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国土交通白書 2021

第1節 インフラシステム海外展開の促進

■2 国土交通省における取組み

 国土交通省では、上記1.の通り、政府を挙げて取り組んでいる質の高いインフラの海外展開について、国土交通分野の関係者と情報・戦略を共有し、官民一体となった取組みを進めるため、「国土交通省インフラシステム海外展開行動計画」を策定し、毎年改定してきた。令和2年7月の改定による「行動計画2020」では、それまでの取組を分析して明らかになった課題を抽出し、国内外の競争環境から導かれる課題と合わせて検討し、その結果を反映した形で、以下の(1)~(8)を基本的な方針として精力的に推進しているところである。

( 1 )「川上」からの継続的関与の強化

 我が国企業が確実に案件を獲得するために、案件が成立するか不明な「川上」の段階から、相手国のインフラニーズを的確に把握しつつ、相手国に働きかけ、我が国企業が参入しやすい環境整備作りを行っていく必要がある。このため、相手国の国土計画・マスタープラン等の上位計画に係る調査事業への協力、トップセールスや二国間枠組みによる政府間対話等、GtoGによる情報発信等をテレビ会議などのオンラインも活用し取り組んでいる。

( 2 )PPP案件への対応力の強化

 世界の膨大なインフラ需要を公共投資だけで賄うことは困難であり、新興国の中には対外債務増加に消極的な国もあることから、民間資金を活用する官民連携(PPP:Public-Private Partnership)への期待が高まっている。しかしながら、PPP案件を円滑に進めるための法制度が未整備であったり、相手国政府に官民の適正なリスク分担に対する理解が不十分な場合もあることから、相手国が置かれている状況を十分に踏まえ、政府としても相手国政府に環境整備を働きかけている。

 また、交通・都市開発分野のプロジェクトは、初期投資が大きく資金回収までに長い期間を要することに加えて、政治リスク、需要リスク等の様々なリスクが存在するため、民間だけでは参入が困難なケースも見られる。このようなリスクを軽減し、出資や人材派遣等により事業参画を行う、ハンズオンのインフラファンドとして設立されたのが、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)である。JOINの業務については、令和元年度に行った株式会社海外交通・都市開発事業支援機構法施行5年後の検証作業で交通事業・都市開発事業を支援する事業の拡充などの方向性が示されたところであり、JOINの支援機能の更なる強化を図ることで、今後もJOINの活用による我が国企業のPPP案件への参入促進を図っていく。

( 3 )我が国の強みを活かした案件形成

 我が国の「質の高いインフラシステム」は、①使いやすく長寿命であり、初期投資から維持管理まで含めたライフサイクルコストが低廉、②技術移転、人材育成・企業育成等相手国発展のための基盤づくりを合わせて実施、③工期等契約事項の確実な履行、及び④環境や防災、安全面にも配慮し、経験に裏付けられた技術をトータルに導入等を特長として有しており、これらの強みを活かした案件形成を進める。他方、競合国企業は、我が国企業と比して企業規模に圧倒的な差があり、また、技術力を急速に向上させていることを踏まえ、我が国企業が比較優位を持つ技術は何かを不断に検証していく。その際、デジタル、AIやIoT、ビッグデータといった第4次産業革命の新技術を活用したインフラも検証の対象とし、積極的に案件形成を図っていくこととする。

( 4 )我が国コンサルタントによる調査等の質の向上

 円滑な案件形成を進めるために、我が国コンサルタントによる調査、詳細設計等の成果の質のさらなる向上を図る必要がある。このため、事業調査の早期段階での我が国企業の知見の聴取、我が国コンサルタントの業務実施環境の整備等に取り組んでいく。

( 5 )我が国企業の競争力の強化

 競合国企業は、我が国企業と比べて、海外展開に関し事業の規模と実績において大きく上回っており、単純な価格競争では、我が国企業は不利な状況にある。国内を主な市場としてきた業界では、海外展開することを想定した供給能力を備えていない場合もあり、価格面及び提供する商品の質の柔軟性を含めた供給能力面において、我が国企業の競争力を強化していく必要がある。

 そのため、現地ローカル企業との連携の促進、コストダウンの一助となる海外での設計・製造拠点の設置や現地職員の活用並びにM&Aによる現地・海外企業の取得といった取組を支援している。また、(株)国際協力銀行(JBIC)、JOIN等の公的ファイナンスを活用し、魅力あるファイナンススキームの提案に努めることにより、相手国の財政負担の軽減にもつなげていく。

( 6 )我が国企業の海外展開に係る人材の確保と環境の整備

 我が国企業が海外案件に従事する際は、語学能力に加え、相手国の情勢、商習慣や海外特有リスクの把握のほか、総合的なプロジェクトマネジメント能力を有する人材が必要であるが、こうした人材が不足しているのが現実である。

 そこで、我が国企業における国内外の人材流動化を促進する観点から、海外工事・業務に実績があり、今後、国内外での活躍が期待される技術者を表彰する制度を構築したほか、政策研究大学院大学が産学官連携の下に行っている「海外インフラ展開人材育成プログラム」の支援や中堅・中小建設業海外展開推進協議会(JASMOC)を通じた中堅・中小建設企業の海外展開を支援している。

 また、我が国は、インフラシステムに関する規格等も我が国独自のものが築き上げられているが、他国規格への適合や同等性の証明を求められた場合、それが我が国企業にとって参入障壁となり、競争力の低下につながるケースがある。このため、国際標準の議論に積極的に参加し、安全面、環境面及び経済面において優れた我が国の規格等の国際標準化を推進していく。

( 7 )案件受注後の継続的なフォローアップ

 海外案件においては、受注後に施工に必要な許認可が円滑に行われない、相手国からの金銭の支払いが遅延するといったトラブルが発生する。これが潜在的なリスクと見込まれ事業価格の高騰を招いている。解決を働きかける相手方が、相手国政府や自治体、公的機関となることも多く、我が国企業の独力での解決は困難を伴いがちである。

 このため、相談窓口である「海外建設・ホットライン」を活用し、関係省庁やJICA等と連携して対応策を検討し、必要に応じたトップクレーム等を速やかに実施し、相手国に対する働きかけを行っている。このほか、JOINが支援を行っている事業においては、JOINのハンズオン機能の一環として相手国政府との交渉等を行っている。

( 8 )新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえた対応

 昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界各地で個別プロジェクトの工事の中断や内容の見直し等の多大な影響がでている。このため、我が国企業等から情報収集を随時行い、関係府省・機関と連携して我が国企業が安心して事業を実施できるよう支援していく。さらに、収束後は公衆衛生の意識の高まりや、デジタル化の急速な進展等の価値観の変容による、新たなニーズを踏まえたインフラシステムの海外展開を積極的に行っていく。

( 9 )各国・地域における取組み

 上記の取組み以外にも、各地域・国との間でインフラシステム海外展開を促進する対話、協力等に取り組んでいる。令和2年度の取組みは下記のとおりである。

①ASEAN地域

 巨大な単一市場の実現に向け平成27年末に発足したASEAN経済共同体(AEC)においては、地域の連結性強化等による経済発展が重視されており、今後ヒト、モノ等の流れがより活発になってくることが予想される。また、ASEANはアジア地域においても最も我が国建設企業が多く進出しており、堅調な海外売上高を維持していることから、引き続き我が国企業の重要な市場の一つである。

 こうした中、ASEAN諸国から依然として多くの制度整備支援要望が寄せられていることを踏まえ、昨年度に引き続き、令和3年1月、土地・建設関連制度の整備普及を担うことができる人材育成促進を目的に、関連制度の講義等をカリキュラム化した第4回目の「建設産業政策プログラム」をオンラインにて実施しASEAN諸国等9箇国から9名の行政官が参加した。

(ア)インドネシア

 令和2年7月、運輸省との間で、本邦民間企業を交えたオンラインセミナーを開催し、鉄道、港湾等の分野について両国間で引き続き緊密な協力・連携を図っていくことを確認した。

 同月、海上保安庁とインドネシア海上保安機構(BAKAMLA)による日・インドネシア海上保安機関長官級会合をオンラインで開催した。同月及び3年1月、BAKAMLAに対して海上保安庁モバイルコーポレーションチーム(MCT)によるオンライン研修を実施した。

 令和2年10月の日・インドネシア首脳会談において、両首脳は協力を進展させることについて一致した。

 同年11月、日ASEANスマートシティ・ネットワーク官民協議会の取組として、インドネシア情報通信大臣を含む、両国のスマートシティ関係者参加のもと、情報交換及びビジネスマッチングのためのフォーラムをオンラインで開催した。

 同年12月、国土交通大臣がトップセールスを実施してきたパティンバン港整備事業に関し、自動車ターミナルの一部及びアクセス道路の完成を期に、ソフトオープン(部分開業)式典が開催された。

 令和3年2月、「第7回日・インドネシア建設次官級会合」をオンラインで開催し、建設分野における両国のインフラ整備の課題・経験を共有するとともに、両国の協力を推進していくことで一致した。

 同月、有料道路の運営・維持管理(O&M)分野の最新の取組を共有し、官民での両国の道路O&M分野での協力関係の強化を図ることを目的として、「日・インドネシア有料道路O&M技術会議」をオンラインで開催した。本会議には、両国政府に加え日本の高速道路会社、インドネシアの道路運営会社等から、約350名が参加し、活発な意見交換が行われた。

 同月、運輸省との間で、都市公共交通に係るオンラインセミナーを開催し、公共交通機関の活性化施策等について意見交換を行った。

(イ)カンボジア

 令和2年5月、カンボジアの港湾整備の発展及び日本との国際交流への貢献が評価され、カンボジア・シハヌークビル港湾公社のルー・キム・チュン総裁が令和元年度土木学会国際貢献賞を受賞した。同年8月、土木学会主催の授賞式がオンラインで開催され、同総裁が受賞者を代表して講演したほか、国土交通省港湾局から日本・カンボジアの港湾分野での協力について講演した。

 官民双方の連携を強化し、都市開発・不動産開発分野における課題の解決に貢献することを目的としてカンボジア国土整備・都市化・建設省との間で設立した「日カンボジア都市開発・不動産開発プラットフォーム」について、第2回会合を令和3年2月にオンラインで開催した。会合において、赤羽国土交通大臣とカンボジア国土整備・都市化・建設大臣との間で、住宅・建設・都市計画・国土計画・地図作成・測量分野における協力に関する覚書を更新するとともに、平成31年3月に開催された第1回会合後の各取組の進捗状況を確認した。

(ウ)シンガポール

 シンガポール行政機関インフラストラクチャー・アジア(IA)と、当面は都市開発分野(スマートシティ含む。)及び道路・橋梁分野に関し、両国のインフラ関連企業の連携を深め、第三国での協力案件形成を図る取組を進めている。令和2年8月、本協力枠組のキックオフとして第1回オンラインセミナーを開催し、両国の民間企業を中心に、アジアでの事業展開、両国企業の協力可能性等について意見交換を実施した。セミナー後にはそれぞれの相手国企業への関心を得て、1対1の橋渡し、1対複数のミーティングのアレンジを実施した。3年3月、第2回オンラインセミナーを開催し、国土交通省とIAとの間で、両国の民間企業が第三国におけるインフラプロジェクトに連携して取り組むことを協力して支援する覚書を締結、第三国の政府関係者からの事業機会の紹介等を実施した。

(エ)タイ

 令和3年3月、道路分野を中心としたインフラメンテナンスに関するセミナーをオンラインで開催し、日本企業のタイにおけるインフラメンテナンス事業への参画・協働に向けたネットワーク構築を支援した。

(オ)フィリピン

 令和2年11月、海上保安庁とフィリピンコーストガード(PCG)により日・フィリピン海上保安機関長官級会合を開催した。また、同月、PCGに対して海上保安庁モバイルコーポレーションチームによるオンライン研修を実施した。

 令和3年3月、有料道路の運営・維持管理(O&M)分野の最新の取組を共有し、官民での両国の道路O&M分野での協力関係の強化を図ることを目的として、「日・フィリピン有料道路O&M技術会議」をオンラインで開催した。本会議には、両国政府に加え日本の高速道路会社、フィリピンの道路運営会社等から、約170名が参加し、活発な意見交換が行われた。

(カ)ベトナム

 令和2年5月、日本の沿岸技術を総合的に駆使したラックフェン国際港建設事業について、土木技術の発展への顕著な貢献をなし、社会の発展に寄与したことが評価され、国土交通省港湾局が令和元年度土木学会技術賞(Ⅱグループ)を受賞した。同年6月、土木学会主催でラックフェン国際港建設事業をテーマとしたシンポジウムがオンラインで開催され、国土交通省港湾局より講演を行った。

 国土交通大臣が、円滑なプロジェクトの進捗のためベトナム政府と調整を続けてきたホーチミン市都市鉄道1号線プロジェクトについて、同年10月に初めて日本から現地に車両の納入が行われるなど、本格運用に向けた準備が着実に進められた。

 また同年10月の菅総理のベトナム訪問の際、国土交通省とベトナム交通運輸省は、ベトナムの港湾施設の国家技術基準の策定における協力の推進に関する覚書を更新した。

 同年12月、ベトナム海上警察に対して海上保安庁モバイルコーポレーションチームによるオンライン研修が実施されたほか、同月には日越・ベトナム海上保安機関実務者会合をオンライン形式で開催した。

(キ)マレーシア

 平成29年7月、日本はクアラルンプールにASEAN地域訓練センターを設置し、レーダーや無線を使用して船舶の管制及び情報提供を実施するVTS(Vessel Traffic Service)管制官の育成を支援している。令和2年1月に同センターに整備したe-Learningシステムを活用し、3年3月にオンライン研修を実施した。

 また、マレーシア海上法令執行庁に対して海上保安庁モバイルコーポレーションチームによりオンライン研修(令和2年10月、3年2月)を実施した。

(ク)ミャンマー

 円滑なプロジェクトの進捗のためミャンマー政府と調整を続けてきたヤンゴン環状鉄道の改修計画及びヤンゴン・マンダレー鉄道の整備計画(フェーズ2)に関し、令和2年12月、車両の調達に関する契約が、本邦企業とミャンマー国鉄との間で締結された。

②南アジア

(ア)インド

 令和2年9月の日印電話首脳会談において、両首脳はムンバイ・アーメダバード間高速鉄道事業の着実な進展に向けて、緊密に連携を図ることを確認した。同月の首脳会談の結果も踏まえ、同年12月に土木工事が着工した。

 令和3年1月に「第12回都市開発に関する日印交流会議」を開催し、水環境、都市交通、都市開発、良き発注者と質の高い技術者等について、意見交換を行うと共に、日本企業が各社の技術をアピールした。

 また、水分野の協力を強化することを目的として、令和元年12月、国土交通省水管理・国土保全局とインド水活力省水資源・河川開発・ガンガ再生局の間で協力覚書を締結した。

(イ)バングラデシュ

 PPP庁との覚書に基づき日本バングラデシュ・ジョイントPPPプラットフォームを構築し、政府間協力のもとでバングラデシュ側関係省庁と我が国関心企業による各種プロジェクトの案件形成を支援している。令和3年2月には第4回プラットフォーム会合を実施し、案件形成に取り組むプロジェクトとして新たに道路1案件を選定した。

③米国

 米国は、インフラの老朽化対策や高速鉄道、スマートシティ、高齢者の地域居住等の分野において、我が国の高度な技術力や知見へのニーズが高い市場であり、第三国においても、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の実現に向けた協力を図っている。また、令和3年1月に発足したバイデン政権はインフラ整備に積極的であり、今後、日本の技術力を活用した米国インフラ市場への参画が期待されている。

 こうした中、令和3年3月には、バイデン新政権下での日米協力を促進するため、米国運輸省及びインディアナ州と連携して、第4回日米インフラフォーラムをオンライン形式で開催した。本フォーラムでは、冒頭、赤羽国土交通大臣からインフラ分野における新技術・デジタル技術の活用、次世代エネルギーの活用、FOIPの推進等に関して日米の協力を呼びかけ、ブティジェッジ連邦運輸長官から今後の日米協力に対する期待が示されたほか、国土交通省及びインディアナ州政府から、これらに関するインフラ政策の紹介を行った。

④中東

(ア)サウジアラビア

 同国の交通プロジェクトの案件形成を目指し、令和2年度の調査として、両国の関心の高い分野について、関係省庁・企業とのオンライン面談やビジネスマッチングを実施した。

(イ)トルコ

 令和2年12月には、質の高いインフラ、第三国における両国企業の連携等をテーマにした「第6回日本・トルコ建設産業会議」を開催し日本とトルコ両国企業によるビジネスマッチングを実施した。

 また同年12月、日・トルコの防災協働対話の枠組みを活用し、官民による日トルコの防災協力を一層強化するとともに、日本企業のトルコ進出を支援するため、岩井国土交通副大臣出席の下、「日・トルコ防災セミナー」をオンラインで開催した。

 観光分野においては、日本とトルコの更なる交流人口拡大のため、同年1月に両国政府の観光当局や業界関係者等の参加する、「第1回日土観光交流促進協議会」を実施した。

⑤ロシア

 政府全体の方針である「ロシアの生活環境大国、産業・経済の革新のための協力プラン」に基づき、都市環境、運輸、観光分野での協力を進めているところであり、令和2年8月に行われた日露電話首脳会談においても、両首脳の間で「協力プラン」の進捗が確認され、今後も二国間関係を強化していくことの重要性が確認された。

 同国の都市環境分野では、8項目からなる「協力プラン」のうち、「快適・清潔で住みやすく、活動しやすい都市作り」の具体化に向け、「日露都市環境問題作業部会」を通じて3モデル都市を中心に協力を進めており、3年2月に第13回総括会合を開催した。元年に、モデル都市に追加されたサンクトペテルブルク市においては、協力分野を定めたスマートシティ基本構想を2年に提案、合意し、当地での協力の具体化に向け各分野で協議を実施している。

 運輸分野では、平成24年に「日露運輸作業部会」を設置し、27年の第2回以降毎年交互に開催している。令和2年度は、12月にオンラインにて日露運輸作業部会第7回次官級会合を開催し、鉄道・港湾・航空・海事の分野における意見交換を実施した。

 さらに、専門的な議論を行うため、「港湾当局間会合」、「鉄道専門家会合」、「観光交流促進協議会」を設置し、協力の具体化に向けた議論を実施している。同年度は、11月にオンラインにて港湾当局間会合を開催し、港湾当局間で意見交換を実施した。

⑥中南米

 令和2年1月に、青木国土交通副大臣がパナマ運河庁を往訪し、パナマ運河における円滑な通航の確保等についてパナマ政府要人と意見交換を行った。特に、パナマ運河の水位確保に係る上水サーチャージについては、導入の必要性等について海運業界に対して十分な説明と周知期間が必要である旨ロヨ運河担当大臣に対して強く申し入れを行ったが、パナマ運河庁は渇水対策として緊急に導入せざるを得ないとして翌2月に同制度を導入した。これを受けて、同年9月、海事局はパナマ運河庁とWeb形式で局長級政府間協議を開催し、パナマ運河庁長官から同制度の導入に至った経緯・根拠の説明を受けるとともに、現在同国で検討している中長期的な水不足対策についての情報を共有し、今後も運河の健全な活用に向けて両国間で協調していくことを確認した。

⑦アフリカ

 TICADⅥにあわせて平成28年8月にケニアにて開催した「日・アフリカ官民インフラ会議」において採択された閣僚宣言を踏まえて設立した「アフリカ・インフラ協議会」(JAIDA)を活用し、我が国の「質の高いインフラ」を支える技術や経験等についてアフリカ各国に対して積極的に情報発信をするとともに、相手国との官民双方の関係構築を促進した。

 これまでアフリカ11箇国(ケニア、エチオピア、モザンビーク、タンザニア、コートジボワール、ナイジェリア、ウガンダ、ザンビア、ガーナ、マダガスカル、セネガル)において「官民インフラ会議」(閣僚級)を開催してきたところ、令和2年3月にチュニジア、モロッコとの間でオンラインによる会議を開催した。このうち、モロッコとの間では、岩井国土交通副大臣が「質の高いインフラ投資」の推進協力に係る覚書を締結した。

 加えて、これまでに官民インフラ会議を開催したコートジボワールとの間で、官民インフラ会議で築いた関係を継続・発展させることを目的として「質の高いインフラ対話」をオンラインで開催した。

⑧東アジア

 中国については、平成30年に「第1回日中第三国市場協力フォーラム」等が開催され、日中間におけるインフラ整備に関する第三国連携の可能性を追求してきている。今後も、第三国での日中の連携に取り組んでいく。