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国土交通白書 2022

第2節 再生可能エネルギー等への転換に向けた取組み

■3 水素・アンモニア等のサプライチェーンの構築

 脱炭素化に当たって水素・アンモニアは新たな資源であるとともに、新たな2030年の政府目標としても位置づけられ、その社会実装に向けて、長期的に安価な水素・アンモニアを安定的かつ大量に供給していくことが必要である。また、我が国は海洋国家であり、国内での水素製造とともに、海外からの安価な水素を確保するためには、海上輸送による水素のサプライチェーン構築に向けた取組みが欠かせない。

 ここでは、水素・アンモニア等のサプライチェーンの構築に向けた国土交通分野の取組みとして、海事・港湾分野での技術革新・社会実装に向けた取組みをみていく。

(1)水素・アンモニアを運び、水素・アンモニアで走る

(水素・アンモニアを運ぶ)

 水素・アンモニアを海外から運ぶために必要な技術の開発に向けて、液化水素の長距離大量輸送技術の開発を進めている。2021年12月には、日本とオーストラリアの間で液化水素運搬船による実証運航を世界に先駆けて実施した。今後も、技術開発・社会実装の加速化により、我が国の海事産業の国際競争力を強化していくことが重要である。

 2030年までに国際サプライチェーン及び余剰再生可能エネルギー等を活用した水素製造の商用化の実現を目指し、水素運搬船を含む各種輸送・供給設備の大型化や港湾における受入環境の整備を進めていく。

(水素・アンモニアで走る「ゼロエミッション船」の開発)

 我が国は、2021年10月に「国際海運2050年カーボンニュートラル」を目標とすることを表明し、同年11月に、これを世界共通の目標とすることを目指して国際海事機関(IMO)の会議に提案した。

 一方で、この目標の達成に当たっては、水素・アンモニア等を燃料とするゼロエミッション船の導入・普及が不可欠である。このため、グリーンイノベーション基金を活用した国産エンジンを含むゼロエミッション船の技術開発・実証を実施しており、2028年までのできるだけ早期の商業運航実現を目指している。

 海事立国である我が国としては、こうした革新的な技術の開発やその社会実装を世界に先駆けて実施することにより、新たな市場を取り込み、世界のカーボンニュートラルへの貢献とともに、我が国海事産業の国際競争力強化につなげていく。注53

図表Ⅰ-2-2-12 ゼロエミッション船の開発
図表Ⅰ-2-2-12 ゼロエミッション船の開発

資料)国土交通省

(2)カーボンニュートラルポート

 港湾は、輸出入貨物の99.6%が経由する国際サプライチェーンの拠点であるとともに、我が国の二酸化炭素総排出量の約6割を占める発電所、鉄鋼、化学工業等の多くが立地する臨海部産業の拠点、エネルギーの一大消費拠点である。

 また、港湾地域は、水素・アンモニア等の輸入拠点となるとともに、これらの活用等による二酸化炭素排出削減の余地も大きい地域である。

 このため、水素・燃料アンモニア等の大量・安定・安価な輸入・貯蔵等を可能とする受入環境の整備や、港湾オペレーション及び港湾立地産業の脱炭素化を図るカーボンニュートラルポート(CNP)注54の形成が重要である。

図表Ⅰ-2-2-13 港湾を経由した水素・アンモニア等の利活用
図表Ⅰ-2-2-13 港湾を経由した水素・アンモニア等の利活用

資料)国土交通省

  1. 注53 海運における省エネ・低炭素化の具体的な取組みについては、第Ⅱ部第8章第1節2(6)②参照。
  2. 注54 カーボンニュートラルポート(CNP)の具体的な取組みについては第Ⅱ部第8章第1節2(6)④参照。