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国土交通白書 2022

第2節 再生可能エネルギー等への転換に向けた取組み

インタビュー 企業の積極的な脱炭素対策に向けて

日本気候リーダーズ・パートナーシップ 共同代表 三宅香氏
日本気候リーダーズ・パートナーシップ 共同代表 三宅香氏

 脱炭素化に向けては、企業の積極的な脱炭素対策が欠かせない。持続可能な脱炭素社会実現を目指す企業グループである日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)の三宅香氏に、日本企業の動向や今後の課題についてお話しを伺った。

■脱炭素は競争優位から営業許可証へ

 脱炭素の取組みは、過去にはCSR(企業の社会的責任)の一環とみなされていたものの、日本でも競争の源泉と認識される時代になった点で進展していると思う。しかしながら、世界の潮流としては、脱炭素の取組みなくして競争の場にすら立てない状況も生じつつあり、脱炭素は企業にとっての競争優位から営業許可証の位置付けへと変化していると感じている。日本企業は、未だ競争優位の段階で足踏みしている向きもあり、課題だと考えている。また、日本と諸外国とで熱量の違いを感じることもある。例えば、日本では、脱炭素の取組みに必要な世の中の体制が整っていない中で、脱炭素化が難しいと考える見方があると思う。他方で、欧米では、その環境をどう変え得るかを考える向きがあると思う。一社で難しければ他社と協力したり、サプライチェーン全体を巻き込んだりすることを含め、日本の産業界でも環境を変えていく動きが生じることが望ましい。

 また、世界的に脱炭素に取り組まざるを得ない状況になっていると思う。グローバル企業であれば、世界標準に合わせて変わっていく必要がある。特に海外から投資を受けている企業は、海外投資家からの脱炭素の要求もあり、より広範囲での改革が求められる中で、意識が高まっていると思う。例えば、JCLPの活動に参画する企業は、他社との情報交換を行ったり、海外事例を学んだりすることを機に触発されて、個社では困難なことも企業の枠を超えて取り組む動きとなっている。

■企業の取組例(イオン株式会社の例)

 イオン株式会社の場合、二酸化炭素排出量の約9割が電力由来であり、電力に関する取組みが一丁目一番地である。

 まず、省エネルギー対策が重要である。これは「濡れ雑巾を絞ること」に例えられるが、80年代からの取組みである中、「もう絞る余地はない」との見方もあるものの、絞り方を変えればさらに絞れる点について改めて考える必要がある。現在は、AI(人工知能)など新しい技術もあり、これまで人の手で雑巾を絞っていた部分を機械で絞ることも可能となり、省エネルギー対策に継続して取り組むことが大切である。これら省エネルギー対策により、一定程度、二酸化炭素排出量削減を図ることが可能である。

 また、再生可能エネルギーを作ることも重要である。大型ショッピングセンターのみならず、小型ショッピングセンターやコンビニ、ドラッグストアに至るまで、屋根があれば太陽光発電設備を設置するようにしている。その上で不足する分については、再生可能エネルギーを購入することとしている。

 ここで、エネルギーの地産地消が一つのキーワードだと考えている。再生可能エネルギーが普及した場合、時間帯による電力の過不足への対応として、面的にエネルギーを融通し合う考え方が重要だと思う。イオン株式会社では、充放電の取組みを進めていくことで、ショッピングセンターが平時も災害時も地域のエネルギー面でのハブとして機能することを取組みの一環として考えている。地域におけるエネルギー面での自立が可能となれば、災害に対してレジリエントであることにも繋がる中、地域内で電力を融通し合う取組みが日本全体に広がっていくことが重要だと考えている。

■脱炭素化に向けて、地域に根差した企業活動が重要

 脱炭素化に向けて、産学官連携の観点では、「官」については国のみならず、今後は地方公共団体の役割が大きくなっていくと考えている。国土交通関連企業には、住宅、建設、不動産、交通といった地域密着型の企業も多く、それぞれの地域をどう設計すべきかとの観点に立って、地域に根差した企業活動が重要である。また、このような企業の取組みに対して、地方公共団体がどう連携し得るかも大切なポイントである。国や大企業など全体の動きのみならず、その地域とどう向き合うかとの視点に立って企業活動を行うことが一層重要になると思う。