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国土交通白書 2021

第1節 地球温暖化対策の推進

■3 再生可能エネルギー等の利活用の推進

 平成30年7月に閣議決定された「エネルギー基本計画」に基づき、再生可能エネルギーの導入を最大限加速していくこととされていることを踏まえ、国土交通省では、洋上風力、空港施設等の広大なインフラ空間、河川流水、安定かつ豊富な下水道バイオマス等といった再生可能エネルギーのポテンシャルを活用した再生エネルギーの導入を推進している。

( 1 )海洋再生可能エネルギー利用の推進

 洋上風力発電の導入に関し、港湾区域内においては、平成28年度の港湾法改正により、また、一般海域においても31年4月に施行された「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(再エネ海域利用法)により、長期にわたる占用を実現するための枠組みが法制化された。このうち一般海域においては、既に「秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖」「秋田県由利本荘市沖(北側)」「秋田県由利本荘市沖(南側)」「千葉県銚子市沖」「長崎県五島市沖」の4ケ所(5区域)を促進区域として指定しており、全ての区域について公募手続きを開始している。また、令和2年7月に新たに4区域を有望な区域として整理するなど、今後、洋上風力発電の導入が全国にて見込まれている。

 さらに、同年2月に施行された改正港湾法により、洋上風力発電設備の設置及び維持管理に不可欠な港湾として、国が基地港湾を指定し、発電事業者に長期・安定的に埠頭を貸し付ける制度を創設した。同法に基づき同年9月には、能代港、秋田港、鹿島港、北九州港の4港を基地港湾として指定し、既に地耐力強化などの必要な整備に着手し、このうち秋田港については令和3年4月に発電事業者の貸し付けを開始している。

 加えて、「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」を経済産業省と合同で設立し、第1回を同年7月に、第2回を同年12月に開催したところ。第2回において「洋上風力産業ビジョン(第1次)」を策定し、2030年までに1,000万kW、2040年までに3,000万kW~4,500万kWの案件形成を掲げるなどの目標を掲げている。

 また、浮体式洋上風力発電施設の商用化に向けて同施設のコスト低減が喫緊の課題となっている。このため、平成30年度より安全性を確保しつつ浮体構造や設置方法の簡素化等を実現するための設計・安全評価手法を検討しているところ、令和2年度からは検査の効率化を実現するための手法を検討している。

図表Ⅱ-8-1-5 洋上風力発電の導入促進に向けた取組(基地港湾・促進区域等の状況)
図表Ⅱ-8-1-5 洋上風力発電の導入促進に向けた取組(基地港湾・促進区域等の状況)

( 2 )小水力発電の推進

 河川等における再生可能エネルギーの導入促進に向けた取組みとして、小水力発電の導入を推進している。具体的には、登録制による従属発電の導入促進、現場窓口によるプロジェクト形成支援、砂防堰堤における小水力発電の検討についての情報提供等の技術的支援および小水力発電設備の導入支援を行っているほか、直轄管理ダム等においてダム管理用水力発電設備の積極的な導入による未利用エネルギーの徹底的な活用を図っている。

( 3 )下水道バイオマス等の利用の推進

 国土交通省では、下水汚泥のエネルギー利用、下水熱の利用等を推進している。平成27年5月には、「下水道法」が改正され、民間事業者による下水道暗渠への熱交換器設置が可能になったほか、下水道管理者が下水汚泥をエネルギー又は肥料として再生利用することが努力義務化された。固形燃料化やバイオガス利用等による下水汚泥のエネルギー利用、再生可能エネルギー熱である下水熱の利用について、PPP/PFI等により推進している。

( 4 )インフラ空間を活用した太陽光発電の推進

 東日本大震災を契機とするエネルギー需給の変化を踏まえ、下水処理場、港湾・空港施設における広大なスペースの有効活用に加え、官庁施設等の公共インフラ空間における公的主体による太陽光発電設備の設置や導入のほか、道路・都市公園においては、民間事業者等が設置できるよう措置している。

( 5 )水素社会実現に向けた取組みの推進

 家庭用燃料電池(平成21年市場投入)や燃料電池自動車(26年市場投入)など、今後の水素エネルギー需要の拡大が見込まれる中、水素の製造、貯蔵・輸送、利用という観点から、水素をエネルギーとして利活用する社会“水素社会”の実現に向けた環境を整備する。また、29年12月に「水素基本戦略」が再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議決定されており、国土交通省としても関係省庁と連携しつつ取組みを進めていく。

①燃料電池自動車の普及促進

 燃料電池自動車の世界最速普及を達成すべく、また、比較的安定した水素需要が見込まれる燃料電池バス等を普及させることが水素供給インフラの整備においても特に重要であるとの認識の下、民間事業者等による燃料電池自動車の導入事業について支援していく。令和2年末までに、燃料電池自動車の保有台数は4,386台となった。

②水素燃料電池船の実用化に向けた取組み

 国交省と環境省の連携により、船舶における水素利用における各種技術的な課題・対応策の検討や経済性の試算などの取組みを進め、船舶における水素利用拡大に向けたロードマップを策定した。

③液化水素の海上輸送システムの確立

 平成27年度より、川崎重工業(株)等が、豪州の未利用エネルギーである褐炭を用いて水素を製造し、我が国に輸送を行う液化水素サプライチェーンの構築事業(経済産業省「未利用エネルギー由来水素サプライチェーン構築実証事業」(国土交通省連携事業))を実施している。

④下水汚泥由来の水素製造・利活用の推進

 下水汚泥は、量・質の両面で安定しており、下水処理場に集約される。下水処理場が都市部に近接している等の特徴から、効率的かつ安定的な水素供給の実現の可能性が期待されている。そこで、再生可能エネルギーである下水汚泥から水素を製造・利活用するため、下水道施設での水素製造技術の開発・実証等を推進している。