国土交通省ロゴ

国土交通白書 2022

第1節 脱炭素化を取り巻く動向

■1 脱炭素社会に向けた動向

(温室効果ガス削減と国際的な枠組み)

 気候変動に対応するための国際枠組みとしてのパリ協定注1では、各国は、長期的な温室効果ガスの低排出型の発展のための戦略(長期戦略)を作成し、通報するよう努力すべきとされており、全ての国が温室効果ガスの排出削減目標を「国が決定する貢献(NDC)」として5年毎に通報する義務がある。

 一方で、NDCには、国際海運と国際航空については含まれていない。これは国際間輸送を担っていることから、国別での削減対策の枠組みには馴染まないとされているためである。このため、国際海運は海事分野の国連専門機関である国際海事機関(IMO)が国際統一ルールを設定しており、国際航空については国際民間航空機関(ICAO)において削減の手段が示され、それぞれの分野で対策を進めている。

(1)諸外国・地域におけるカーボンニュートラル宣言

 諸外国・地域では、カーボンニュートラルを宣言している(COP26(2021年11月)終了時点150箇国以上)。また、主要国は、2050年カーボンニュートラルとともに、2030年目標(NDC)を表明している。

図表Ⅰ-1-1-1 パリ協定に基づく主要国の目標
図表Ⅰ-1-1-1 パリ協定に基づく主要国の目標

(注)2021年9月末時点
資料)内閣官房「気候変動対策推進のための有識者会議報告書」(2021年10月)に基づき国土交通省作成

(2)我が国におけるカーボンニュートラル宣言

 2020年10月、日本政府は「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言した。また、温室効果ガス削減目標として、「2050 年カーボンニュートラルと整合的で、野心的な目標として、2030 年度において、温室効果ガスを2013 年度から46%削減することを目指す。さらに、50%の高みに向け、挑戦を続けていく。」こととし、2021年10月にNDCとして国連に提出した。また、同年10月に2050年カーボンニュートラルを踏まえた対策の方向性等を記載した、更新版の長期戦略を国連に提出した。

 ここで「排出を全体としてゼロ」とは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量から、植林、森林管理などによる吸収量を差し引き、実質的にゼロにすることを指している注2。カーボンニュートラルの達成に向けては、温室効果ガスの排出量の削減とともに、排出せざるを得なかった温室効果ガスの排出量を相殺する吸収量等を確保すべく、吸収源の強化にも取り組む必要がある。

図表Ⅰ-1-1-2 カーボンニュートラル
図表Ⅰ-1-1-2 カーボンニュートラル

資料)国土交通省

  1. 注1 パリ協定とは、2015年に採択され、2016年に発効された、京都議定書に代わる2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組みである。世界共通の長期目標として2℃目標の設定、1.5℃に抑える努力を追求すること、主要排出国を含む全ての国が削減目標を5年ごとに提出・更新すること等が定められている。
  2. 注2 温室効果ガスの排出量・吸収量は、いずれも人為的なものを指す。