楽しめる環境づくりへの取組み
>図表Ⅱ-3-2ー2 クルーズを安心して楽しめる環境づくりへの取組み

【関連リンク】

CRUISE PORT GUIDE OF JAPAN

URL:https://www.mlit.go.jp/kankocho/cruise/jp/

( 8 )公共交通利用環境の革新

 訪日外国人旅行者のニーズが多い、鉄道車両の無料 Wi-Fi について、令和3年秋頃にすべての新幹線車両で導入を完了予定。

 タクシーの複数回の利用分の運賃を予め一括して支払う一括定額運賃、需要の増減に応じ迎車料金を変動させる変動迎車料金を令和2年11月に導入した。

 また、訪日外国人旅行者を含む旅行者が大きな荷物を持ち運ぶ不便を解消するため、空港・駅等で荷物の一時預かりや空港・ホテル等へ荷物を配送する手ぶら観光を推進した。(「手ぶら観光」共通ロゴマーク認定数:令和3年3月末現在539箇所)

 外国人観光旅客利便増進措置については、令和2年3月に同措置を講ずべき区間等として、鉄道239区間・バス248区間・旅客船31区間・旅客船ターミナル3港・エアライン17事業者・空港ビル64空港を指定しており、公共交通事業者等から外国人観光旅客利便増進措置実施計画が提出された。

 さらに、平成31年4月にフェリー・旅客船事業者と経路検索事業者間のデータ共有環境整備に向けて「標準的なフェリー・旅客船航路情報フォーマット」及び「簡易作成ツール」等を策定・公表し、事業者自身による航路情報のデータ整備を支援・推進しているところ、令和2年3月には、フォーマット、ツールを改良し、機能向上を図るとともに、ツール入力支援動画の作成を実施するなどデータ化の促進を図った。

( 9 )東京2020大会に向けたユニバーサルデザインの推進

 平成29年2月に決定した「ユニバーサルデザイン2020行動計画」に基づき、共生社会の実現が東京2020大会のレガシーとなるよう「ユニバーサルデザインの街づくり」と「心のバリアフリー」を推進した。

 これに関連して、令和2年5月に成立した「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律」(令和2年法律第28号)において、ハード対策に加え、移動等円滑化に係る「心のバリアフリー」の観点からの施策の充実などソフト対策を強化することとしている(令和3年4月に全面施行)。

 上記に関連して、「道路空間のユニバーサルデザインを考える懇談会」を立ち上げ、「ユニバーサルデザインの街づくり」と「心のバリアフリー」に向けて取り組みを推進している。

 空港では、旅客ターミナルビル毎に数値目標を設定しており、成田空港及び羽田空港では多機能トイレ又はトイレ機能の分散化、エレベーター増設等を実施した。

 バス・タクシーについては、バリアフリー車両導入促進を図ったほか、東京2020大会関連駅へのエレベーターの増設やホームドアの整備などのバリアフリー化について支援した。

 また、旅館・ホテル等の宿泊施設におけるバリアフリー化への改修の支援を実施するとともに、地域におけるバリアフリー旅行のサポート体制を強化するための調査や実証事業を行った。さらに、バリアフリー対応に取り組みその情報を積極的に発信している宿泊施設、飲食店、観光案内所を対象とした「観光施設における心のバリアフリー認定制度」を令和2年12月に開始。高齢者や障害者等がより安全で快適な旅行をするための環境整備を推進している。

 加えて、全国にもインバウンド効果を波及させるため、全国の標識適正化委員会において標識改善の取組方針や英語表記規定を作成し、道路標識の改善を進めている。

 アクセシブルルートを含む競技会場周辺の道路についても、連続的・面的なユニバーサルデザイン化を推進した。