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国土交通白書 2021

第1節 インフラシステム海外展開の促進

第9章 戦略的国際展開と国際貢献の強化
第1節 インフラシステム海外展開の促進
■1 政府全体の方向性

 新興国を中心とした世界の膨大なインフラ需要を積極的に取り込むことにより、我が国の経済成長につなげていくため、政府は平成25年3月に国土交通大臣を含む関係閣僚を構成員とする「経協インフラ戦略会議」を設置し、同年5月の同会議において「インフラシステム輸出戦略」を策定するとともに、22年時点で約10兆円であった我が国企業によるインフラシステムの受注を令和2年に約30兆円とすることを目標とし、毎年フォローアップと改訂を重ねながら、政府全体で「質の高いインフラシステム」の海外展開に取り組んできた。

 この結果、我が国企業のインフラシステム受注額は、平成30年には約25兆円へと増加しており、そのうち国土交通関係分野については、交通分野で約0.5兆円から約2.2兆円、基盤整備分野で約1.0兆円から約2.8兆円と、22年と比較して大きな伸びを見せており、我が国の技術・ノウハウによって培われた質の高いインフラシステム海外展開の取組は、着実に成果を上げてきている。

 その一方で、中国、韓国、新興国の企業の台頭等による競争環境は激化している。また、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大は未だ収束に至っていないが、これを契機にデジタル変革が加速化しており、これに伴うインフラニーズの変容も想定される。加えて、気候変動対策など「持続可能な開発目標(SDGs)」達成や、国際社会の安定と繁栄の基盤として我が国が提唱している「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現が国際的な関心事となる中、インフラシステム海外展開においても、これらへの貢献が求められるようになってきている。

 このような状況を踏まえ、令和2年12月に、3年以降の政府のインフラシステム海外展開の方向性を示す「インフラシステム海外展開戦略 2025」が経協インフラ戦略会議において新たに策定された。「インフラシステム海外展開戦略 2025」は、インフラシステム海外展開の目的として、①カーボンニュートラル、デジタル変革への対応を通じた経済成長の実現、②展開国の社会課題の解決・SDGs達成への貢献、③「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現、の3本の柱立てとした上で、7年に34兆円のインフラシステムの受注を目指すこととしている。