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国土交通白書 2021

第5節 危機管理・安全保障対策

■5 重篤な感染症及び影響の大きい家畜伝染病対策

( 1 )重篤な感染症対策

 重篤な感染症対策については、厚生労働省や内閣官房をはじめとする関係省庁と緊密に連携し対応している。

①新型インフルエンザ等対策

 「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(特措法)においては、感染拡大を可能な限り抑制し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済に及ぼす影響を最小となるようにするため、国土交通省を含む指定行政機関は自ら新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施し、並びに地方公共団体及び指定公共機関が実施する対策を的確かつ迅速に支援することにより、国全体として万全の態勢を整備する責務を有するとされている。

 国土交通省では、国土交通省新型インフルエンザ等対策行動計画において、特措法の各種措置の運用等について、(ア)運送事業者である指定(地方)公共機関の役割等、(イ)新型インフルエンザ等緊急事態宣言時の対応等を規定している。

 なお、特措法については、新型コロナウイルス感染症もその対象としており、令和3年2月13日に新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を創設する等の改正が行われた。

②新型コロナウイルス感染症対策

 令和元年12月に中国武漢市で感染が広がった新型コロナウイルス感染症について、我が国でも2年1月15日に最初の感染者が確認され、政府は2年1月30日に新型コロナウイルス感染症対策本部を設置(以下「政府対策本部」という。)した。同年1月30日の政府対策本部の設置を受け、同日国土交通省に「国土交通省新型コロナウイルス感染症対策本部」(以下「省対策本部」という。)を設置、現在まで25回の省対策本部を開催し、国内における感染防止対策、水際対策等に省を挙げて取り組んだ。

(ア)国内における感染防止対策

 国土交通省では、新型コロナウイルス感染症の国内発生以降、空港、鉄道駅等におけるマスク着用の徹底、手洗い励行、消毒液の設置、複数人が接する設備・施設の消毒等の衛生対策の徹底、職員同士の距離確保、事業場の換気励行、発熱等の症状が見られる従業員の出勤自粛等の実施及び職員間のテレワーク・時差出勤の実施を事業者に対して要請している。また、令和2年5月には、事業者及び関係団体による自主体な感染予防対策を進めるため、感染拡大予防ガイドラインを策定することとされ、国土交通省所管の分野においても、令和3年3月末時点で62の団体が49のガイドラインを策定・公表している。国土交通省では、感染予防対策の徹底が図られるよう、関係団体に対し、ガイドラインを個々の事業者にしっかり周知し、感染予防に万全を期すよう要請している。加えて、公共交通機関においては、利用者に対し、

 (1)マスクを着用や会話は控えめにすること

 (2)車内換気へのご理解・ご協力

 (3)テレワーク・時差出勤へのご協力について、鉄道駅や車内等におけるアナウンスや国土交通省と業界団体が共同作成したポスターの掲示

等を通じ、呼びかけを行っている。

 こうした取組に加え、緊急事態宣言時には、対象都道府県等における外出・移動の自粛の観点から、空港や鉄道駅、高速道路のSA・PA等における移動自粛の呼びかけ、主要空港へのサーモグラフィーの設置及び高速道路周遊パスの新規申込受付停止等の対策を講じている。

(イ)水際対策

 感染が世界的に拡大している新型コロナウイルス感染症については、国外からのウイルスの流入防止に万全を期すため、国土交通省として、外国人等の入国拒否、検疫強化等の水際対策の実施に当たって、航空機の到着空港の限定の要請、港湾の利用調整や水際・防災対策連絡会議等を活用した対応力の強化、税関、出入国管理、検疫所などの関係府省庁や所管業界と連携等により対策を講じてきた。例えば、航空会社や空港ビル会社において、感染拡大予防ガイドラインに沿った感染拡大防止対策を講じるとともに、機内の空気が3分ですべて入れ替わる仕組みになっていることの周知などを行っている。

 また、入国時の検査については、成田・羽田・関西・中部・福岡・新千歳の6空港で令和2年11月までに1日約2万人超の検査能力を確保しているが、国際的な人の往来の再開は、感染再拡大の防止と両立する必要があり、2年12月には、英国等での変異型ウイルスの発生を受け、一時的に、これまでに開始した往来再開の一部停止、検疫の強化、英国からの航空便の搭乗人数の抑制等を行うなど、各国における感染状況を見極め、国民の健康と命を守り抜くことを最優先に、政府全体として機動的に水際対策措置を講じている。加えて、入国後の待機場所への移動に関し、鉄道については利用者及び車両の限定や感染が確認された場合の追跡情報の管理等の措置をとることにより、列車を利用した交通サービスの提供を行っているほか、バスについては本人確認の徹底や座席指定などの感染防止対策を講じた上で、空港から待機場所となるホテルまで入国者専用の貸切バスを運行するなど、入国者の利便性向上に努めている。

③エボラ出血熱感染症対策

 アフリカのコンゴ民主共和国において、エボラ出血熱の感染地域が拡大したことを受け、令和元年7月18日に世界保健機構(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態宣言(PHEIC)」を宣言した。国土交通省では、空港、港湾施設における検疫実施の円滑化について関係事業者に対する協力要請、エボラ出血熱に関する注意喚起を旅行者に対して行うよう、旅行業関係協会に対し指示するなど、関係省庁と緊密に連携して必要な対応を講じている。

( 2 )影響の大きい家畜伝染病対策

 影響の大きい家畜伝染病対策については、平成30年9月、岐阜県の養豚場において、我が国では、4年以来26年ぶりとなる豚熱の発生が確認され、その後、岐阜県と愛知県を始め12県で63例の発生が確認されている。また、令和2年11月、香川県の養鶏場において、我が国では平成30年以来2年ぶりとなる鳥インフルエンザの発生が確認され、その後18県において、令和3年3月31日現在、国内で52例の鳥インフルエンザの陽性事案の発生が確認されている。

 国土交通省では、県等関係自治体が実施する防疫措置に必要となる資機材の提供、同自治体が行う防疫措置についての関係事業者に対する協力要請、人には感染しないこと等の正確な情報提供を旅行者に対して行うよう、旅行業関係協会に対する指示をするなど、更なる感染拡大の防止のため、関係省庁と緊密に連携して必要な対応を講じている。