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国土交通白書 2022

第1節 脱炭素化を取り巻く動向

■3 我が国における新型コロナウイルス感染拡大の影響も含めた二酸化炭素排出動向

 我が国では、従来より時機を捉えて温室効果ガスの削減目標を設定し、その削減に向けて取り組んでいる。1990年度からの温室効果ガス削減の推移では、2009年度に金融危機により一時的に減少したものの、以降増加し、2013年度をピークにその後は減少傾向にある。他方、1.(2)のとおり、我が国は脱炭素社会の実現を目指すことを宣言しており、今後、2030年度の削減目標に向けて、2013年度比で46%削減、さらに50%削減の高みに向けて挑戦すべく、取組みを加速化することが必要である。

図表Ⅰ-1-1-6 我が国の温室効果ガス排出量の推移
図表Ⅰ-1-1-6 我が国の温室効果ガス排出量の推移

資料)環境省「2020年度温室効果ガス排出量(確報値)」より国土交通省作成

(コロナ禍の影響を受けた2020年度の動向)

 2020年度における二酸化炭素総排出量は、新型コロナウイルス感染拡大の影響等により対前年度比5.8%の減少となったとともに、各部門において、新型コロナウイルス感染拡大の影響が生じている。

 産業部門では、需要の低迷等による製造業における生産量の減少等により8.1%の減少となり、運輸部門では人流抑制・生産活動の落ち込みによる旅客・貨物輸送の減少等により10.2%の減少となった。また、業務部門では、外出自粛等による第三次産業の活動の低迷等により4.7%の減少となった。

 各部門で減少となった一方で、家庭部門については、外出自粛等による在宅時間増の影響等から4.5%の増加となった。

図表Ⅰ-1-1-7 二酸化炭素排出量(2020年度)
図表Ⅰ-1-1-7 二酸化炭素排出量(2020年度)

※ほかにエネルギー転換部門、非エネルギーCO2からの排出量を算定している。
(注)「確報値」とは、我が国の温室効果ガスの排出・吸収目録として気候変動に関する国際連合枠組条約事務局に正式に提出する値という意味である。
今後、各種統計データの年報値の修正、算定方法の見直し等により、今回取りまとめた確報値が再計算される場合がある。
資料)環境省「2020年度温室効果ガス排出量(確報値)」より国土交通省作成

(近年の部門別動向)

 また、近年、二酸化炭素排出量は各部門で減少傾向にあり、特に産業部門及び業務部門では、対2013年度比で2020年度は約23%の削減となっている。

 一方で、運輸部門及び家庭部門では、対2013年度比の削減率は2割に達しておらず、一層の取組みが必要である。以下では、家庭部門と運輸部門の2013年度以降の部門別内訳を整理する。

図表Ⅰ-1-1-8 部門別二酸化炭素排出量の推移
図表Ⅰ-1-1-8 部門別二酸化炭素排出量の推移

資料)環境省「2020年度温室効果ガス排出量(確報値)」

(家庭部門の二酸化炭素排出動向)

 近年、電力の二酸化炭素排出原単位の改善とともに、住宅の省エネルギー化や高効率な省エネルギー機器の普及により、エネルギー消費が減少し、二酸化炭素排出量が減少傾向となっている。しかし、2017年度は厳冬の影響により、2020年度は前述のとおりコロナ禍による在宅時間の増加等により、それぞれ対前年度比で排出量が増加した。

図表Ⅰ-1-1-9 家庭部門の二酸化炭素排出量(推移)
図表Ⅰ-1-1-9 家庭部門の二酸化炭素排出量(推移)

資料)環境省「2020年度温室効果ガス排出量(確報値)」より国土交通省作成

 また、二酸化炭素排出の削減量(2019年度、対2013年度比)について、用途別の寄与度では、照明・家電製品等が約4分の3を占めている。

 一方で、エネルギー消費の削減量(2019年度、対2013年度比)について同様に用途別に寄与度をみると、暖房が約半分を占めている。

 家庭部門におけるエネルギー消費量は、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)注3普及やトップランナー制度による、住宅の断熱性能向上等による省エネルギー化及び高効率機器の普及等の一体的な取組みにより減少している。

図表Ⅰ-1-1-10-1 家庭部門の二酸化炭素排出削減量及びエネルギー消費削減量への用途別寄与度
図表Ⅰ-1-1-10-1 家庭部門の二酸化炭素排出削減量及びエネルギー消費削減量への用途別寄与度

資料)環境省「2019年度温室効果ガス排出量(確報値)」より国土交通省作成

図表Ⅰ-1-1-10-2 ZEH住宅の供給戸数、高効率省エネ機器の普及
図表Ⅰ-1-1-10-2  ZEH住宅の供給戸数、高効率省エネ機器の普及

資料) 左・右:地球温暖化対策推進本部「2019年度における地球温暖化対策計画の進捗状況」
中央:一般社団法人環境共創イニシアチブ「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業調査発表会2021」より国土交通省作成

(運輸部門の二酸化炭素排出動向)

 近年、次世代自動車の普及や燃費改善、トラックの大型化などトラック輸送の効率化等により、二酸化炭素排出量は減少傾向にある。

 また、2020年度は、前述のとおり旅客・貨物輸送量の減少により二酸化炭素排出量は10.2%減少した。輸送機関別に二酸化炭素排出量をみると、自動車からの二酸化炭素排出量が大部分を占めている。

図表Ⅰ-1-1-11 運輸部門の輸送機関別二酸化炭素排出量(推移)
図表Ⅰ-1-1-11 運輸部門の輸送機関別二酸化炭素排出量(推移)

(注)1 自動車(貨物):営業用貨物自動車・トラック、自家用貨物自動車・トラック
2 自動車(旅客):乗用車(自家用車、営業用・タクシー)、バス(自家用・営業用)、二輪車
資料)環境省「2020年度温室効果ガス排出量(確報値)」より国土交通省作成

  1. 注3 ZEHについては、第I部第2章第1節1(3)参照。