国土交通白書 2021
第1節 地球温暖化対策の推進
コラム 洋上風力発電を支える港湾
風車による発電を海の上で行うこと、これが洋上風力発電です。陸上風力発電に比べて輸送・設置における制約が少ないことから設備の大型化が可能であり、効率的に大量のクリーンエネルギーを発電できるという特徴があります。洋上風力発電は、欧州を中心に導入が拡大しており、例えば英国では2,000本を超える風車がすでに稼働中です。
四方を海に囲まれた我が国においても、洋上風力は持続可能なエネルギー源として有望視されており、2050年カーボンニュートラル実現への切り札ともいわれています。国土交通省及び経済産業省が昨年12月に策定した「洋上風力産業ビジョン(第1次)」においても、2030年までに1,000万kW、2040年までに3,000万kW~4,500万kWの案件形成を掲げるなどの大きな目標を掲げています。これは大型火力発電所30基で発電できる量を超える量の発電施設を新たに導入することと同等の目標です。
さて、この洋上風力発電は、風車大型化が日々進捗しており、現在の8MWクラスではブレードの長さが80m程度(ジャンボジェット機の全長と同程度)、最大高さは約190mにも及びます。また、ナセルや支柱となるタワーは1基あたり約400トン以上にもなります。そのため、洋上風力発電の導入促進には、洋上風力発電設備の設置や維持管理のため、一定の耐荷重を備える岸壁や長大な資機材を取り扱うことが可能な規模の背後地といった機能を備えた港湾が必要不可欠です。また、洋上風力発電は事業期間が20~30年近くの長期間に及ぶことから、継続的に港湾施設の利用が確保できるかといった点が洋上風力発電事業者にとって重要です。そのため、これらの課題を解決するため、令和2年2月に施行された「港湾法の一部を改正する法律」により、洋上風力発電設備の設置や維持管理において、風車のブレードや発電機が収納されたナセルなどの資機材の輸入、保管、搬出入、組み立てに利用するための海洋再生可能エネルギー発電設備等拠点港湾(基地港湾)制度を創設しました。
令和2年9月には秋田港、能代港、鹿島港、北九州港の4港について、全国で初の基地港湾の指定を行い、既に地耐力強化などの着実に事業展開を図っているところです。総事業費約1,000億円の我が国初の大規模洋上風力発電のプロジェクトが能代港内及び秋田港内で進捗中であり、令和2年度に完成した基地港湾(秋田港)の施設を活用し、令和3年度より風車の洋上建設工事を開始し、4年度より運転開始予定となっております。