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国土交通白書 2021

第5節 北海道総合開発の推進

第5節 北海道総合開発の推進
■1 北海道総合開発計画の推進

( 1 )北海道総合開発計画の推進

 我が国は、北海道の優れた資源・特性を活かしてその時々の国の課題の解決に寄与するとともに、地域の活力ある発展を図るため、北海道の積極的な開発を行ってきた。計画期間を平成28年度からおおむね令和7年度までとする第8期の北海道総合開発計画(平成28年3月閣議決定)は、「世界の北海道」を形成すべく、「人が輝く地域社会」、「世界に目を向けた産業」、「強靱で持続可能な国土」を目標として掲げ、諸施策を進めている。

 具体的には、「食料供給基地としての持続的発展」、「『観光先進国』実現をリードする世界水準の観光地の形成」、これら食と観光等を担う北海道の「生産空間」注9を支える取組みを重点的に取り組む事項として、目指す姿や行動の指針となる数値目標を設定し、関係者で共有しながらフォローアップを行い、本計画を踏まえ北海道開発を着実に推進している。

 本計画においては、計画策定からおおむね5年後に計画の総合的な点検(中間点検)を実施することとされている。そのため、大規模災害の激甚化・頻発化、新型コロナウイルス感染症(以下「感染症」という。)の拡大等、計画策定以降の状況変化を踏まえて、2年度において施策の進捗状況等を点検するとともに、現状の課題及び今後の推進方策を整理・検討し、令和3年2月に中間点検報告書を取りまとめた。

図表Ⅱ-4-5-1 第8期北海道総合開発計画中間点検の概要
図表Ⅱ-4-5-1 第8期北海道総合開発計画中間点検の概要

 今後は、中間点検の結果を踏まえて、分散型の国土づくりに向けた生産空間における各種施策、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取組み、防災・減災、国土強靱化の取組み等を一層推進していく。

( 2 )計画の実現を支える施策の推進

 本計画は、本格的な人口減少時代の到来、グローバル化の更なる進展と国際環境の変化、大規模災害等の切迫といった我が国をめぐる諸課題に中長期的な視点で対応するため策定されたものであり、次の目標実現に向けた施策を進めている。

①人が輝く地域社会

 北海道の「生産空間」は、他地域とはスケールの異なる広域分散型社会を形成しており、戦略的産業である「食」と「観光」を担っている。

 一方で、全国に先行した人口減少・高齢化の急速な進展等により、その維持が困難となるおそれがあることから、生産空間から都市部に至るまで人々が住み続けられる地域社会構造の確立を図るとともに、多様な人々を引きつけ、活発な対流を促進することが重要である。

 このため、生産空間の維持・発展に向けたモデル圏域における課題解決及びその取組みの全道展開を進めているほか、定住・交流環境の維持増進に向けて、高規格道路等の広域的な交通ネットワークの整備、「道の駅」や「みなとオアシス」の機能強化等を進めている。あわせて、多様な地域づくり人材の広域的・横断的な交流・連携を支援する「北海道価値創造パートナーシップ活動」の充実等を進めている。さらに、感染症の拡大に伴い地方移住、二地域居住、ワーケーション等の機運が高まっていることを踏まえ、これらの促進にも資する交通アクセスの強化を進めている。

②世界に目を向けた産業

 北海道は、農林水産業、食・観光関連産業などの移輸出型産業に比較優位があり、感染症拡大による影響も踏まえながら、これらを戦略的に育成することが重要である。

 このため、スマート農業の推進等に資する農地の大区画化や排水改良、路網の整備、漁港の高度衛生管理対策等による農林水産業の持続的発展や食料供給力の向上を図るとともに、高規格道路、港湾における農水産物輸出促進基盤の整備等による農水産物の輸出促進等を進めている。

 観光においては、国内旅行とインバウンドの両輪による世界水準の観光地の形成に向けて、新千歳空港等における空港機能の強化、クルーズ船の受入環境整備、高規格道路等の整備によるアクセス強化等を進めている。また、ドライブ観光やサイクルツーリズム、景観・地域・観光空間づくりに取り組むシーニックバイウェイ北海道、河川空間やインフラを活用したツーリズム、国際会議等(MICE)の北海道開催等に取り組んでいる。

③強靱で持続可能な国土

 美しく雄大な自然環境を有し、再生可能エネルギー源が豊富に賦存する北海道は、持続可能な地域社会の形成に向け、先導的な役割を果たすことが期待されている。また、安全・安心の確保は経済社会活動の基盤であり、災害発生時の被害を最小化するとともに、我が国全体の強靱化に貢献することが重要である。

 このため、河川環境の保全や湿原等の自然再生、再生可能エネルギー活用等の温室効果ガス排出削減対策、「北海道水素地域づくりプラットフォーム」による水素社会形成に向けた普及啓発を進めている。また、平成28年8月の一連の台風や平成30年7月豪雨による被害と気候変動による水災害リスクの増大等を踏まえた治水対策、平成30年北海道胆振東部地震等からの復旧・復興、切迫性が指摘されている日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震・津波等大規模自然災害への対策や冬期災害に備えた対策等を始めとするハード・ソフトを総動員した防災・減災対策、社会資本の老朽化等に対応するための戦略的な維持管理・更新等を進めている。

  1. 注9  ここでは、主として農業・漁業に係る生産の場(特に市街地ではない領域)を指す。生産空間は、生産のみならず、観光その他の多面的・公益的機能を提供している。