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国土交通白書 2022

第1節 気候変動時代の暮らしを見据えた地域づくり

■1 これからの地域づくりに求められるもの

(脱炭素と強靱性の両輪)

 今後、進行する地球温暖化に歯止めをかけ、気象災害リスクを軽減するため、気候変動の緩和策としての脱炭素化の取組みは必要不可欠であり、わたしたち一人ひとりの取組みが果たす役割は大きい。

 しかしながら、地球温暖化は、我が国におけるカーボンニュートラル目標の2050年までの間、更に、カーボンニュートラルの世界的な達成以降も、物理の法則により、当面の間は進行することが予測されており、増大する気象災害リスクへの対応は重要性を増していくと考えられる。

 このような中、気象災害リスクを可能な限り抑えるためにも、脱炭素化により気温上昇幅を抑えつつ、わたしたちは気候変動に適応し、なお残存する気象災害リスクに対応していかなければならない。

 このことは、気候変動時代の暮らしを見据えた新しい地域づくりに重要な示唆を与えている。気候変動対策では、脱炭素(緩和策)のみならず、強靱性(適応策)の考慮が必要であり、平時はもちろん、災害時など非常時にも有効な方策を組み込むことが重要である。例えば、分散型の再生可能エネルギーの導入は、脱炭素化のみならず、災害時のエネルギー自給の観点も兼ね備えていることから、災害から地域住民の命と財産を守り抜くための防災・減災対策とともに、気候変動時代の暮らしを安心の側面から支えていく観点で効果的である注1

(気候変動時代の地域づくりに向けて)

 気候変動時代の暮らしを見据え、脱炭素で強靱な地域づくりが求められる中、計画的な整備が必要となる交通インフラなどの社会基盤は、地域の温室効果ガスの排出状況に影響を与えるため、脱炭素化に配慮した社会基盤づくりを中長期的な視野で取り組む必要がある。

 今後、脱炭素化に向けて、多くの地域で多様な取組みが進展していくと考えられるが、これと同時に将来にわたって活力ある地域社会を維持するため、地域ごとに異なる資源や特性を地域自らが活かし、それぞれ異なる課題に対応することが重要である注2。この際、第2章で記述したとおり、脱炭素には技術革新・社会実装の要素が必要となる局面もあることから、新技術の導入や地域内外の企業との連携など、外部の資源も取り入れていくことも効果的である。

  1. 注1 気象災害への適応策(防災・減災)に取り組む観点については、気候変動による気象災害リスクを的確に予測し、それを組み入れた防災施策とすることが必要であるが、これら防災施策については、第Ⅱ部第7章第2節「自然災害対策」参照。
  2. 注2 地方公共団体が各自の戦略に沿って施策の企画立案、事業推進、効果検証を進めていくに当たり、これまでも国は情報面・人材面・財政面等から伴走的な支援を行っている。