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国土交通白書 2021

第2節 国際交渉・連携等の推進

■3 各分野における多国間・二国間国際交渉・連携の取組み

( 1 )国土政策分野

 アジア各国等において、政府関係者、国際機関等様々なステークホルダーをネットワーク化し、会議、ウェブサイト等により国土・地域政策に係る課題や知見を共有する仕組みである「国土・地域計画策定・推進支援プラットフォーム(SPP)」の第3回会合を、令和3年2月にオンライン開催した。本会合では、各国における新型コロナウイルス感染症を受けた国土政策の長期的なあり方に関するセッションのほか、今回新たな取組として、国土・地域計画分野における各国が抱える課題に対し、日本企業18社が「質の高いインフラ」技術により、解決策等を提示する官民ビジネスセッションを実施した。

( 2 )都市分野

 国際的な不動産見本市である「MIPIM」(フランス・カンヌ開催)への日本ブース出展の開催支援等を行っている。

 ミャンマーでは、同国建設省の要請を受け、これまで策定支援してきた都市・地域開発計画法に関し、令和2年度は同法運用に向けたキャパシティ・ビルディング支援を実施するとともに、現地JICA専門家を通じて技術協力を行った。

 また、タイでは、同国運輸省の要請を受け、バンスー中央駅周辺都市開発計画の実現に向けて、現地JICA専門家を通じて技術協力を行うとともに、令和2年度には運輸省、タイ国有鉄道、国土交通省、独立行政法人都市再生機構の4者で、事業推進に関する協力覚書を交換した。

 さらに、我が国企業の海外展開促進を図るため、都市開発海外展開支援事業を活用し、独立行政法人都市再生機構による調査やセミナー等の取組を支援しており、上記のタイだけでなく、中国、インドネシアの関係機関とも協力覚書交換に至った。

 その他、TOD(公共交通指向型都市開発)に係る日本の経験や技術力を海外政府等カウンターパートへPRするための頒布資料を作成したほか、EUとの間でスマートシティやSDGsに対応した都市政策のあり方について共同研究を行った。

( 3 )水分野

 水問題は地球規模の問題であるという共通認識のもと、国際会議等において問題解決に向けた議論が行われている。今後、熊本市で第4回アジア・太平洋水サミットの開催が予定されている。同サミットは、アジア太平洋地域の各国政府首脳級や国際機関の代表などが参加し、アジア太平洋地域の水に関する諸問題について、幅広い視点から議論を行うものであり、本サミットの円滑な実施のため、関係各省が連携して準備を行った。また、令和元年6月にアメリカ(ワシントン)で開催された日本-世界銀行水災害に関するセミナーにおいて、日本における統合的な渇水リスクマネジメントの取組みとして、全国および流域レベルでの水資源開発計画、需要マネジメント、水利権、環境用水、渇水時の利水者間調整などの取組みを紹介した。

 それに加え、水資源分野では、独立行政法人水資源機構を事務局とし関係業界団体や関係省庁からなる「水資源分野における我が国事業者の海外展開活性化に向けた協議会」を活用し、インドネシアにおいて治水・利水機能の向上を図るダム再生事業の案件形成に向けた調査を行うなど、水資源分野の案件形成に向けた取組みを実施した。また、アジア河川流域機関ネットワーク(NARBO)と連携し、統合水資源管理(IWRM)の普及・促進に貢献している。このほか、アジアにおける汚水管理の意識向上等を目的としたアジア汚水管理パートナーシップ(AWaP)を平成30年に設立し、国連サミットで採択されたSDGs(ターゲット6.3「未処理汚水の割合の半減」)の目標達成に貢献するための協力関係を参加国・国際機関及び日本下水道事業団を含む関係機関と構築した。令和2年度は、参加国が自国の下水道に関する現状や課題、取組み等を取りまとめた年次レポートの共有を図るとともに、令和3年3月に運営委員会を書面審議で開催し、3年8月に総会を開催することを確認した。

( 4 )防災分野

 世界の水関連災害による被害の軽減に向けて、災害予防が持続可能な開発の鍵であるという共通認識を形成するため、我が国の経験・技術を発信するとともに、水災害予防の強化に関する国際連帯の形成に努めている。また、相手国の防災課題と日本の防災技術をマッチングさせるワークショップ「防災協働対話」をインドネシアやベトナム、ミャンマー、トルコで実施している。現在、既存ダムを有効活用するダム再生や危機管理型水位計などの本邦技術を活用した案件形成を進めているところである。また、国立研究開発法人土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)では、統合洪水解析システム(IFAS)や降雨流出氾濫(RRI)モデル等の開発、リスクマネジメントの研究、博士課程及び修士課程を含む人材育成プログラムの実施、UNESCOやアジア開発銀行、及び世界銀行のプロジェクトへの参画及び国際洪水イニシアチブ(IFI)事務局としての活動等を通じ、水災害に脆弱な国・地域を対象にした技術協力・国際支援を実施している。

 また、砂防分野においては、イタリア、韓国、スイス及びオーストリアと砂防技術に係る二国間会議を開催しているほか、JICA専門家の派遣等や研修の受入を通じて土砂災害対策や警戒避難、土地利用規制などの技術協力を行っている。

( 5 )道路分野

 世界道路協会(PIARC)の各技術委員会等に継続的に参画し、国際貢献に積極的に取り組んでいる。令和2年からは4年間の戦略計画がスタートし、1)道路行政、2)モビリティ、3)安全性と持続可能性、4)レジリエントなインフラストラクチャーの4つの戦略テーマの下に17の技術委員会と4つのタスクフォースを設置して、加盟国による調査研究を開始している。さらに、同年の新型コロナウイルス感染症感染拡大下においては、ウェビナーの継続的な開催により、新型コロナウイルス感染症に関する情報共有や情報発信を行っている。

 また、日ASEAN交通連携の枠組みの下、ASEAN地域における橋梁維持管理の質の向上を目指した「橋梁維持管理技術共同研究プロジェクト」に取り組んでおり、令和2年2月、12月、3年3月に専門家会合を開催した。

( 6 )住宅・建築分野

 国際建築規制協力委員会(IRCC)、日米加建築専門家会合(BEC)等への参加など、建築基準等に係る国際動向について関係国間での情報交換を行った。

 ミャンマー・バングラデシュ・トルコ等に対しては、JICA専門家の派遣やセミナーの開催等を通じて幅広く技術協力を行った。

 また、国立研究開発法人建築研究所国際地震工学センター(IISEE)では地震学・地震工学・津波防災の研修を実施し、開発途上国の研究者、技術者の養成を通じて世界の地震防災対策の促進に貢献している。

( 7 )鉄道分野

 令和2年度も、インド高速鉄道に関する合同委員会の開催、JICA専門家の派遣を通じた技術協力など、二国間での連携に向けた取組みを実施している。

 また、(一社)海外鉄道技術協力協会(JARTS)や(一社)国際高速鉄道協会(IHRA)において各国要人を招いての国際会議やセミナーを開催するなど、我が国鉄道技術の強みの紹介にも積極的に取り組んでいる。

( 8 )自動車分野

 平成27年の第13回日ASEAN交通大臣会合にて承認された、「自動車基準・認証制度をはじめとした包括的な交通安全・環境施策に関する日ASEAN新協力プログラム」に基づき、令和3年1月にアジア地域官民共同フォーラムをオンライン形式で開催するなど、アジア地域における基準調和・相互認証活動・交通安全・環境保全施策などについて情報交換を行った。

( 9 )海事分野

 海事分野では、IMOにおける世界的な議題への対応の他、局長級会談等を通じた二国間協力、日ASEAN交通連携を通じた多国間協力の取組み等を実施している。

 令和2年度にはパナマ及びノルウェーと局長級会談をそれぞれ9月及び12月に開催し、海事分野における諸問題の解決に向け、情報共有や意見交換を実施した。

 我が国は、ASEAN等新興国・途上国に対する海上保安能力向上や公共交通インフラの整備としてODAを通じた船舶の供与を行っており、3年3月末現在、ベトナム、フィリピン向け巡視船やモロッコ向け海洋・漁業調査船、サモア向け貨物船など、9ヵ国に対し計18隻の船舶の供与に向けたODA事業が進行中である。この他、平成30年3月より、マラッカ・シンガポール海峡の共同水路測量調査事業の現地調査が実施されている。

 多国間協力に関しては、日ASEAN交通連携協力プロジェクトの一環として、クルーズ分野について、各国から提出されたクルーズ情報をASEAN-JAPAN transport partnership(AJTP)ウェブサイトへ掲載した。また、日ASEANクルーズモデルルート策定等、平成27年から5年間にわたり実施した日ASEANクルーズ振興戦略の成果を取りまとめ、日ASEAN交通大臣会合に報告し、承認された。

 また、ASEAN域内の内航船等において低環境負荷船を普及促進させるため、「ASEAN低環境負荷船普及戦略」に基づき、令和2年8月の海上交通WGにおいて、ASEAN各国の具体的取組等をベストプラクティスとして共有した。

 その他、洋上浮体技術を活用した物流拠点の事業化に向けた取組み、造船分野の人材育成支援等、我が国の優れた海事技術の海外展開にも取り組んでいる。

(10)港湾分野

 北東アジア港湾局長会議やAPEC交通WGを通じて、港湾行政に関する情報交換や、クルーズの促進等を実施している。また、国際航路協会(PIANC)や国際港湾協会(IAPH)等との協調を重視し、政府自らその会員となり、各国の政府関係者等との交流を行うとともに、各種研究委員会活動に積極的に参画している。特にPIANC、IAPHにはいずれも日本から副会長を輩出している。コロナ禍においても、リモートで活発に実施されている取組に積極的に参画し、我が国の質の高い港湾技術の発信や、世界の様々な港湾技術に関する最新の知見を得るなど、技術基準等の海外展開・国際標準化の推進にも積極的に取り組んでいる。

 さらに、令和2年10月には、海運業界の脱炭素化を支援する将来の船舶燃料に対応するための港湾間協力に関する覚書をシンガポール海事港湾庁・ロッテルダム港湾公社・国土交通省港湾局の3者で締結した。

(11)航空分野

 令和2年度はインドにおいて我が国企業参入促進のため、空港運営案件発掘調査を実施した。また、2年8月及び12月に、インド空港当局(AAI)と航空分野における協力について意見交換を行った。

(12)物流分野

 日中韓物流大臣会合における合意に基づき、北東アジア物流情報サービスネットワーク(NEAL-NET)の加盟国・加盟港湾の拡大等、日中韓の物流分野における協力の推進について中韓と議論を進めた。

 令和2年6月には、新型コロナウイルス感染症の物流への影響を踏まえ、日中韓物流大臣会合の特別セッション(テレビ会議)を開催し、三国における円滑な物流の確保のための連携強化を確認した。

 また、日ASEAN交通連携の下、同年12月に開催した物流専門家会合において、ASEAN各国におけるコールドチェーン物流サービス規格の認証体制の整備を促進するためのガイドラインの策定を提案し、各国の合意を目指して議論していくことが確認された。加えて、3年1月にインドネシアとの間で物流政策対話・ワークショップを開催し、物流環境の改善等を協議するとともに、コールドチェーン物流を支える日本の物流機器や技術の紹介等を行った。

 さらに、海上輸送、航空輸送に続く第3の輸送手段としてのシベリア鉄道の利用拡大に向けて、平成30年度から令和2年度にかけて、ロシア政府と共同で、シベリア鉄道を利用した貨物輸送の実証事業を実施した。

(13)地理空間情報分野

 ASEAN等に対し、電子基準点網の設置・運用支援等を行っている。ミャンマーについては、JICAによるヤンゴンマッピングプロジェクトと連携し、令和2年9月及び3年1月に、電子基準点の運用維持管理に関してオンラインによる技術移転を実施した。ベトナムについては、3年3月に国土地理院と天然資源環境省測量・地図作成・地理情報局との間で覚書の更新を行うとともに、電子基準点の利活用に関するオンラインセミナーを開催した。インドネシアについては、電子基準点の維持管理に関するオンラインによる技術移転を実施した。

(14)気象・地震津波分野

 世界気象機関(WMO)の枠組みの下、気象観測データや技術情報の交換に加え、我が国の技術を活かした台風情報等を提供している。WMOと国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)が共同で設立した台風委員会の活動の一環として、台風の解析や予報に関する研修を毎年実施しているほか、令和3年2月に台風委員会第53回会合を日本がホストとして実施するなど、東・東南アジア各国の台風災害防止に貢献している。また、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)政府間海洋学委員会(IOC)の枠組みの下、北西太平洋における津波情報を各国に提供し、関係各国の津波防災に貢献している。

(15)海上保安分野

 海上保安庁は、世界海上保安機関長官級会合、北太平洋海上保安フォーラム、アジア海上保安機関長官級会合といった多国間会合や、二国間での長官級会合、連携訓練等を通じて、捜索救助、海上セキュリティ対策等の各分野で海上保安機関間の連携・協力を積極的に推進している。

 また、シーレーン沿岸国における海上保安能力向上支援のため、国際協力機構(JICA)や日本財団の枠組みにより、海上保安庁モバイルコーポレーションチーム(MCT)や専門的な知識を有する海上保安官を専門家として各国に派遣しているほか、各国の海上保安機関等の職員を日本に招へいし、能力向上支援に当たっている。

 令和2年度は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、諸外国との往来が制限され、各国への派遣ができない中、可能な手段で各国海上保安機関の能力向上支援を継続するため、MCTによるオンライン研修等を実施した。

 また、海上保安政策に関する修士レベルの教育を行う海上保安政策プログラムを開講し、アジア諸国の海上保安機関職員を受け入れるなどして各国の連携協力、認識共有を図っている。

 このほか、海上保安庁は国際水路機関(IHO)の委員会等における海図作製に関する基準の策定、コスパス・サーサット計画における北西太平洋地域の取りまとめ、国際航路標識協会(IALA)の委員会等におけるVDESの開発に係る検討、アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)に基づく情報共有センターへの職員の派遣など、国際機関へ積極的に参画している。

図表Ⅱ-9-2-1 ベトナム海上警察に対するオンライン形式での制圧研修
図表Ⅱ-9-2-1 ベトナム海上警察に対するオンライン形式での制圧研修