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国土交通白書 2021

第1節 ユニバーサル社会の実現

第7章 安全・安心社会の構築
第1節 ユニバーサル社会の実現
■1 ユニバーサルデザインの考え方を踏まえたバリアフリー化の実現

 「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方を踏まえた「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)」に基づき、施設等(旅客施設、車両等、道路、路外駐車場、都市公園、建築物等)の新設等の際の「移動等円滑化基準」への適合義務、既存の施設等に対する適合努力義務を定めている。こうした中、令和2年5月に、東京2020大会のレガシーとしての共生社会の実現に向け、ハード対策に加え、移動等円滑化にかかる「心のバリアフリー」の観点からの施策の充実などソフト対策を強化する「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律」が成立し、3年4月の全面施行に向けて関係政省令を公布した。

 また、バリアフリー法に基づく「移動等円滑化の促進に関する基本方針」に係るバリアフリー整備目標については、2年度末までとなっていることから、障害当事者団体や有識者の参画する検討会において議論を重ね、ハード・ソフト両面でのバリアフリー化をより一層推進する観点から、各施設等について地方部を含めたバリアフリー化の一層の推進、聴覚障害及び知的・精神・発達障害に係るバリアフリーの進捗状況の見える化や、「心のバリアフリー」の推進等を図るとともに、新型コロナウイルス感染症による影響への対応も考慮して、令和2年11月に最終とりまとめを公表し、3年度から5年間を目標期間とする新しいバリアフリー整備目標等を定めた基本方針を改正した。

 加えて、「交通政策基本法」に基づく「交通政策基本計画」においても、バリアフリーをより一層身近なものにすることを目標の一つとして掲げており、これを踏まえながらバリアフリー化の更なる推進を図っている。

 また、市町村が作成する移動等円滑化促進方針及び基本構想に基づき、移動等円滑化促進地区及び重点整備地区において面的かつ一体的なバリアフリー化を推進するとともに、バリアフリー化の促進に関する国民の理解を深め、協力を求める「心のバリアフリー」を推進するため、高齢者、障害者等の介助体験や疑似体験を行う「バリアフリー教室」等を開催しているほか、バリアフリー施策のスパイラルアップ(段階的・継続的な発展)を図っている。

 さらに東京2020大会を契機とした共生社会の実現に向け、全国において更にバリアフリー化を推進するための取組みの強化を行っている。

図表Ⅱ-7-1-1 公共交通機関のバリアフリー化の現状
図表Ⅱ-7-1-1 公共交通機関のバリアフリー化の現状

( 1 )公共交通機関のバリアフリー化

 「バリアフリー法」に基づき公共交通事業者等に対して、旅客施設の新設・大規模な改良及び車両等の新規導入の際に移動等円滑化基準に適合させることを義務付け、既存施設については同基準への適合努力義務が課されているとともに、その職員に対し、バリアフリー化を図るために必要な教育訓練を行うよう努力義務を定めている。また、平成30年のバリアフリー法改正により、公共交通事業者等によるハード・ソフト一体的な取組みを推進するため、一定の要件を満たす公共交通事業者等が、施設整備、旅客支援、情報提供、教育訓練、推進体制等を盛り込んだハード・ソフト計画を毎年度作成し、国土交通大臣に提出するとともに、その取組状況の報告・公表を行うよう義務付ける制度を新たに設ける等、既存の設備を含む更なるハード対策、旅客支援等のソフト対策を一体的に推進している。さらに、旅客船、鉄道駅等旅客ターミナルのバリアフリー化やノンステップバス、リフト付きバス、福祉タクシーの導入等に対する支援措置を実施している。

( 2 )居住・生活環境のバリアフリー化

①住宅・建築物のバリアフリー化

 高齢者、障害者等が地域の中で安全・安心で快適な住生活を営むことができるよう、一定のバリアフリー性を満たした住宅を取得する際の(独)住宅金融支援機構のフラット35Sにおける融資金利の引き下げ、バリアフリー改修工事に対する支援等によって住宅のバリアフリー化を促進しているほか、公営住宅や建替え事業によって新たに供給する都市再生機構賃貸住宅については、バリアフリー化を標準仕様とするとともに、民間事業者等によるサービス付き高齢者向け住宅の整備に対する支援等を実施している。

 また、不特定多数の者や主に高齢者、障害者等が利用する建築物で、一定規模以上のものを建築する場合には、「バリアフリー法」に基づくバリアフリー化を義務付けるとともに、多数の者が利用する建築物について、所定の基準に適合した認定特定建築物に対する容積率の特例等の措置を行っている。官庁施設については、不特定かつ多数の者が利用する施設について「バリアフリー法」に基づく建築物移動等円滑化誘導基準に規定された整備水準を確保するなど、高齢者、障害者等を含むすべての人が安全に、安心して、円滑かつ快適に利用できる施設を目指した整備を推進している。その際、高齢者、障害者等の施設利用者の意見を施設整備に反映するなどの取組みを行っている。

図表Ⅱ-7-1-2 「バリアフリー法」に基づく特定建築物の建築等の計画の認定実績
図表Ⅱ-7-1-2 「バリアフリー法」に基づく特定建築物の建築等の計画の認定実績

②歩行空間のバリアフリー化

 駅、官公庁施設、病院等を結ぶ道路や駅前広場等において、高齢者・障害者をはじめとする誰もが安心して通行できるよう、幅の広い歩道の整備や歩道の段差・傾斜・勾配の改善、無電柱化、視覚障害者誘導用ブロックの整備等による歩行空間のユニバーサルデザイン化を推進している。

③都市公園等におけるバリアフリー化

 都市公園の整備に当たっては、安全で安心した利用のため「バリアフリー法」に基づく基準や支援制度により、出入口や園路の段差解消、高齢者や障害者等が利用可能なトイレの設置等を進めている。