
国土交通白書 2021
第4節 交通分野における安全対策の強化
「運輸安全マネジメント制度」は、運輸事業者に安全統括管理者の選任と安全管理規程の作成を義務付け、経営トップのリーダーシップの下、会社全体が一体となった安全管理体制を構築することを促し、国土交通省が運輸安全マネジメント評価(運輸事業者の取組状況を確認し、必要な助言等を行うもの)を行う制度であり、JR福知山線列車脱線事故等の教訓を基に、平成18年10月に導入されたものである。

令和2年度においては、運輸安全マネジメント評価を延べ457者(鉄道24者、自動車365者、海運50者、航空18者)に対して実施した。
また、同制度への理解を深めるため、国が運輸事業者を対象に実施する運輸安全マネジメントセミナーについては、令和2年度において1,534人が受講した。また、中小事業者に対する同制度の一層の普及・啓発等を図るため、平成25年7月に創設した認定セミナー制度(民間機関等が実施する運輸安全マネジメントセミナーを国土交通省が認定する制度)に関しては、令和2年度において4,582人がセミナーを受講した。
運輸安全マネジメント制度においては、自動車輸送分野における取組みの一層の展開の必要性、未だ取組みの途上にある事業者への対応と取組みの深化を促進する必要性、効果的な評価実施のための国の体制強化の必要性等の課題が存在している。このため平成29年7月に運輸審議会の答申を踏まえて、令和3年度までにすべての貸切バス事業者の安全管理体制を確認することとしており、令和2年度には未実施事業者715者のうち327者の評価を行った。また、事業者への効果的な評価実施のため、小規模海運事業者に対して新たな評価実施要領の制定を行った。さらに取組みの深化を図るため、運輸事業者の安全統括管理者や安全管理部門同士が交流を深めるための安統管フォーラム(安全統括管理者会議)を平成29年10月に創設し、「横の連携」の場づくりを図ることとしている。加えて、運輸事業者における安全文化の構築・定着、継続的な見直し・改善に向けた取組みを支援することを目的とした国土交通大臣表彰を平成29年5月に創設し、運輸安全マネジメントに関する取組みに優れた事業者に対して毎年表彰を行っている。

令和2年度においては昨今の自然災害の頻発化・激甚化を受け、運輸事業者の防災や業務継続の対応能力の向上を図ることが急務となっていることから、運輸安全マネジメント制度の中に「自然災害対応」を組み込んで運輸事業者の取組を促進することとし、令和2年7月に運輸事業者が防災マネジメントに取り組む際のガイダンスとして、「運輸防災マネジメント指針」を策定・公表した。国土交通省は、同月に大臣プロジェクトとして「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト」をとりまとめており、「運輸防災マネジメント指針」は、この一環として策定されたものである。
これに伴い、令和2年10月、「自然災害時の事業継続を考える」をテーマに15回目の開催となる「運輸事業の安全に関するシンポジウム」を東京で開催し、運輸事業者の安全意識・防災意識の更なる向上を図った。
これらの取組みを行うなど、運輸安全マネジメント制度の取組みの強化・拡充を図っている。